旧エクリプス(ゼロの使い魔編)
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第33話 微熱のキュルケ
ブリミル暦6242年 フェオの月 ヘイムダルの週 マンの曜日
皇紀2800年 4月12日 トリステイン王国 トリステイン魔法学院
Side キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
キュルケは困惑していた。キュルケの誘惑に靡かない男はいないのだ。ただ一人を除いて。使い魔の召喚の儀において、ルイズに召喚された、司・一条である。
授業においては、教師顔負けな知識を誇り、いつの間にか補助教員になっており、決闘ではギーシュを圧倒していた。
授業中に流し目を送ったり、胸のボタンを一つ外して胸の谷間を強調したり、足を大きく組替えたりしたのだが、全く無関心であった。
素性を調べると、太平洋連邦の日本帝国出身で、妹がルイズと首席を争う夢であり、兄がルイズの一つ上の姉のカトレアと結婚して、フォンティーヌ領の伯爵に叙爵されている。
今やフォンティーヌは、トリステインでも有名な大都市となっており、ツェルプストーの交易も盛んだ。それにラ・ヴァリエールとツェルプストーを組み込んだ経済圏を確立している。
ゲルマニアのウィンドボナ(首都)とトリステインのトリスタニア(首都)を結ぶ、磁気浮上式鉄道の駅の建設で、ラ・ヴァリエールとツェルプストーにも駅を作る便宜まで、計ってくれたと父から聞いていた。
それなのに利益を決して独占しない。我が領地に多額の投資をしていながら、権益は放棄している。全く不思議な一族だ。その疑問を父に聞いたら、権益を独占していたら一時的には、多大の利益を得ていただろう。しかし権益を独占しなかったから、今の相互発展したのだと言う。多分、10年先や20年先の事を見越して、投資をしているらしい。
またラ・ヴァリエールとツェルプストーを、一つの経済圏にしたのは、戦争を起きなくする為だとも言っていた。今、ラ・ヴァリエールとツェルプストーが戦争したら、得る物より失う物の方が、大きいらしい。父が皇帝より侮れないと言わしめていたのを思い出す。
でも、私にはツェルプストーの血が流れているのだ。こんな事で諦めるもんですか。
昼食時、司はルイズの横に座って食事をしていた。
「ここ宜しいかしら。」
キュルケは司の空いている右側の席に立ち、司に尋ねた。
「どうぞ、お嬢さん。」
司は返事をすると、席を立ち、キュルケの為に椅子を引いた。
司はマナーも完璧であった。
「ありがとう。」
キュルケは礼を言うと席に着いた。
「キュルケ、お兄さんを狙っても無理よ。アンリエッタ姫やガリアのイザベラ姫の縁談を断わっているんだもの。容姿やお金では、落とすの絶対無理だから、諦めなさい。」
ルイズが口を挟む。
「あら、どんな方が好みなの?」
キュルケが司に、質問した。
その途端、周りの女生徒が静かになる。聞き耳を立てているようだ。
もし魔法学院でアンケートを取ったら結婚したい男性のナンバー1に選ばれるだろう。その証拠に、配膳していたメイド達まで、配膳を止めて聞き耳を立てている。その一方、男子生徒は諦めている。ルックス、家柄、お金、知識、実力で敵わないと認識していた。
「一般人、この国で言うと平民かな、様は貴族とか特別な存在でないと言う意味の言葉。一般人でも構わない、ただ価値観が同じで、知的で奥ゆかしい人かな。」
「ふ〜ん。やっぱり変わっているわね。」
「別に普通の事だよ。ハルケギニアだけだよ、身分に拘っているのは。他の国の歴史の中では、王族だって一般人と結婚した例があるから。」
「へぇー。」
「きっと、ハルケギニアもそんな国に、なると思うよ。ゲルマニアでは、お金で爵位が買えるじゃないか。ある意味、能力主義じゃないか。国のために忠誠を誓うのに、貴族も平民も関係ないよ。貴族は、貴族なりに重い責任があるだけだよ。そんな重い責任を果たさない貴族は、衰退が待っているよ。」
Sideout
何故か、その日から女生徒やメイド達が奥ゆかしくなるのであった。
キュルケはその後から、ルイズたちの訓練に参加するようになった。
後書き
微熱のキュルケの話でした。
次はフーケの話しかな?ロングビルは誰でしょうね。
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