アラガミになった訳だが……どうしよう
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
23話
前書き
遅れました&すごく短いですm(_ _)m
次回から原作スタートです
「お知り合いがいらっしゃったんですか?」
ん?急にアリサが話しかけてきたぞ。
この頃だとゲームでの序盤のような態度で、俺みたいな得体の知れない奴とは話さないものだと思っていたが意外だな。
「ああ……まぁそんなもんだ」
「そうですか……」
なんだ?妙にさっきから視線を感じるな?
そりゃ、サカキのような奴からいきなり初対面の相手を墓地に案内しろなどと言われれば、そんな風に警戒するのは当然か。
だが、視線の主がアリサだということは分かっていても、こうじっと見られるとイザナミの事を思い出してしまう。あいつは俺に対して何は無くとも視線を向けてくるのだ、曰く見ているだけで幸せになるらしい。
そんな事を言われても流石に延々と見られ続けるというのは、中々に辛いのだよ。
「アリサ、俺を警戒するのは分からんではないが、そうジロジロと見られてはどうにも困るんだが?」
「あ、すみません……ただ……」
「ただ?」
「何処かでお会いしたことありませんか?」
「んー……お前みたいな可愛いお嬢さんに口説かれるのは悪い気分じゃないが、生憎と俺は今現在女性問題は手一杯なんだよ」
イザナミがいる段階で軽く女性恐怖症になりそうだというのに、これ以上悩みの種を増やさないでくれ。
それにお前の相手は主人公だろうに!!
「違います!!本当に何処かで会った事がある気がしただけです!!それに女性問題が手一杯って……ドン引きです」
「……誤解があるようだが数人と関係があるのではなく、厄介な奴に目をつけられてるってだけだ。それと、多分会ったことはないぞ。
俺のロシアでの知り合いは全員もういないし、任務も単独でしかやってないからな」
「そう……ですか……」
そもそも、こんなスーツにサングラスをかけた相手に見覚えがあるもなにも、殆ど俺の要素がないじゃないか。普段は半袖と半ズボンだぞ?
普段の俺ならともかく、今の俺に会ったことがないかと言われても困る。
そんな話をしている内に、サカキが手配したらしい車に乗り込んだ。
流石に雪原を徒歩で行くのはゴッドイーターでも無理があるらしく、人前ではちゃんと乗るようにサカキに言われた。
……そういう事はロシアで暮らしていた時にでも言って欲しかったな。
道理であの街から帰って来た時、周りの奴らに妙に見られた訳だ……
「…………」
「…………」
いや、分かっていたが会話がないな。
不満は無いし、予想通りだったのだが目の前でうんうん悩まれるの少々困る。さっきからこの娘は一体何なんだ?
人前で考え事をするなとは言わんが、そこまで露骨に思考に集中されると気になって仕方が無い。
ん?ちょっと待て。
「お前、花は持って来てないのか?」
「あ、私はお墓参りじゃなくて、決意表明に近いのでお供え物は……」
「そうか……でも、一応持ってけ、ほら」
紙袋に入れてある花束から何本か抜いて、アリサに手渡す。
「いえ、私は……」
「いいから、親に供えないなら他の誰かにでも供えてやってくれ。その位構わないだろ?」
「……分かりました」
渋々ながらアリサは花を受け取りると、俺から視線を外して静かに目を閉じた。恐らく、両親じゃない他の誰かを思い浮かべているんだろう。
こう、俺の前にあの時の被害者がいるというのは何とも言えない感じだ。
生きててくれてありがとうと感謝するべきか、君しか生き残らせれずすまないと謝るべきか……いや、両方だな。
「それにしてもマキナ少尉はおじさんみたいな事を言いますね?」
……なんだって?
おじさんみたいな?
……ああ、ここでもか。
「おじさんみたいねぇ……なぁ、お前は幾つに見える?」
「えっ……私より少し年上だから……18歳?」
ああ……うん、もうそれでいいや。
身長か、やはり身長が問題なのか!!
せめて、20と言ってくれれば救いもあっただろうに。
いい加減実年齢の遥か下扱いされるのは慣れたが、流石に18扱いはキツい。
実年齢の半分以下は想定外だ。
大体、この世界はどいつもこいつも身長が高すぎるんだよ!!
「本当はいくつなんですか?」
「ん、いや、18でいいよ。うん、色々とどうでも良くなったから」
「ごめんなさい、まさか年下だなんて……」
この娘は喧嘩でも売ってんのか?
その後、俺の年齢をしつこく聞くアリサを無視して墓地についた俺は、遺体もなく個人の名前すら彫られず家族単位でしか彫られていない墓標に手を合わせる。
家名を彫ることしか出来ないほどにあの時の死者は多かったってことなんだが、その責任の一端は俺にあるんだろう。
それは詫びてどうにかなるものでもないというのは分かっている、がそれでもここで手を合わせる位は許して欲しい。
あなた達を助けられなかった分、今度こそ俺の手の届く範囲の全てを守ろう。それが俺にできるであろう償いで、あなた達に誓うべき事なのだろう。
「私が戦えていたら……こんな事にはならなかったのに……」
そんな静かなアリサの呟きが俺の耳に響いた。
それに対して俺は何も言えない、アリサが仮に今のような力を持ってあの場にいたとしても何も変わらなかった、と言えるのは全てを助けられた奴だけだ。
この少女の呟きは俺の背負うべき言葉だろうし、こんな言葉を言わせずに済むようにするのが俺の仕事だったんだ。
だからこそ、俺は立ち止まっちゃならない。
その為にもイザナミを止める。
きっと、あいつを本当に止められるのは俺だけだろう。それにあいつと俺の問題なんだ、他のやつに譲るつもりもない。
それに機械仕掛けの天使(デウス・エクス・マキナ)を名乗っているんだ、絵に描いたようなハッピーエンドにするのは俺の役目だろう?
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