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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十四章
  先触れ=久しぶりの久遠

一方俺は少し早めに躑躅ヶ崎館の前にいた。もうトレミーに関してはほとんど終わっているからな。それと大軍議をするときは、護法五神から武田の精霊とかを呼ぶので大天使化をするんでな。

「なによ?もう出迎えの準備?気が早いわね」

「それは同じことだろう?城門に出ているから」

「・・・・光璃もいる」

「悪い悪い。美空の後ろにいたのか、気配察知できなかった。二人とも織田久遠信長の到着が気になるから、つい早く来てしまったという感じなんだろ?」

「まぁ直に会うのは初めてだからね」

「・・・・(コクッ)」

まあ美空は知らんけど、光璃はこの後を知っているのか頷いたらこっちの準備できた?という目線が来たので静かに頷いたけど。

「でもまさか、甲斐で合流なんて思わなかったな」

「私たちが軍勢を率いて上洛する方が、手っ取り早かったんだけどね」

「・・・・なら、どうしてここで合流することになったんだ?」

「・・・・策の一環」

「策?」

「ちょっ!光璃、策って何よっ!?私、聞いてないわよ!」

「なんだ、美空も知らないのか?」

「知らないわよ。光璃に、織田が来るから躑躅ヶ崎館に来いって誘われたから来ただけだもの」

「適当なような気がするが、まあいいか」

「で、策って何?何のことなの?」

まあ俺の予想は意外に当たるんだが、今回も当たったな。それに美空をこっちに来いと言ったのは俺だしな。トレミーを動かして京に行くより、ここで待った方が良いと思ったからだ。まあそれで昨日は、今日についての打ち合わせをしたわけだ。

「ザビエルが動きやすいようにする」

「ザビエル、ねえ。正体はもうこっちでも掴んでいるけど、光璃もどこにいるのか知ってんのか?」

「・・・・・・・・・・・・・(コクッ)」

長い沈黙ではあったけど、躊躇いがちに頷いた。まあこっちでもザビエルの正体というのは、最初から分かっていた事だ。この外史に来るのが、二回目だからな。

「一真も分かっているとは思うけど、久遠が来るまでは」

「分かってるよ、今言ったら面白みが無くなるからな」

「・・・・(コクッ)」

俺がそう言ったら、強く頷いた光璃だった。ホントなら光璃だけ知っているようだけど、こっちでも掴んでいる情報があるからか。まあこういうときは、この世界の住人である光璃の口から言った方が良かろう。

「俺もそうだが、光璃の判断に任せる。光璃が言ったあとに俺からも言おうと思うし」

「・・・・ありがとう」

「どういたしましてだ・・・・。ホントは情報共有はしておきたいけど」

「・・・・(コクッ)」

軽く頬を染め上げてからの微笑みだったけど。

「・・・・はいはい!二人だけで良い雰囲気にならないの。私だって居るんですからね!というか、一真が知っているなら教えなさいよ?」

「美空がいるのは分かっているつもりだ・・・・。それとそれについては言わないね、光璃との約束もあるから」

「まあいいけど・・・・。で、光璃。ザビエルのことは良いけど、確か駿府の方もヤバいんじゃなかったっけ?」

「・・・・あまり良くない」

「まあそうだな・・・・。ザビエルも駿府も両方微妙だが、最優先はザビエルだな」

悪いとも言わず、良いとも言わない光璃の言葉は苦渋に満ちた心中と見える。

「一真もだけど、このまま連合軍で駿府に討ち入る・・・・なーんてこと、考えてるんじゃないでしょうね?」

「それは愚策」

「ないない。そんなの集まった意味がない」

「お二人さんも分かってるなら、別に良いけど」

ホントなら兵を集中させての一気に制圧だなんて考えるが、信州からも甲斐からも。駿府に南下するには、山の間を縫って行軍する必要があるからだ。まあ全軍をトレミーに乗せてから、制圧でも構わないけど。俺らの船はドウター殲滅と破滅した場合の主要人物を保護するというお役目がある。なので、駿府は後という考え方なのだ。あとは下山城を駿府のフタにでもしちゃえばいい事だし。光璃にとっては、自分の母親と決着を付けたいとでも思っているだろうけど今ではないということだ。

