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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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26 閉鎖~She'd forgotten how to make friends.

 
前書き
前回の続き。まだプロローグです。ゲームは次回から本格的にスタートします。 

 
- The start day / morning -


皆に御飯を配り終え、宿舎から家に向かう途中にゴゴゴと地響きと共に何かが崩れる音がした。音が聞こえたのはこの村の唯一の出入口であるトンネルの方角だったよね…?僕は走って様子を見に行った。

………………………………………

「わーお…」

それしか言葉が出なかった。

トンネルは崩れ、土砂や岩で塞がっている。これじゃあ村の外に出ることが出来ない。

「おーい!どうし……なんじゃこりゃ!!」

もう御飯を食べ終ったのか鉱山掘りに向かう途中のワールさんがやって来た。

「ワールさん!皆に伝えなきゃ!」
「そ、そうだな!それじゃ…またここでで集合しよう!」

………………………………………
……………………………………
…………………………………

「マジかよ」
「え…ウソ」
「お、終わりじゃ…!」
「ありゃりゃ」
「むぅ……」

崩落した出入口を見た皆は驚き悲観した。この村から出られなくなってしまったのだ。無理もない。……若干名除いて。

「あーめんど。パチュリーにしばらく会えなくなっちゃったじゃないか」
「はぁ。一応道具は持ってきたし、人形はここで作ろうかしら?」

と、呑気な様子だった。

「皆落ち着くんだ。ここには鉱山堀りがいるじゃないか。それに食材を売りにくる人や鉱石を買い求めにくる人がいずれこの村が危機にあることに気づくだろう。少し時間は掛かるかも知れないが、この状況は必ず解決される。安心するんだ」

驚いていないのはソンチョさんも同じだが明希さん達と違って冷静に皆を安心させる。ソンチョさんスゲェ!マジRESPECTっす!

