アラガミになった訳だが……どうしよう
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原作が始まった訳だが……どうしよう
36話
前書き
書き方を変えてみましたがどうでしょう?
前とどっちが読みやすいですか?
「以上がシオ君の服の素材集めで君に頼む仕事だよ」
次の日にシオを連れ戻した上で、全員集まって各々のこなすべき仕事をサカキが割り振った。で、それを簡単に説明すると、服の生地はユウ、アリサ、ソーマが素材を集める。
デザイン用のリボンやらなんやらの素材集めが俺、サクヤ、コウタ。最後にシオの採寸はイザナミがやることになった。
イザナミは嫌がったが、シオが暴れた時に抑え込めるだけ腕力やらなんやらで俺かイザナミのどちらかになった訳だ。最後はクジで決めて、イザナミがハズレを引いたわけだ。
「うう……また寝込んだらよろしくね、マキナ」
イザナミはそう言って部屋の奥に行き、彼女の行動が服に関係するものだと気付き暴れるシオと格闘しているわけだ。
しかし、偏食場パルスが飛んでくる事はなく、突然物音が止みその場にいた全員が二人に何があったのか心配して扉を開けた。
すると、シオの部屋から真っ黒の布のミイラが現れた。アリサとコウタはホラーが苦手だったらしく部屋の隅に逃げ、ユウとサクヤは予想外の光景に呆然とし、黒いミイラの正体がイザナミの黒い腕を全身に巻きつけられたシオだと分かった俺とソーマはため息をつく。
「採寸は出来たって事でいいのか?」
「まぁねーメジャー当てようとしたら暴れるんだもん、こうするしかないでしょ?」
イザナミ紙に丈やらの長さを書いてサカキに手渡すと、自分の仕事は終わったというように部屋に帰ろうとする。
「おい、シオをこのままにしとくのか?」
「あー……それなら勝手に解けるから大丈夫だよ。私は私でやることもあるし、服作りは皆で頑張ってね」
妙に疲れた様子のイザナミには少し違和感があったが、気まぐれなあいつの事だと考えて深く考えず引き止めることはしなかった。
サカキも俺と似たような様子だったが、下手に追求すれば厄介な事になると踏んだのか彼もそのままイザナミを見送る。
「サクヤ、とりあえずシオを部屋に入れておいてくれ。アラガミとはいえこんなところで裸というのもマズイだろ」
「あっ、はい」
サクヤは前が見えずにフラフラと動いているシオの手を握り、シオの部屋の中へ誘導した。
さて、ではこっちも仕事をこなすとするか。俺達のグループの担当はクアドリガか……あの戦車の素材をどう加工すれば服のパーツになるのかは知らんが、その辺りは技術者に任せとしよう。
「……で、そこの二人はそんなにミイラ、いやホラー苦手なのか?」
「「……はい」」
「ソーマはそもそもその手のものはそもそも信じてなさそうだが、ユウは?」
「俺ですか?苦手ですよ?」
む?意外だな、こいつに怖いものがあるとは思わなかったな。
「その割りにさっきのは大した反応しなかったが?」
「俺が苦手なのはオバケですから」
「リーダーも苦手なんですか?」
「うん、斬れないし撃てないからね」
……その場にいた全員が納得がいったという表情を浮かべて、こいつはこういう奴だと再認識した。
「さて、確かこの辺りだったよな?」
コウタとサクヤと共に壊れた空母の辺りにクアドリガを探しに来た訳で、今回もありがたいことに俺は神機無しなんだが……なんだ二人ともその顔は。
「いや、マキナさんって本当にアラガミだったんですね」
コウタはそう言って俺の手足の具足と、肩から伸びているマントを見る。
「前にも言っただろ、信じて無かったのか?」
「いやーマキナさん髪も黒いし、目も黒いでしょ、シオと全然違うから実感はなかったんですよ」
「ああ、そういうことか。たしかに仕事をするのに、髪と目は人間に似せるようにしてたからな」
