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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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原作が始まった訳だが……どうしよう
  35話

 
前書き
今回は短めです 

 
ある日の昼、俺は酒を飲みながら本を読み、イザナミは台所で新たな調味料開発の試行錯誤を繰り返していた時の事だ。
最近、イザナミは料理への挑戦を楽しんでいるらしく、同じ部屋にいたとしても比較的絡んでくることも無くなり、幾分か落ち着いた時間を過ごせるようになった。
とはいえ、こうして落ち着いて本を読んだりする時間が取れるのは割と貴重で、幾分か俺が上機嫌だった時だ。
俺がグラスを口につけ、酒を口に含もうとした瞬間、頭を金槌か何かで思い切り叩かれたかのような衝撃が走った。
その拍子に思い切りグラスに顔をぶつけて割ってしまい、破片が顔に刺さるわ割と気に入っていた服に酒を零す羽目になったのだった。思わずイザナミの仕業かと思い後ろを振り返ると、イザナミも調味料の入れ物に顔を突っ込んで倒れているじゃないか。
「あうう……頭が回るし、口の中はチリソースで一杯で辛いし……水〜」
チリソースまみれのイザナミは水道で顔を洗うとあたふたと冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを一気飲みしている。俺も顔に刺さったグラスの欠片を取り除きながら、クローゼットから新しい服を着た。
アラガミの体だったお陰で痛みは一切ないのだが、刺さるには刺さっているので鏡に向かい破片をチマチマ抜かねばならない。加えて刺さっているのがガラスと言うこともあって、非常に見にくい……面倒だ。
「さっきは一体なんなんだ?」
水を飲んで一息ついたイザナミに聞くと、酷くウンザリした表情で俺の方を見た。どうやら頭痛と舌の方へのダメージで機嫌が悪いらしいな。
「シオだよ、何かしら嫌な事があって暴れたんだよ。さっきのは強力な偏食場パルスが来ただけ、ただ耳元で爆竹を鳴らされるようなものだよ……うーん、あったま痛いなー」
成る程ね、こんなものが指向性を持ってきたなら意識を飛ばされるのも分かるな。
駄々っ子が下手に力を持つとこうなるのか……うん、マズイな、これ。こんなものがしょっちゅう来てはこっちの身が保たないぞ。
「それは同感だね。行こうか、こんな癇癪が何回も起こされちゃ、色々とやってられないよ」
「珍しく気が合ったな、さっさと原因を解決しなきゃ日常生活にすら支障が出る」
俺とイザナミは部屋を出ると、エレベーターのボタンを殴るように押してシオのいるサカキの研究室に向かう。そして、サカキのドアを蹴破ってサカキの胸倉を掴む。
「一体何があったんだ!!」
「一体何があったの!!」
「ふ、二人とも……す、少し落ち着いてくれないかな?」
サカキを解放しながら俺とイザナミは事情の説明を迫ると、サカキはシオに服を与えようとしたらしいのだが、肌触りやらが気に入らなかったらしく暴れたとの事だ。
イザナミの与えたフェンリルの旗に似せたオラクル細胞で編み上げたものは、強度的に限界が来たらしく端々のほつれが酷くなっているらしい。そこで新しい服を用意しなければならないが、サカキでは着せることは出来なかったらしい。
「で、シオは何処だ?」
「ああ、彼女ならあの部屋にいます。今、アリサとサクヤさんが着せようと頑張ってますよ」
部屋の隅のソファーに腰掛けていたユウが俺たちの態度を見て、不思議そうに研究室の奥の赤い扉を指差す。
「……今、着せようとしてるんだな?」
「はい、そうですけど?なんだか顔色が悪いですよ?」
偏食場パルスなど分かるはずもないユウとサカキは、何と無く結末を予測でき、割と本気で凹んだ俺達二人を本当に不思議そうに見る。
「……マキナ、諦めよ」
「……だな」
直後、俺たちは奥からの轟音と共に今度は床に思い切りぶっ倒れ、意識を飛ばされる羽目になった。





「あー……まだ頭の中が揺れてる気がするぞ……」
「同感ー……気分悪いよー……」
俺はサカキの研究室のソファーに横になりながら、サクヤから手渡されたコーヒーを受け取る。
「二人とも大丈夫ですか?」
どうやら俺達が倒れた直後、アリサとサクヤから逃げ出したシオは壁を突き破って外に出たらしい。場所の特定はすぐに出来たらしく、俺達が意識を取り戻す前にユウとソーマが探しに行ったそうだ。
まぁあの二人なら何の問題ないだろうし、確か原作にもこんな話があったはずだ、多分。
まだイマイチ頭が回復し切っていないのか、今だにまともに考えられないし意識もはっきりとしない。とりあえず体をソファーから起こしながら、サクヤから渡されたコーヒーを啜る。
偏食場パルスをはっきりと認識できるイザナミは俺より酷いらしく、体を起こすことも出来ず唸っている。
「大丈夫、と言いたいが大丈夫ではないな。しばらくマトモに動けそうにない」
「一体何があったのかな?教えてもらえると大変助かるのだけれどね?」
サカキは研究者として先ほど俺達が倒れた事に興味があるらしく、その糸目を珍しく開きながら迫ってくる。正直、割と怖いぞ?
「俺も詳しくは分からんが、シオの発した馬鹿でかい偏食場パルスをくらったからだ。お前らで言えば耳元でスタングレネードを爆発させられたようなもんだって言えば分かるか?」
「ふむ……強力な偏食場パルスを発すればアラガミは皆そうなるのかい?」
「いや、シオのような強さの偏食場パルスを発するアラガミはいない……それにアラガミの意識が飛ぶ前に神機が停止する。お前らの役には立たんぞ」
これが普通に使えるというならアラガミを遠ざける事は簡単だろうが、こんな馬鹿げた強さはそうそう出せない。
そもそもいつぞやのキュウビでもここでではなかったんだ、他のアラガミでも恐らく無理だろう。
大体、そんなアラガミがやたらといてたまるか。
「それは残念……しかし、実に興味が深い」
なんぞ良からぬ考えを巡らせているな。
「うう……私も頂戴」
ようやく起き上がれたイザナミはサクヤにコーヒーを求めながら、頭を軽く左右に振っている。本当に気分が良くないようで目に見えて顔色が悪いな……仕方ない、か。
「サクヤ、悪いコーヒーは俺の部屋まで運んで貰えるか?」
「あ、はい」
イザナミをソファーから起こして、その不自然なまでに軽い体を抱きかかえて研究室から出る。
「マキナ、どうしたの?」
どうしたじゃないだろ、さっさと部屋に戻って寝るぞ。どうせあそこにいても俺達に出来ることなんてないんだ、じゃあちゃんと休める場所にいる方がいいだろ?
第一、これ以上あそこで弱っていたらサカキに余計なデータを取られかねん。
「ふーん……本当かなー?」
……何か言いたいことがあるのか?
「なーんでもないよ、ただこれだけ近いと思考だけじゃなくて感情も読めるって事だけは言っとくよ」
……じゃあ、せめてそのだらしなく緩んだ表情をどうにかしてくれ。
「無理だよ、せっかくマキナが優しくしてくれてるんだもん。そりゃ顔も緩むよー」
はぁ……さいで。とりあえず、部屋に着いたらさっさと寝ろ。お前が落ち着いたらシオの服作りの素材集めだ、これ以上お前が倒れるたびにこんな事をしていたらこっちの身がもたん。
「はいはい、そういうことにしとくね」



















 
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