「ソンチョさん……!」
「そうだ!ソンチョさんの言う通りだ!」
「野郎共!今こそ鉱山掘り魂を見せつける時だ!!!」
「「「「オォォオウ!!!!!」」」」

お父さんが掛け声を掛けると、鉱山掘りの漢(おとこ)達が一斉に出入口を塞いでいる土や岩をツルハシやスコップで一心不乱に掘り始めた。

「気合いが足らんぞぉぉぉおオ!!もっと掘らんかぁぁぁア!!!!!!!」
「「「「「ういぃぃいイ!!!!!」」」」

漢達の姿はまさに血湧き肉踊るものでだった。
鼻息を荒くさせ、歯を食い縛り、目玉をひん剥き、額には汗と血管を浮かべて獣のように掘り進めている。

「オラオラオラオラ!!!!」
「無断無断無断無断!!!!」

狂気乱舞。狂喜乱舞ではなく狂気乱舞。そう呼ぶにふさわしい動きだ。

「さて、私達は何時も通りの生活をしよう。出入口が塞がったからといってここでボーッとするわけにもいかんだろ?」

ソンチョさんの意見も最もだ。マジRES(ry

「そうですねソンチョさん。私達は何時も通り、男共の帰りに備えないとね」
「それじゃ私達は早いけど昼食の支度をするとしますか」

お母さんとトウキお姉さんは昼食の支度をしに行った。僕もトウキお姉さんの手伝いをしーよおっと♪














- The start day / afternoon -

「あーあ、これじゃあ三日は帰れないかな…」

パチュリーのお使いでこの村に来たは良いが出入口が塞がれてしまった。ただの人間の前で飛ぶわけにはいかないから、仕方なく足止めを食らっている。

「ん…!この紅茶美味しいわね」

アリスは俺が入れた紅茶を一口飲み、美味しいと言ってくれた。
よかった。いつもは小悪魔に入れてもらっているから、自分で紅茶を入れるのは自信なかったんだよね。

「ありがとう。でも小悪魔や美鈴の入れる紅茶の方が美味しいよ。…そうだ。今度紅魔館に遊びに来なよ」
「いいの?じゃあ今度行くことにするわ」

この村の出入口が塞がってからそれなりに時間が過ぎて、昼食を取った後にアリスを茶会に誘ってみた。最近、本当によく喉が渇くから持ってきておいてよかったよ。

何故誘ったのかと言うと、暇だからお喋りでもしようかという事もあるがちょっと気になる事があったからだ。

アリスはこの意図に気付いたのか快く参加してくれた。
それで俺が寝泊まりしている方の宿舎でアリスと紅茶を飲みながら喋っているわけだ。

「……ねぇ。気づいてる?」
「……ええ。でも誰が…?」
「人狼がいるのはわかるんだけど、誰がそうなのかはわからないんだよねぇ…」

この村に来てから感じる妖力。紅魔館でよく人狼を倒している経験から、この村を包む妖気は人狼によるものだとわかっている。

でも妖術か結界かはわからないが、そのせいで人狼本人を特定することが出来ないのだ。そのお陰かわからないけど人狼側も俺達が魔法使いだということに気付いていない。

「人狼が動くとしたら夜。俺は奇襲されて後手に回ってもなんとか出来るけど、アリスはどう?」
「私も大丈夫よ。こう見えても結構強いのよ?」

心配はいらないみたいだ。それは人形の上海と蓬莱を操るときの高度な魔法技術からでも裏付け出来る。魔法の実力は相当高いだろう。

「そうみたいだね」
「ねぇ、それで明希はここの鉱石を何に使うの?」

人狼の話は終ったようで、アリスは自分の知的好奇心を満たすことにしたようだ。

「俺が使うんじゃなくてパチュリーが使うんだ。賢者の石に」
「賢者の石ですって!?」

やっぱり驚くよねー。俺もパチュリーも始めはビックリしたもん。伝説の賢者の石の作り方が載ってるからさ。

「紅魔館にはヴワル魔法図書館って言う図書館があってそこには色々な本が有るんだよ」
「ますます紅魔館にお邪魔したくなったわ。でも何のために賢者の石を?」
「実は俺、吸血鬼でもあるんだ。吸血鬼になった経緯はまた別の機会に話すとして……」

俺はアリスに俺が永遠に生きる存在になったことで、パチュリーも俺と永遠に一緒にいたいという願いを叶えるために賢者の石が必要になったことを話した。

「そういうことだったのね」
「アリスはやっぱり人形のため?」
「ええ、人形の強度を上げてみようと思ったの」
「よっぽど人形が好きなんだ」
「……人形は何時も側にいるし、寂しさが紛れるから…」

アリスは少し悲しげにうつ向いた。
……アリスにも色々あったんだな。でも、今までがどうあれ俺達がいる。出会ったばかりだけど寂しいなんて言わせない。

「そんなことはない!アリスには俺とパチュリーがいるじゃないか!もう友達だろ!?」
「…………!!そうね……。あ、ありがとう……」

俺の言葉に一瞬驚いて目を丸くした後、照れたのかアリスは顔を真っ赤にして両手でカップを持って顔を隠すようにし、上目遣いでチビチビと紅茶を飲みはじめた。
アリスが落ち着くのを待つ間、俺も紅茶を一口、二口と口に含んでいった。

………………………………………
……………………………………
…………………………………

互いのカップの紅茶が空になる頃にようやくアリスが落ち着いた。

「ねぇ、アリス。マジックの練習に付き合ってくれない?」
「マジック?いいけどなんでまた?」
「この村の人にお礼になにか出来ないかと思ってね。魔法を使うわけにもいかないから、タネも仕掛けもあるマジックにしようと思ったんだ」

魔法使いには掟がある。昔、魔女狩りから逃れるために作ったのが始まりで、魔法を知らない人間の前で疑われるような魔法を使ってはいけないと言うものがある。

例えば火や水を出す魔法を人間の前で使うのは禁止だが、俺が中学の時に使った身体強化の魔法みたいに一見、魔法だと疑われづらいものは使ってもいい。勿論、使いすぎはダメだが。用はバレなきゃいいのだ。

海の時と違って、今回の家に帰れない問題を解決するにはこの掟を破るような魔法を使わないといけない。だから仕方なく足止めを食らっている。

マジックにする理由はわざわざ掟を破らないでいいところと、人狼に自分達が魔法使いだということがバレにくいところにある。後、マロウの手帳(19 卒業を参照)に書いてあるマジックを試してみたいのが大きい。

「もし、魔法を使ったせいで父さんに捕まったら洒落にならないし」
「あら、明希のお父さんは魔法警察にいるのかしら?」
「いや、民間企業。でも警察の手伝いもしてるんだ」
「へえ、そうなの」

俺は魔法を使ってアリスが二人入るぐらい大きな縦長の箱と、自分の武器の暗剣殺を取り出した。今はアリスしかいないから魔法を使っても問題ない。

「アリス、この箱に入って」

箱の扉をあけてアリスをその中に入れるて扉を閉じた。

「で?私は何をすればいいの?」

箱の中からアリスは言った。
俺は暗剣殺を箱に向けて構えて言った。

「今からこの剣を刺すから脱出して」
「………え?」
「大丈夫。きっと上手くいくから」
「ま、待ちなさい!果てしなく不安しか感じないんだけど!?」









この後のアリスがお手伝いをした明希のマジックは無事に成功した。アリスが頑張ったのではなく、あくまでもマロウの手帳に記されたタネと仕掛けがよかったからだということを、ここに明記しておく。 
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