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久遠の神話

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第九十話 家族の絆その十一

「贈りものとして喜ばれます」
「やっぱり寒いからな」
「手も温めないとな」
「霜焼けとかになったらな」
「後が大変だからな」
「ロシアでは霜焼けよりもです」
 それどころではなく、というのだ。
「凍傷があります」
「霜焼けどころじゃなくてか」
「凍傷かよ」
「それはまたきついな」
「寒いだけあるな」
「それで本当に下手をすれば」
 その凍傷でだというのだ。
「指がなくなります」
「リアルでだよな」
「指、なくなるんだな」
「それは困るなんてものじゃないな」
「怖いな」
「戦争でもです」
 ロシアも多くの戦争を経てきている、その多くの戦争でもなのだ。
「敵国の兵士が銃を持てなくなったのです」
「指がなかったら銃も持てないからな」
「ナイフだってそうだしな」
「引き金も引けなくなって」
「戦えなくなるな」
「指がなくては秘孔も突けないですね」
 コズイレフは微笑んでこんなジョークも飛ばした。
「そうなりますね」
「おいおい、その漫画の話するか」
「ここでそれか」
「面白かったので」 
 某世紀末救世主の漫画だ、コズイレフは最近日本の漫画も読んでそちらからも日本の文化や日本語を勉強しているのだ。
「勉強しています」
「それでここでもか」
「そのネタ出すか」
「駄目でしょうか」
「いや、駄目じゃないけれど」
「コズイレフもわかってきたな」
「日本のジョークってのが」
 それがわかってきたとだ、彼等はコズイレフに笑顔で言うのだった。
「それがな」
「面白くてさ」
「そうですか」
「ああ、まあとにかく靴下に手袋か」
「それがロシアで喜ばれる贈りものなんだな」
「特に厚いものがです」
 靴下といっても様々だ、薄いものもあれば厚いものもある。ロシアで好まれる靴下は一体どういったものかというのだ。
「厚い靴下や手袋が喜んでもらいます、ですから」
「向こうで彼女が出来たらか」
「贈るんだな」
「いえ、今です」
 将来の話ではなくだ、それは今だというのだ。
「今贈ります」
「えっ、今彼女いないんだよな」
「そうだよな」
 友人達は焼酎の入ったコップを手に持ったまま驚きの声をあげた。今は飲む手を少し止めてこう言ったのだ。
「それじゃあ誰になんだ?」
「誰に贈るんだよ」
「家族です」
 コズイレフは優しい笑みで答えた。 
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