久遠の神話

「両立します」
「そうなんですか」
「彼の心も一つではないのですよ」
「戦闘狂であり、ですか」
「綺麗好きでもあります」
　そうなるというのだ、加藤は。
「あの方も」
「そうなんですね」
「そうです、人は一面的なものではありません」
「これしかないっていうことはないんですね」
「多面的です」
　それが人間だというのだ。
「例えば悪辣なヤクザ者が家庭では優しい父親ということもあります」
「ヤクザ屋さんが、ですか」
「はい、そうしたこともあります」
「ううん、そうなんですか」
「ですから。戦闘狂であってもです」
「綺麗好きでもですか」
「人間として有り得るのです」　
　その加藤の様にというのだ。
「それもまた」
「そうなんですか」
「何度も申し上げますが人は一万的なものではありません」
　またこう言ったマガバーンだった。
「多面的なのです」
「ううん、そうしたものですね」
「闇の剣士は戦うことは好きですが」
　それでもだとも語るマガバーンだった。
「彼は戦いは好きでも相手の命を奪うことには興味がありませんね」
「そういえばそうですね」
　このことは上城も知っている、だから警察も彼をストリートファイト等による傷害罪のことは疑惑の目を向けていても殺人罪についてはないのだ。
「あの人は」
「殺人には興味がありませんね」
「相手の命にはですね」
「猛獣と闘ったこともあるそうですが」
　相手は人間だけに限らないのが加藤だ、強い相手彼にとって楽しめる相手ならば猛獣とも闘うのが彼なのだ。
　だが、だ。その猛獣に対してもだというのだ。
「その猛獣の命もです」
「奪わなかったんですか」
「闘い勝てたならいいと」
　それで、というのだ。
「満足だからということで」
「本当に戦いがお好きなだけなんですね」
「純粋です、彼は」
「純粋ですか」
「はい、純粋です」
　そう言えるというのだ、彼は。
「まさに」
「ただ戦いたいだけで」
「その他に興味はないのです」
「そうなんですね」
「そうした人もいます、稀ですが」
　それでもだ、加藤の様な者もいるというのだ。
「世界には様々な人がいます」
「加藤さんにしてもですね」
「そうです、ですから余計にです」
「ああした人はですか」
「戦いを止めることは難しいです、いえ」
「いえ？」
「彼の戦闘狂は収まりません」
　ここでだ、マガバーンは彼のその飽くなき闘争心を考えてこう言った。
「これからも戦い続けるでしょう」
「じゃあ僕が止めることは」
「出来ます」
「出来ますか」
「彼は剣士としての戦いだけでなくです」
「他の戦いもされていましたね」
　上城もこのことは知っている、加藤は確かに戦闘狂だ。剣士の戦い以外にもストリートファイトや地下世界での非合法バトルにも参加しているのだ。
「そういえば」
「はい、剣士の戦いから降りても」
「その他の戦いをですか」
「楽しみます。そうした人ですから」
「だからですか」
「剣士の戦いは降りてもらうことが出来ます」
　それは可能だというのだ。