魔法少女リリカルなのはStrikers~誰が為に槍は振るわれる~
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第一章 夢追い人
Prologue
前書き
どうも初めましての方は初めまして、nk79といいます。
まだまだ未熟者で、色々と至らない点もございますが、温かい目で見守ってくださると幸いです。
それでは、Prologueお楽しみください。
「パパー!!ママー!!」
「やめてっ、やめてくださいっ!!」
「貴様ら、一体なんの権利があって!!」
今日も昨日と同じように終わる、そう思っていたときだった。
裾や脇のところで固まったしわが目立つ白衣に身を包んだ研究者のような人と、黒くてパパがいつも着ているものよりも大きく見えるスーツに身を包んだ怖そうな男の人達がいきなり家に来て、僕の腕を掴み、連れて行こうとした。
もちろんパパとママは僕を助けようとした。けれど、黒スーツを着た怖い人達が押さえつけていて二人とも助けに来ることはできなかった。
「それはこちらのセリフでしてね。モンディアル家のご子息、エリオくんは、既に病気で亡くなられている」
展開されたウインドウには、“エリオ・モンディアル”のことやお墓の前で泣いているパパとママが映っていた。
ウソだ……。
…………。
「そしてこの子は亡くなった息子さんの特殊クローン……プロジェクトF、忌まわしき生命創造技術で生み出された、劣化コピーです」
「えっ……」
ウソだ。
・リ・・ん。
その話を聞いた途端、パパとママは大人しくなって、僕から目をそらした。
それは、言葉よりも何よりも、その話が真実でることを語っていた。
でも、でも……僕はその真実を認めたくなくて、心の中では分かっているのに、何度も何度も否定した。
ウソだ!!!!
・リオ・ん。
僕は白衣を着た人に引きずられて、家の外に連れ出されて行った。
「パパー!!ママー!!嫌だー!!嫌――」
「エリオッ!!」
「――お兄ちゃん!!」
そこに学校帰りのお兄ちゃんが助けに来てくれた。
「お兄ちゃん!! 嫌だー!!助けてー!!」
「お前ら何をしてる!!弟を放せっ!!」
そういってお兄ちゃんは白衣の人に掴み掛かろうとしたけれど、スーツの人達が押さえつけた。
「ぐっ・・・放せ!!放せぇぇ!!」
「まぁ待ちなさい。君もこの子のことを知っておくべきだ。この子はね、君の弟じゃないんだよ」
「なにを訳の分からないことを言って――」
「――この子はね君の弟の偽物なんだよ。その年なら、聞いたことくらいはあるだろう?クローン人間という言葉くらいは」
「なっ!!」
そしてお兄ちゃんにパパとママに見せたのと同じウインドウを見せた。
「嘘だ・・・・。」
お兄ちゃんはそれを見るとパパとママと同じように大人しく……でも目だけは僕から離れなかった。
「お兄ちゃん!!!!!!」
僕は必死にお兄ちゃんに手を伸ばしたけど、その手は届かなくて――
パシンっ!!
――お兄ちゃん自身によって振り払われた・・・
「っ!!!!」
「待って!!お兄ちゃん!!嫌だぁぁぁぁ!!!」
そしてお兄ちゃんは家に走っていった。
その背中が振り返ることは決してなかった……
「エリオくん!!」
「うわぁぁぁ!!」
そして僕は目覚めた。
いつもと同じ布団、同じ場所で。
「ハァ……ハァ……ゴメンキャロ、迷惑掛けて」
「ううん。それよりエリオ君大丈夫?すごくうなされてたよ」
「大丈夫。うなされてても、ただの夢だから……」
そうあれはただの夢。もう、過ぎたこと……。
「それよりいま何時? 今日は訓練場の当番だから急がないと」
「あっ!? それでエリオ君を起こそうとしてたんだった!?」
「じゃあ急がなきゃ!!」
僕はこうして今を生きてるんだ。だから、忘れよう。両親のことも、そして……。
○●○●○●○●○●○
ミッドチルダ中央区画湾岸地区南駐屯地内A73区画。堅苦しい地図の上ではそのように呼称されている場所にある機動六課隊舎の前に、一人の少年が立っていた。
歳はちょうど10代前半から半ばあたりだろうか。子どもというには少しばかり色々と知りすぎていて、かといって大人というにはまだまだ少々幼さが残る年頃、そのくらいの年頃の少年だった。
「ここが機動六課……オレの新しい職場か」
思わずといった感じでこぼれた独り言は世間ではまだ思春期に入るか入らないかという年頃にありながら、その少年が既に社会人であること――それも過酷な環境に身を置く軍人であることを示していた。
そんな年不相応な環境に身置きながらもそこはやはりまだまだ子ども心が残っているのだろうか。少年は隊舎の入口の前に立ったまま、目的地であるはずの隊舎の中には入らずにこれから自分の職場になる建物を眺めていた。
顔は左から右、そしてまた左へゆっくりと、対して目は上から下にそして再び上へと忙しなく。食い入るようにというわけではないが、それでも興味を持っているいるということが傍目に見ても分かるほどには時間をかけて眺めていた。
そして数度の顔の往復と十数回の視線の上下の後、少年は少し首をかしげる。
「思ってたより古い感じだな、隊舎」
≪いやいやいや、これからお世話になろーっていう場所を初めて見た感想がそれってどうなんですか~人として≫
少年のあんまりな感想に、彼の指輪はさすがにそれはといった様子で注意する。しかし少年はそれをさほど気にした様子ももなく肩をすくめて、正直な感想だからと苦笑をみせる。
そんな彼に若干説教モードに入りつつさらに注意しようとする指輪だったが、彼の言葉はそこで終わっていなかったらしい。それに、の一言で注意の頭を押さえながら、彼は言葉を続けた。
「ここは、いいとこだ」
そう言う少年の顔は、先程の苦笑から少し頬が緩み柔らかな笑みに変わっていた。
「色々なとこ回されてきたから分かるんだけど、うん、ここはいいとこだ」
機械仕掛けの指輪にはわからないなにかを根拠にして、少年は同じことを二回言う。
ここはいいとこだ、と。
もしこれが普通だったなら、それは喜ばしいことだっただろう。実情がどうであれ、少なくともフィーリングが合うのならそれはその人にとっていい職場になるのだから。その人間は、いい職場に巡り合えた幸運に感謝するなり、機嫌よく鼻歌を歌うなり、なにかしらプラスの気持ちに合った行動をとるだろう。
だからこそ、少年が自分の新しい職場を褒めた後にとった、溜息を吐く、という動作は、少年が普通ではないなにかしらの事情を抱えていることを示していた。
≪いい加減、入口の前でぼーっと突っ立って感想を言うのはやめにしたらどうですか~?聞くのにも飽きましたよ≫
「……そうだな」
気持ちを切り替えるきっかけを作ろうとしたのか、それとも単に言葉通り飽きただけなのか。どちらかわからない言葉に押されて少年は前に一歩踏み出した。
少年がどんな事情を抱えているのか。そしてその事情が、この機動六課にどのような影響を及ぼすのか。このときはまだ、誰にも知る由もないことだった。
分かることがあるとすればただ一つ。それは、この少年が機動六課の敷居を跨いだということ。ただそれだけだった。
to be continued
後書き
お楽しみいただけたでしょうか。
主人公君とその相棒ちゃんの名前は、伏せたほうがおもしろいかなーとか思い伏せてみました。でも逆に話が分かりづらくなっちゃったかな(汗)
次話は早めに投稿したいと思っています。できれば一週間くらいで。
なんかフラグっぽくなってるけど気にせずに!!
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