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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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一対三

あの後、一輝は会場中を使っての鬼ごっこの末、音央の茨に捕まり、二人からロリコン、と責め立てられたのだが、しっかりと説明をし、「何考えてんだ。」と言うと、二人とも顔を真っ赤にして謝った。

「ごめん・・・勘違いしてた。」
「つい、冷静さを失ってしまい・・・」
「いや、もういいから。ってか、ヤシロちゃんも何であんな言い方?」
「そっちのほうが面白そうだったからだよ!」

ヤシロの気まぐれにより、大変なことがあった一日は、この後は何もなく終わった。



         =================



[スレイブSIDE]


「で、今日はなにをする?」
「マスターのしたいことで。」

私は、マスターの問いかけに対してそう返した。
マスターは困ったような顔をしているが、確かめたいことがあるからこれでいい。

「いや、これは俺とスレイブとの親睦を深める意味も有るから、出来ればスレイブが・・・」
「私はあなたの剣。貴方の喜びは私の喜びです。」
「えっと、そうじゃなくて・・・」

これはこれで事実だから、仕方がない。強いて言うならあの露店は面白そうだが、今はいい。

「あそこの店か。えっと・・・剣を使っての三本勝負?」

なぜ分かったのでしょう?私があの露店に興味があると。

「いや、顔に分かりやすく出てるから。」
「そんなに出てましたか?」
「うん。」

これは恥ずかしいです。それに、目的が果たせそうにありません。
これからは出さないように気をつけなければ。

「で、やってく?」
「そうですね・・・そうしましょう。」
「じゃあ、はい。木刀。」

マスターは私に木刀を渡してきました。
つい受け取ってしまいましたが・・・これをどうしろと?

「剣持参って書いてあったし、必要でしょ?」
「?別に、私が剣なのですが?」
「いや、それだとスレイブが出れないじゃん。」

・・・どうにも、推測は当たっていそうですね。
まだ確証があるわけではないので、今は気にしません。

「では、マスターはどうするのですか?」
「見たり、写真を撮ったり。」
「マスターを待たせてまで参加しようとは・・・」
「いいから行ってらっしゃい。自分で体を動かすのも好きだろ?」

なぜそのことを知っているのでしょうか?たまにマスターは鋭いです。
でも、それなら私は刃物を使うことに違和感があることに気づいてくれても、

「それに、それなら一応刃物じゃないし、違和感も少ないんじゃない?」

既に気づかれていました。その上そこまで考えてくださるとは・・・ますます怪しいです。

「すいません。では、行ってきます。」
「おう、行ってらっしゃい。」

私はマスターに一言言ってから、会場に向かう。

「挑戦したいんだが?」
「あ、はい。ではこちらへどうぞ。」

スタッフは案内をしてくれ、その間に説明もされた。
どうやら向こうの選手三人と戦い、三人ともに勝てれば賞品をもらえるようだ。

「私はマスターの剣。マスターに恥をかかせないためにも、勝たなくては。」
「何か言いました?」
「いや、ただの独り言だ。」

私は適当にごまかした。
どうせそこまで入り込んでくることは無いのだ。

「そうですか。では、こちらに所属コミュニティとお名前を記入してください。」

やはりそうだ。
私は、ノーネーム、ダインスレイブと記入し、スタッフに渡す。

「は、では、難易度を決めてください。」
「どんなのがあるんだ?」
「一対一を三回、一対三を一回です。」
「一対三を一回。」

マスターを待たせるわけにはいかない。速く、そして確実に勝たなくては。

「分かりました。では、そちらの会場へ。すぐに始まりますので。」
「分かった。」

私は、スタッフの指す、広い場所へと向かう。
人の声が聞こえてくるが、観客でもいるのだろうか?

「では、挑戦者の入場です!アンダーウッドを救った英雄、“ノーネーム”より、ダインスレイブさんです!」

どうやら、ここをやっているコミュニティはちゃんと理解しているようだ。
旗印によると・・・一本角だな。

だが・・・観客の中にはノーネームと笑っているものも多いな。
まあ、私を笑う分にはきにしなくていい・・・

「がんばれー、スレイブ!」

マスターが私を応援することで、マスターまでノーネームだと笑われ始めた。
殺しても問題ないだろうか?

「スレイブー!抑えろー!」

止められてしまったのでは、仕方ないですね。
圧倒してしまうことで、我慢しましょう。

「では、一体三で、始めたいと思います!」

相手はあの三人か。確かに実力者だが・・・マスターには遠く及ばないな。
私はマスターの太刀筋をまねることしか出来ないが、それでいけるだろう。

「始め!」
「は!!」

まず、一番弱そうなのを。

《鬼突、十連。》

首を、連続で十回つき、倒す。
のどを押さえてうなっているのを確認し、そのまま、残りの二人から距離を置くと、向き直る。
あの二人はすぐ横で仲間が倒されても何のリアクションもなかった。
隙を突いて、というのは期待しないほうがいい。

