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久遠の神話

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第九十話 家族の絆その十

「誰か」
「だよな、彼女欲しいよな」
「俺もな」
「いるといないのとで大違いだからな」
「それだけでな」
「そうみたいですね、僕はどうも」
 コズイレフは苦笑いのままだ寂しい笑顔で話していく。
「女性の方とのお話は」
「いやいや、合コンとかもな」
「ちゃんと出てな」
 友人達はこう彼に言う。
「それで彼女は作らないと」
「努力してな」
「努力ですか」
「そうだよ、彼女を作るのもな」
「それなんだよ」
 彼等には彼女はいないがそれでも言うのだった。
「努力なんだよ」
「それと勉強な」
「どうも日本人はそうしたことにも勉強をするのですね」 
 それがどうにも意外といった顔でだ、コズイレフは友人達に今度は驚いた顔になりそのうえで応えた。
「それはまた」
「まあそういうことの研究とかもな」
「本とかになってるしサイトもあるな」
 彼女を作る為の本やサイトもあるというのだ、日本には。
「それで勉強してる奴は実際にいるな」
「出来る出来ないはともかくとしてな」
「ロシアではどうもそうしたことまでの勉強は」
 どうもだというのだ。
「ないですね」
「というかロシア人の恋愛ってどうなんだ?」
「やっぱり普通にあるよな」
「あります、それで贈りものは」
 ウォッカを飲みつつプレゼントの話もする。
「靴下がいいとされています」
「えっ、靴下!?」
「靴下がかよ」
「そうです、ロシアは寒いので」
 だからだというのだ。
「靴下の贈りものが喜ばれるのです」
「へえ、そうなのか」
「靴下がいいのか」
「そうなんだな」
「それは意外だな」
 友人達は日本人としてこう返す。
「俺達だと色々だけれどな」
「寒いから靴下か」
「それがいいんだな」
「ロシアだと」
「ロシアはとにかく寒いです」
 これに尽きるというのだ、世界的に知られていることであるが。
「ですから贈りものも暖かいものが好まれます。それで家族同士でも」
「靴下が贈りものとして喜ばれるんだな」
「あれが」
「そうです、ですから僕も」
 ここでだ、コズイレフは友人達に優しい笑顔になってこう言った。
「靴下を家族に贈ります」
「靴下なあ」
「それか」
 友人達はここでそれぞれの靴下を見た、見れば黒だの灰色だの色は様々だが皆それは履いている。それで見たのだ。
「履いているとあったかいからな」
「足って冷えるからな」
「そうそう、足から冷えるんだよ」
「ここからな」
「それと手ですね」
 コズイレフは温厚な笑顔のまま述べる。
「手も冷えますと」
「手袋だな」
「そっちはな」
「ロシアでは手袋もです」
 これもだというのだ。 
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