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旧エクリプス(ゼロの使い魔編)

作者:cipher
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第34話 キャッツ♥アイ

ブリミル暦6242年 ウルの月 フレイヤの週 虚無の曜日
皇紀2800年 5月 1日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院

"キャッツ♥アイ" の二つ名で呼ばれ、ハルケギニア中の貴族や聖職者を恐怖に(おとしい)れている怪盗がいる。キャッツ♥アイは貴族や聖職者の不正な証拠を盗み出して、各王家に証拠品を届けるのだ。平民達からは義賊と(たた)えられていた。
その手口は不明で、メイジかどうかも分かっていない。ただ盗んだ証拠に、"キャッツ♥アイ" と書かれたカードを残して行くのだ。

巨大な二つの月が、五階に宝物庫がある魔法学院の本塔の外壁をてらしている。
二つの月の光が、壁に垂直に立った人影を浮かび上がらせていた。
キャッツ・アイであった。
長い、青い髪を夜風になびかせ悠然(ゆうぜん)(たたず)む様に、ハルケギニア中の貴族や聖職者を恐怖に(おとしい)れた怪盗の風格が漂っている。
懐からマジックアイテムを取り出し、強固な固定化の魔法を解除する。後は壁を錬金の魔法で入口を作り、侵入するのだ。


Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール

夕方の訓練を終えたルイズ達が、魔法訓練場から寮に戻る途中であった。ちょうどそこに、破壊の杖を盗み出したキャッツ・アイが、宝物庫から出て来たところであった。

「あれは何!」

ルイズが本塔を指をさして、叫んだ。

「きっと、世間を騒がしている、怪盗のキャッツ・アイだ。」

司が本塔の宝物庫から、出て来た人影を見つめながら答えた。
キャッツ・アイは、見つかった事に気づいて、その場で30mはあろうかと巨大なゴーレムを作り出して、ゴーレムの肩に乗って悠々と逃げる。

「捕まえなくっちゃ。」

「今は駄目だ。全員が訓練で魔力切れの状態だ。早くこの事を教師に伝えるべきだ。」

ルイズの意見に司が反対する。
皆も同じ意見なのか、司の意見に同意する。

「お兄ちゃんは学院長に連絡して、私はコルベール先生に連絡する。他の皆んなは、それぞれ手分けして、他の教師に連絡する。」

夢が冷静に判断を下した。

「ルイズは俺と一緒に学院長の所へ行こう。学院長の手伝いをしよう。」

司の意見が出た所で、各自が各々動き出した。

Sideout

その後、学院長室に全員が集まり、対策や人の手配をしてその日は、お開きとなった。宝物庫には、『破壊の杖、確かに領収いたしました。キャッツ♥アイ』とのカードが残されていた。


ブリミル暦6242年 ウルの月 フレイヤの週 ユルの曜日
皇紀2800年 5月 2日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院

Side オールド・オスマン

翌朝、関係者全員が学院長室に集まっていた。
トリステイン魔法学院では、昨夜から蜂の巣つついた騒ぎが続いていた。何せ、秘宝の破壊の杖が、盗まれたのである。
教師達は、口々に好き勝手な事を(わめ)いている。

「キャッツ・アイ!世間を騒がしているという怪盗か!魔法学院にまで手を出しおって!随分とナメられたもんじゃないか!」

「衛兵はいったい何をしていたんだね?」

「衛兵などあてにならん!所詮は平民ではないか!それより当直の貴族は誰だったんだね!」

ミセス・シュヴルーズは震え上がった。昨晩の当直は、自分であった。

「ミセス・シュヴルーズ!当直はあなたなのではありませんか!」

「も、申し訳ありません・・・。」

「泣いたって、お宝は戻ってはこないですぞ!それともあなた、破壊の杖の弁償できるのですかな!」

「私くし、家を建てたばかりで・・・。」

「それまでにしていただこう。責任を押し付けあって、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人いらっしゃるのですか?」