「さて、あまり時間をかけたくないのですが・・・」
「それは無理だろうな。」

その瞬間、後ろから声が聞こえてきたので、

《柄頭、鬼面。》

木刀なので、刃の部分を持ってそのまま相手の額にぶつける。
相手の武器に合わせて攻撃をしなかった、こいつのミスだ。

「ガッ・・・」
「二人目。」

そして、振り向く勢いで頭を打ち、気絶させる。
残り、一人。

「あの猫耳、強すぎるだろ・・・」
「ほんとに、ノーネームなのか・・・?」

観客の中からそんな呟きが聞こえてくるが、せめてメイドであって欲しい。
メイドには慣れても、この耳と尻尾には一向に慣れない。恥ずかしい。

「君、何でノーネームにいるんだ?」

残りの一人からそんな質問がされる。
戦闘中に何をやっているんだ、とは思うが、そういえばマスターもこんなことをしていたな。
おかげで救われたのだから、否定してはダメだろう。

「マスターが、そこにいるからだ。」
「マスター?」
「ああ。我が剣の使い手、私を救ってくれた人だ。」
「そいつは、マスターとしてふさわしいのか?」
「ああ。でなければ、使い手として認めてなどいない!」

マスターへの侮辱に、私は切りかかった。
さすがに防がれたが、それでも続けた。

「それ以上の侮辱は、私が許さないぞ。」
「いや、その格好を見ると聞きたくなるんだけど?」

それを言われると少し困るが、それでも、

「あの人は、呪いにまみれた私を救ってくれた。消えるしかないと思っていた私に、別の道を示してくれた。この格好も、あの人の中ではちゃんとした理由がありそうだしな。」

まあ、ただの趣味の類という可能性も、否定は出来ないが。

「ふうん、それならいいけど。」
「もとより、心配してもらう必要などない!」

私は力づくで相手の剣をはじきとばし、がら空きになった胴に止めを加える。

《一角獣!》

半身にした体を捻り、一気に開放する。
相手は数メートル後ろにとばされ、気絶する。
これで全員戦闘不能だ。

「勝者、ノーネームダインスレイブ!」

結果として、相手に一切攻撃をさせず、勝利できた。
マスターのことを馬鹿にした連中も黙っているし、後はマスターと話しをすればそれでいい。

「では、賞品の数多の霊獣の角を使って作った剣を差し上げます!」

・・・剣に剣を渡して、一体どうしろというのだろう?

「ありがとうございます。では、これで。」

私は剣を受け取ると、すぐにマスターのもとに向かう。

「終わりました、マスター。」
「うん、お疲れ様。」

予想通り、野次馬どもは驚き、言葉を失った。

「これ、どうしましょう?」
「大して強そうにも見えないし・・・ってか、これもろそうに見えるんだけど。」
「そうですね・・・一般的な剣よりは丈夫で、切れ味もありますし、霊獣の力を振るうことも出来るようです。ですが、私や獅子王には遠く及びません。」
「だよな。コミュニティの武器庫にでも放り込むか。」

とりあえず、マスターの倉庫の中にしまうことになった。

「なあ君、うちのコミュニティに来ないか?」

その言葉に振り向くと、野次馬の一人がいた。
マスターを笑ったクズの一人だから、しっかりと覚えている。

「断る。私はマスターに仕えている。マスターのもとを離れるつもりはない。」
「だからって、君はノーネームに埋もれるべきではない。きちんとした待遇をするつもりだし・・・」

そういうと、このクズはマスターのほうを見る。

「コイツよりは、強いやつがいると思うよ?」

私の中で、何かが切れる音がしたが・・・

「一回落ち着け、スレイブ。こいつは、お前がいくら言っても聞く気はないよ。」

マスターに止められたので、落ち着くことにする。

「アンタは?」
「ノーネームの寺西一輝。コイツのマスターだよ。」
「だったら話が早い。そちらのお嬢様を、こちらに譲ってもらおうか。貴様には手に余るだろう?」

今すぐにでも斬りかかりたいが、マスターが手振りで抑えるよう示すので、マスターに任せることにする。

「確かに、俺にはもったいないくらいの子だけど、オマエに比べれば圧倒的にましだよ。」
「何だと?」
「どこのコミュニティか知らないが、オマエにはこの子を渡す気はないし、俺が劣ってるとも思わないし、何よりこんな可愛い子を渡すつもりはない。」

最後の一つは必要だったのだろうか?
そして、やはりこの人は、私のことを  として見ている。
今、確信した。

「そこまで言うのなら、示してもらおうか。」
「どっちが強いのかを?」
「ああ。さすがに、ノーネームにそこまで言われて黙っているわけにはいかないからな!」

クズがキレたが、マスターは何のリアクションもない。
むしろ、この程度かとがっかりしているようだ。

「いいよ。言い訳できないように、主力メンバー全員出したら?」
「後悔するなよ、小僧・・・!」
「じゃあ、すいませーん!場所借りてもいいですかー!?」

マスターは一本角の人に、場所の使用許可を取りにいく。

こうして、マスター対コミュニティ“剣閃烈火”の試合が執り行なわれることになった。

結果が目に見えてるが、それは気にしないほうがいいだろう。 
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