「そういえば、駿府を攻めるなら声はかけてほしいわね。協力して欲しかったら、手を貸してあげるから」

光璃に手を差し伸べるように言ったが、美空にとっては照れ隠しなんだろうな。

「・・・・・・・・・・・・・・」

「な、なによその顔は!」

「・・・・・裏がありそう」

「し、失礼ね!義を見てせざるは勇なきなりだと思ったから言ってあげたのに!もういい分かったっ!絶対、手助けなんてしてやんないから!」

「・・・・嘘。ありがとう」

「・・・・っ!!ふ、ふんっ!さ、最初から素直にそう言っておきなさいよ、バカ」

「・・・・悔しいから言わない」

「あ、あんたねぇ!」

ははは。二人ともまだまだだなーと思ったけど。まあいいか、二人は犬猿だし。二人の口喧嘩はまあいいとしようか、ほっとけばそのうち治まるし。こういうのは喧嘩友達という感じだから、終わるまで待つしかないだろう。二人の表情は君主という立場を忘れるかの如くだった。

「お兄ちゃん!光璃お姉ちゃんに美空お姉ちゃん!」

「あら、薫。どうしたにの?」

「織田の先触れの人が来てくれたよ!今、夕霧お姉ちゃんが案内してる。もうちょっとしたら躑躅ヶ崎館に到着するって、先に私に伝えてこいって!」

「ん?予定より少し早いんじゃないの?」

「先触れの者は?」

「分かんない。分かんないけど、すっごく綺麗な長い髪の女の子で、すっごくすっごく美人さんなの!名前を聞いても言ってくれなかったけど・・・・声だってすっごく綺麗な声をしてるんだよ!」

長い髪をしていて、美人さん。そして声も綺麗となると・・・・。何となくだが、先触れの者が誰かなのか分かってきたしトレミーからの報告でもそうだった。

「興奮してるわねぇ。・・・・そんなに凄いの?」

「うん!それの挙措も舞みたいに綺麗で、あ、でも目だけは綺麗なんだけど、炎が燃えてるみたいに鋭くって、ちょっと怖い感じだったかなー・・・・。夕霧お姉ちゃんも、タダモノじゃないでやがるって言ってたよ!」

「・・・・・・」

つい黙ってしまったが、予想通りの展開になりそうなのは確かだな。

「なかなか良い武者のようね。その使者、一体誰かしら・・・・・?」

「・・・・・(ジーッ)」

誰?と問いかけてくるような二人の目線を受けて、俺はため息を出たあとに小さく頷く。

「織田家に人材は多いけど、目が綺麗で炎が燃えている感じの怖く見えるっと言えば、一人しか思いつかないな」

「あら?」

「来た・・・・」

「先触れの使者は・・・・・」

織田家棟梁、織田三郎久遠信長、その人しか思い浮かばないさ。そしてこの後のBGMが主題歌のメロディーが鳴るのだった。

「一真ぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

「久遠っ!」

乗ってきた馬を乗り捨てた久遠が、俺の胸に飛び込んできたのだった。俺には本妻である奏もいるが、この世界に来て初めて会った人で初めて俺の恋人となったのならこういうリアクションにはなるな。

「このうつけもの!我を・・・・我を捨て置いて、貴様は何をやっていたのだ・・・・・!」

勢いよく飛びついて来た久遠は、俺の胸に顔を埋めてくる。まるでだだっ子のように首を振りながら、積りに積もった積年の恨みみたいにぶつけてくる。

「悪いな。寂しい想いをさせたようだが、もうどこにもいかんよ・・・・」

「寂しいなど・・・・寂しいなど・・・・・っ!」

初めて聞いたような声に震えていた声であった。俺を見つめる瞳の端がきらりと光ったと思うと、みるみると涙目となり涙が溜まるのだった。

「・・・・やっと会えたな」

久遠の髪に顔を埋めて、絞り出すかのように耳元で呟く。まあ周りに人がいる事は察知しているが、今はスーパー久遠タイムだからいいと思う。久々に会えるということは、凄く嬉しいという事だからな。

「う、うう・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

まるで子供のように声をあげながら、久遠は俺にしがみついて泣いていた。回した腕に力を籠めて、一つになると言うことなのかは分からんが俺を抱きしめるように力を籠めていた。あと俺の妻たちも見ているけど、感動の再会とはこの事だなと全員思ったそうな。本当は久遠の事はずっと見ていた、風の化身となりずっと見てきたがやはり実体があるのはいいなと思った。で、抱きしめているのはいいんだけど後ろからの視線を感じたのだった。

「「・・・・・コホンッ」」

同時に咳払いをした二人。その咳払いが聞こえたと同時に、顔を上げた久遠は俺の背後に視線を向けたのだった。 
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