問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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求道丸
次の日の朝、一輝とヤシロはスレイブに起こされ、二人して怒られた。
まあ、怒られた時間はヤシロのほうがかなり長いのだが。
そんな感じで朝を迎えた一輝とヤシロは、水着を選びに来ていた。
白夜叉の暴走により、ヒッポカンプを借りるコミュニティの女性は水着の着用が義務付けられたのだ。
で、一輝はこの類に疎いのだが、ヤシロに見て欲しいとせがまれ、ついてきたのだ。
「どうかな、お兄さん?」
「へえ・・・可愛いな。似合ってる。」
一輝は、考えて言わず、無意識に口から言葉が漏れた。
その様子に満足したのか、ヤシロはその、ワンピースタイプの水着に決めた。
「あ、二人ともいた!」
「もう選び終わりましたか?」
「うん、今終わったよ!」
なんだか、朝からずっとハイテンションなヤシロである。
言い忘れていたが、スレイブはいまリリのバイトの手伝いに行っている。
黒ウサギが、リリが一人で働くことに猛反対したため、手が空いていたスレイブが付いていくことになったのだ。
「じゃあ、通訳お願いしてもいいですか?」
「OK。三匹人のよさそうなのを選ぼうと思うと、結構大変そうだけど、」
「それだけど、ルールが変わったから一匹でいいわ。」
音央はそういうと、“契約書類”を一輝に渡す。
『ギフトゲーム名“ヒッポカンプの騎手”
・参加者資格
一、水上を駆けることが出来る幻獣と騎手(飛行は不可)。
二、騎手、騎馬を川辺からサポートする者を三人まで選出可。
三、本部で海馬を貸し入れる場合、コミュニティの女性は水着必着。
・禁止事項
一、騎馬へ危害を加える行為は全て禁止。
二、水中に落ちたものは落馬扱いで失格とする。
・勝利条件
一、“アンダーウッド”から激流を遡り、海樹の果実を収穫。
二、最速で駆け抜けたものが勝利。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、各コミュニティはギフトゲームに参加します。
“龍角を持つ鷲獅子”連盟 印』
「なるほど、チーム戦に変わったんだ。」
「はい、ですから、一匹で構いません。」
「了解。あとは・・・四人目は誰か心当たりあるの?」
“契約書類”には三名までサポートが出れるとある。
これを三名出さない手はないだろう。
「いえ、いません。」
「ノーネームからもう一チーム出るから、頼む相手がいないし・・・」
「スレイブちゃんには断られましたし・・・」
が、いかんせん人数不足だった。
「だったら・・・一人男が混ざってもいいか?」
「はい、構いませんけど・・・」
「私も別にいいけど、あてはあるの?」
「まあ、ある。ヤシロちゃんは?」
「いいよ!面白い人?」
「かなり面白いと思う。」
そう言うと、一輝は倉庫の一つ、畑になっているところを開け、そこの住人を呼ぶ。
「求道ー!求道丸ー!出てこーい!」
「分かりましたー!」
返事が聞こえると、一輝は倉庫の入り口からどき、三人にも放れるように言う。
数秒待つと、倉庫の入り口から人が一人跳んできた。
「どうも、一昨日ぶりです、兄貴!」
「おはよう、求道丸。一つ頼みがあるんだが、いいか?」
「もちろんです!」
一輝は、相変わらずの楽さに、解決したことを確信する。
「えっと・・・その人はだれ?」
話に加われずにいた三人のうち、音央が一輝に尋ねる。
「ん?ああそうか。お前たちとは初対面だったな。コイツは、倉庫の中で畑をやってくれてる、」
「木の葉天狗の、求道丸です!姐さん方のことは、兄貴より聞いています!」
求道丸は音がなる勢いで頭を下げる。
格好が、上半身裸なのでちょっとシュールだ。
「えっと・・・六実音央です。」
「同じく、六実鳴央です。」
「ヤシロですっ。よろしく、求道丸お兄さん!」
「はい、よろしくお願いします!音央の姐さん!鳴央の姐さん!ヤシロの姐さん!」
四人は、挨拶を終える。
「で、今回頼みたいことはこういう事情なんだけど・・・」
一輝は求道丸にことの流れを説明した。
求道丸は珍しく、話の内容を全て理解し、
「分かりました!その馬肉を殴り飛ばせばいいんですね!」
とても張り切っていた。コイツは妖術を使えないが、体術に長けている。
その一環として、強敵探しのたびをしていたのだとか。
「そうだ。じゃあ、四人は頑張ってくれ。」
「「「「はい!」」」」
こうして、一輝チームの中から出場選手が決定した。
ちなみに、海馬は一輝がさっさと選び、一分もかからなかったとか。
「さて、まだ畑の作業が終わってないので、戻ってもいいですか?」
「ああ。じゃ、明日はよろしくな。」
「もちろんです!」
求道丸は倉庫の中に戻っていく。
「あ、そうだ。お姉さん達。」
「なに?」
「なんでしょう?」
一輝が部屋に戻ろうとすると、ヤシロが音央と鳴央を呼ぶ。
「私、一生お兄さんといるっていう契約を、昨日交わしたから。」
その言葉で二人が固まったので、いやな予感がした一輝はその場を脱兎のごとく去った。
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