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甘い生活

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第二章

 シャルルは首を傾げさせてそのうえでこうペニーに言った。
「ドラクロワの父親だったよな」
「あの画家のな」
 革命の時の絵で有名だ、他にはギリシアにおけるトルコの圧政実際はそうでもなかったのだがそれを告発する絵でも有名だ。
「ドラクロワ夫人に手を出したのか」
「そうみたいだな」
 こちらでも有名だとだ、シャルルはペニーに言うのだった。
「他にも色々噂がある人だったな」
「ドラクロワ夫人だけじゃなかったらしいからな、手を出した人妻は」
「じゃあ人妻への恋か」
「考えてみればとんでもない奴だな」
 だから上司にも部下にも友人にも同僚にも持ちたくないのだ、何しろ自分の妻を奪い尚且つ冤罪を擦り付けられてギロチン台に送る様な者だからだ。
「ナポエオンさえ、だったからな」
「フーシェと組んでいたにしろな」
 彼もまた危険であるというのだ、ただフーシェは賄賂を取らず人妻にも手を出さなかった。とはいっても彼もまたタレーランと同じく怪物的な謀略家でやはり上司にも部下にも持つには危険極まる人物だったが。
「そんな人間だったからな」
「恋が甘いって言ってもな」
「本当かねってなるよな」
「どんな恋かな」
「道ならぬ恋じゃないのか?」
 こう話すのだった、そのタレーランが愛したコーヒーを飲みながら。
 シャルルはペニーとそんな話をしてからだった、自宅に戻った。 
 彼の家はマンションだ、パリの中にあるパリの中ではごく普通のマンションである。
 そのマンションに入ると黒い髪に瞳、そしてすらっとした顔立ちとスタイルの女がいた、その彼女がこう彼に言って来た。
「おかえりなさい、晩御飯はね」
「只今、御飯は?」
「ポトフよ」
 それだというのだ、まずは。
「あとサラダも作ったし」
「他には?」
「鰯を煮たから、オリーブでね」
「イタリア風か?」
「プロヴァンスよ」
 そちらの感じだというのだ。
「そちらだからね」
「そうか、じゃあな」
「もう出来てるから食べるわよね」
「ああ、それじゃあ今からな」
 こう妻のマルゴに応えてからだ、シャルルは彼女にこんなことも言った。
「そうだ、晩御飯の後でな」
「何かあるの?」
 妻はテーブルの上に作った料理を置きながら夫に応える、夫はソファーの上にバッグを置いてからワインとフォークにナイフを出している。
「コーヒー飲むか?」
「コーヒーね」
「ああ、コーヒーな」
 それをだというのだ。
「そうしないか?」
「いいわよ、じゃあ食べたらね」
 淹れようとだ、マルゴは自分がと言おうとした。 
 だがそれより前にだ、シャルルの方から言った。
「いや、僕が淹れるよ」
「あなたが?」
「たまにはいいだろ、そうしてもな」
「ええ、別にいいけれど」
「何かそうしたい気分でね」
 ワインの栓を開けた、栓の先はワインレッドに染まっている。そしてその独特の香りで彼を魅了していた。
 だがその香りよりも今はだった。
「コーヒーをね」
「飲みたいのね」
「うん、じゃあね」
 こう話してそしてだった。
 二人はまずは夕食を食べてコーヒーを飲んだ、すると。 
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