司の指摘に、誰もが(うつむ)いた。
オスマンが小さく舌打ちをしたのは、司だけが気付いた。
良いところを司に持っていかれたのである。

「さて、これが現実じゃ。責任あるとするなら、我々全員じゃ。で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」

「我々、生徒だけです。魔法の訓練の後に偶然に見つけました。全員が訓練の後な為、魔力が残っておらず、皆さんに報告したのです。」

司が代表して答える。

「うむ、その判断は正しかろう。ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」

「それがその・・・、朝から姿がみえませんで。」

その時、ロングビルが現れた。

「遅れて申し訳ありません。朝から急いでキャッツ・アイの足取りを調査しておりましたの。」

「仕事が早いの。ミス・ロングビル。」

「で、結果は?」

「はい、キャッツ・アイの居所が解りました。近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。」

「黒ずくめのローブ?それはキャッツ・アイです!間違いありません!」

ルイズが叫んだ。

「そこは近いのかね?」

「はい。徒歩で半日。車で30分といったところでしょうか。」

「すぐに王室に報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

コルベールが叫んだ。
オスマンは首を振ると、目をむいて怒鳴った。

「ばかもの! 王室なんぞに知らせている間に、キャッツ・アイは逃げてしまうわ!
では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を揚げよ。」

ルイズ達が直ぐに杖を揚げたが、教師達は(うつむ)くばかりであった。

「そうか。では、頼むとしようか。その上、彼女達は、敵を見ている。その実力は教師達も認めている。」

誰も反対しなかった。全員がスクウェアのメイジである。

「それでは全員、装備を固めて、正門前に集合。ミス・ロングビルは、案内を頼みます。」

司が号令を出す。

Sideout

正門前では、司が自分の車で待機していた。司の車はハマータイプのSUV車であり、水素エンジンと水素電池(バッテリー)のハイブリッドある。8人乗りの特別車である。


Side ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール

そこへ各員が集まって、車に乗り込む。
司が運転して、案内役のミス・ロングビルが助手席、後部座席にはルイズと夢、タバサ、ジョゼ、キュルケが乗込んだ。
上空には、夢の使い魔のハクオウとタバサの使い魔のシルフィードが竜形態で飛行している。ジョゼの使い魔のルリとキュルケの使い魔のフレイムは、人型になって竜に乗っている。
キュルケもルイズ達の訓練に参加するようになって、スクウェアになったばかりであり、司の贈ったインテリジェント・デバイスにより、ミッドチルダ式を学び始めて折り、フレイムも擬人化出来るようになっていた。
下手をすると王国軍でさえ、相手に出来るメンバーが揃っている。

暫くして、目的地の廃屋近くに着いた。

そこで司がチーム編成を行なう。

「俺が索敵兼フォワードを行なう。ルイズとジョゼ、キュルケは後方より、支援してくれ。夢とタバサは上空で警戒と支援を行なう。使い魔達は、主人の護衛をよろしく。最後にミス・ロングビルは周囲警戒をお願いします。」

「「・・「はい。」」・・」

全員が了承した。
司が索敵の為、廃屋に静かに近づく。窓の脇に立って、廃屋の中の様子を伺っている。暫くすると、廃屋には誰もいないのか、扉を開けて中に入った。
後衛組は廃屋の近くまで移動して、廃屋の周辺警戒を行なう。

「破壊の杖を見つけた。」

司は廃屋から出てきた。手に大きな箱を抱えている。ルイズ達が近づいて、箱の中身を確認する。

「あっけないわね!」

キュルケが答えた。

その時、背後で土が盛り上がり、巨大なゴーレムが現れた。
肩には黒のローブを着た、キャッツ・アイらしき人物が乗っていた。

司はゴーレムに攻撃するように、合図を送った。
ルイス達は炎弾の魔法を放った。司以外のメンバーが放った炎弾の数は数百に及ぶ、さしもの巨大ゴーレムも再生する間もなく、木端微塵(こっぱみじん)となった。
キャッツ・アイは足場を失い、空中を落下してくる。司は拘束(バインド)の魔法でキャッツ・アイを捕捉して、浮遊(レビテーション)ゆっくりと降ろす。