フェンリルに所属してからずっとこのままだったし、別段変える必要も無かったからな。そう考えると、ざっと二十年近く殆どこのままだったな。
それに白い髪にだったのはこの世界に来てからしばらくの間と、ロシアにいた時の間だけか。
「あの、マキナさん、武器はないんですか?」
「おいおい、手足のこれが見えないのかサクヤ?」
「格闘……ですか?」
「なんだその不安そうな目は?これでも十年以上これで戦って来たんだ、心配するなよ」
多分この世界じゃゴッドイーター達よりは長い間戦ってるだ、多少は信頼して欲しいものだ。
まぁ、論より証拠だ。信頼はクアドリガを叩き潰して得るとしようか。
この世界での信頼は全て実績だけで得てきたんだ、いつも通りの事だ。
「サクヤ、コウタ、小型アラガミの排除を優先で頼む。やばくなったら素直に逃げてくれ、いいな?」
「マキナさんはどうするんですか?」
「ん?クアドリガを殴り倒す」
「一人で、ですか?」
ああ、まだサクヤはリンドウの奴を引き摺ってるわけか。分からんでもないが、下手に近くにいられては巻き込みかねん。
「心配するなって、イザナミよりは複数相手は苦手だがこの程度なら慣れたもんだ。それに優秀な後衛がいる、敗率はないさ」
まだ不安そうだがその辺りは一旦コウタに任せるとしよう。こういった精神面をどうにかしてやるのは俺は向いていないし、今はそれほど時間に余裕もない。
両腕に空気を圧縮し、具足を起動させる。と言っても、相手はクアドリガだ。イザナミとやり合う時のようにプラズマを発生させる程ではなく、軽めの圧縮率にしておく。
後ろに視線をやるとコウタとサクヤはちゃんと下がって、周囲のオウガテイルに狙いを定めている。ふむ、二人とも切り替えはしっかり出来ているな。
ゲーム中ではよく分からなかったが、流石極東支部の面子と言うべきだ。精神が乱れていても仕事には影響が出ていないし、指示にも従っている。
成る程、ではそれに応えようとしよう。瓦礫を押しのけて現れたクアドリガを視界の中央に捉え、距離を詰めるために地面を蹴る。
俺の進路上にいたオウガテイルは後ろの二人が正確な射撃によって排除され、俺は速度を落とすことなくクアドリガに正面から拳を叩き込めた。拳を伝わってクアドリガの前面装甲が砕け、体の内側に衝撃が伝わるのが分かる。
うむ、やはりここまで的確な援護があると戦いも楽だな。今までの俺と組んだ奴はカノンしかいないというのもあるが、後ろに気を使わなくていいというのは本当にありがたい。
クアドリガは俺を追い払うために体の内部に溜め込んでいた熱を放出し、周囲が燃え上がった。これならば普通の人間なら全身に重度の火傷を負い、ゴッドイーターでも直撃するのは危険だろう。
だが、何度も言わせてもらうが俺はアラガミだ。この程度の熱など何の問題もない。
炎の中でひび割れた装甲を掴み、引き千切る。クアドリガは他のアラガミどうように俺を人間と錯覚していたらしく、俺が問題なく動いている事に動揺している。
そこに付け込ませてもらうように、装甲に守られていた内側の肉に硬質化させたマントを突き立てて、クアドリガの背中まで一気に伸ばして貫通させる。
「じゃあな」
そのまま体を上に捻る事でマントを振り上げ、クアドリガを体の中心辺りから頭まで切り裂いた。可能な限り打撃は抑えたのでクアドリガの素材は前面装甲を除いて、損傷の少ない状態で手に入るだろう。
「二人とも終わったぞ……ってだから何だその顔は。なんでそんな微妙に引きつった表情なんだ」
「いやだって、これ、俺たちが来る必要ありました!?」
「おいおい、俺で驚いていたらイザナミを見たときが大変だぞ、コウタ?」
「マキナさんの言う通り心配はいらなかったですね……」
……いや、確かに心配するなとは言ったが、そんな疲れ切った表情を浮かべるな、サクヤ。
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