アラガミになった訳だが……どうしよう
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原作が始まった訳だが……どうしよう
34話
サカキがシオについて、彼女が人型のアラガミであり、進化したが故に人間を捕食の対象としなくなり、他のアラガミを喰らうようになったということを説明している。基本的には俺やイザナミと同じではあるが、唯一の差としてコアの性質が違う。
俺の場合は中身が人間という訳の分からん存在だが、コア自体はごく普通のコアだ。元がウロヴォロスであるイザナミも当然通常のコアだ。
しかし、シオのコアは終末捕食を行うノヴァを制御する為の特別なコアだ。イザナミが言うには偏食場パルスの強さが桁違いらしく、その気になれば相手のアラガミの意思を無視して命令できる程らしい。
幸いと言うべきか、シオはそういった使い方を理解していないらしく、精々子供のように駄々を捏ねる時に位しか使わないそうだ。
イザナミは一度それを食らったらしく、その日は本当に記憶がなく、気がついた時には山ほどのアラガミを捕まえてシオに届けていたそうだ。
イザナミで無理だったのならば俺なら造作も無く意識を飛ばされるんだろうな……
「……この子の事と私達第一部隊だけの秘密にするという事は分かったんですけど、博士……どうしてマキナ少尉がここに?」
サクヤのその言葉に既に俺の正体を知っているソーマ以外の視線が、一斉にこちらに向けられる。
「ふむ、彼は私の直轄の部隊の人間だから……という嘘はもう通じないね。マキナ君、話してしまっても構わないかな?」
「ここまで来て言い逃れも何もあったもんじゃないだろ」
「分かった、それでは少し長くなるが構わないかな?」
サカキはそう言って全員を見回して、一応の確認を取る。無論、全員興味があるようで頷き、サカキの話を待つ。
「それでは単刀直入に言わせて貰うとマキナ君は、ゴッドイーターが誕生する以前から存在し、人類の味方である人型のアラガミだよ」
「おじさんが……アラガミ?」
アリサが震える声で俺に問いかけてきたのだが……お前はお前が子供の時から外見が変わっていない俺に疑問を持たなかったのか?お前が物心ついたのがいつなのかは知らんが、少なくとも十年以上外見が変わってないんだぞ?
「そうだ、俺はアラガミだ」
我ながら随分と間抜けな答えだが、これ以外どう答えればいいのか分からない。いや、それ以前にこれ以外の答えようがあるならば教えてもらいたいものだ。
「博士、質問」
「はい、コウタ君」
「マキナさんがアラガミっていうのは納得……はできてないけど、人類の味方ってどういう事ですか?」
納得できないなら腕でも変化させようか?などと考えたが、別段そこを追求するつもりはないらしく別の方向の質問をされた。
「それについては……そうだね、彼の大きな功績として、神機の開発に対しての多大な貢献を挙げれば分かってもらえるだろう」
「神機の作成?」
「彼はフェンリルが神機を開発するに当たって、手に入れる事の出来なかったアラガミのコアを大量に仕入れてくれたんだよ。
あの頃は神機が無かったので、我々人類はアラガミの死骸から手に入れたオラクル細胞を研究する他無かった。しかし、神機開発に必要な肝心のコアは大抵は他のアラガミに捕食されていたり、損傷が酷くて使えないものばかりで相当開発は難航していたんだ。
それを彼が安定して、しかもほぼ無傷でフェンリルに提供してくれたおかげで飛躍的に神機の開発は進んだんだ」
まぁ頑張りすぎた結果ピストル型神機はまともに使われず、すぐに第一世代神機が開発されて焦ったんだがな。
「おじさん……そんなに昔からアラガミと戦ってたんですね」
「こっちはあくまでアラガミを食って腹を満たすついでの仕事だったんだがな」
「でも、どうしておじさんは人類に味方してくれんですか?アラガミなんですよね?」
「大した理由じゃないさ」
この世界はゲームで結末を知っていて、終末捕食でまとめて殺されるのを避ける為です……なんて言える訳がないだろうに。
「アリサ君、マキナ君はその質問には答えてくれないよ。彼、具体的な理由は私にも教えてくれないんだよ」
少なくともお前には何があろうと教えるつもりはないがな。
「ところでマキナ君、私からも質問していいだろうか?この子が君の事をおとーさんと言っていたのだが、心当たりはあるのかな?」
「知らん、それ以前に俺は未婚だ」
「え、イザナミさんは?」
アリサ、頼む少し黙っててくれ。
「ああ……彼女の。言ってくれれば電報の一つでも送ったのだが……君と私の仲じゃないか」
「喧しい、こいつとは血縁関係なんて一切ないし、お前には電報なんて送られら日にはこの部屋にアラガミを生きたまま放り込んでやるからな」
「おとーさん!!ハラヘッタ!!」
シオ、お前も黙れ。
……と言っても、ここでごねられる訳にはいかんな。イザナミの二の舞だけはゴメンだ。
「おや?マキナ君、どこに行くんだい?」
「アラガミ狩りだ……腹が減っているんだろ、そいつ」
「おじさん、やっぱりおとーさんじゃないですか」
笑うなアリサ、人を不器用な優しい人みたいな扱いするな。そんな残念なキャラになるのはゴメンだ。
「マキナ、私も行くよ」
アナグラを出たところでイザナミと出会った。どうやら、俺の思考を何処かで読んでいたらしく、状況はすでに把握済みらしいな。
なら、一つだけ確認させてもらおう。
「何かな?」
何でシオの記憶が残ってるんだ?
「うーん……どうにも記憶は消えてるみたいなんだよ」
じゃあ、俺がおとーさんと呼ばれた理由はなんだ?
「多分になるけどいいかな?」
ああ、構わない。
「記憶は失っているけど、知識が残ってるんじゃないのかな?
辞書を引くみたいにマキナがおとーさんだって事だって分かってるけど、それに対しての感情や、どうしてそう呼ぶようになったのかって理由が分からないって事なんじゃないかな?」
という事はお前の事もおかーさんとは呼ぶが、お前が教え込んだ有る事無い事は忘れてるって事か?
「残念だけどねーまぁ、いっか」
随分と簡単に流すな……お前ならもう一度仕込むとか言うかと思っていたぞ?何か考えているのか?
「そうだね……そりゃ、私も色々考えているけどさ、それはヒミツだよ」
……お前とこんな腹の探り合いをしても勝ち目なんてないから、こっちも一々気にしている訳にもいかない。だが、お前も分かってるとは思うが、流石に俺でも我慢できないことをされれば本気でお前とやり合わなきゃなる。
それだけは覚えておいてくれ。
「……覚えておくよ」
イザナミは若干陰りのある表情を浮かべて、静かにそう答えた。こいつがこういう表情を浮かべるのは珍しく、いつものこいつとは大分違う雰囲気に少し驚いたな。
できればこれで本当に止まってくれればいいんだが、もしもの時を思い浮かべると少し心が重くなる。
俺自身少なからずこいつの事は気に入り始めているのだ。正直、勝率云々ではなく個人的では感情として戦いたくはないんだ。
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