実に呆気ない捕物劇であった。

Sideout


Side オールド・オスマン

学院長室で、オスマンは戻った司達の報告を聞いていた。

「ふむ・・・。ミス・ロングビルがキャッツ・アイじゃっとはな・・・。美人だったもので、なんの疑いもせず秘書に採用してしまった。」

「いったい、どこで採用されたんですか?」

隣に控えたコルベールがたずねた。

「街の居酒屋じゃ。私は客で、彼女は給仕をしておったのだが、ついついこの手がお尻を撫でてしまってな。」

オスマンとコルベールの掛け合いは、その後も続いていった。
生徒達は呆れて、そんな二人の様子を見つめていた。

生徒達のそんな冷たい視線に気付き、オスマンは照れたように咳払いをすると、厳しい顔つきをしてみせた。

「さてと、君達はよくぞキャッツ・アイを捕まえ、破壊の杖を取り返してきた。
キャッツ・アイは、城の衛士に引き渡した。そして破壊の杖は、無事に宝物庫に収まった。一見落着じゃ。
君達の、"シュヴァリエ" の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。」

「本当ですか?」

キュルケが、驚いた声で言った。

「ほんとうじゃ。君達はそのぐらいのことをしたんじゃから。
さてと、今日の夜は "フリッグの舞踏会" じゃ。今日の舞踏会の主役は君達じゃ。」

Sideout


Side (つかさ)一条(いちじょう)

アルヴィーズの食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会はそこで行われていた。司はバルコニーの枠にもたれ、華やかな会場をぼんやりと眺めていた。
今日は一年生の初めての舞踏会のである。学生達の親睦に邪魔にならないようにしているのだ。
ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
門に控えた呼び出しの衛士が、ルイズの到着を告げた。

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールのお〜な〜り!」

ルイズはダンスの誘いを断ると、司を見つけてバルコニー方へ歩いて来た。

「ルイズ、素敵だよ。
私くしと一曲踊って下さい。素敵なレディー。」

司はルイズの手を取ると、ホールの方へ歩いていく。
司は華麗なステップで、ルイズをリードしてゆく。
周りの女生徒は、まるで王子様とお姫様を見ているような、顔つきで溜息を漏らした。

Sideout

その後、夢に見つかり、次は私の番ねと、変わるがわる踊らされる司であった。


ブリミル暦6242年 ウルの月 フレイヤの週 マンの曜日
皇紀2800年 5月 4日 トリステイン王国 トリスタニア(首都) カフェ・キャッツ♥アイ

Side ???

一人の女性が人を待っていた。人形を思わせるような白い顔に、白と黒の派手な衣装を身に着けた美少女だ。
そこへ待ち人らしい男性が現れた。それは光輝であった。。

「ジャネット、ご苦労様。追加の報酬は何時もの口座に振り込んである。これで、キャッツ・アイの作戦も終了だ。他の兄弟たちにもお礼を言ってくれ。ジョゼフ王にも宜しく伝えておいてくれ。」

何を隠そう、キャッツ・アイの正体は元素の兄弟達である。ロングビルの正体は、元素の兄弟のジャネットであった。先住魔法のマジックアイテムでロングビルに変装していた。
捕まった時だけ、マザーの操作する遠隔(リモート)義体と入れ替わっていたのである。司や各王家には、作戦内容を伝えていたのだ。

Sideout
 
 

 
後書き
キャッツ♥アイの話でした。
義賊なので土くれのフーケでなく、キャッツ・アイとしました。
やっと原作の1巻が終了しました。 
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