恋姫~如水伝~
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十七話
曹操軍が反董卓連合の集合場所に向かっている中、集まった諸侯の顔ぶれを調べた如水は一つの疑問を持った。
「名だたる者が集まっているが、袁術に従属しているこの孫策と言う者、確か、私の知識では、この時まだ孫堅は存命していたはず、華琳の話だと随分前に戦死しているとらしいから。劉備の時といい、私の知る世界とは大小の違いがある様だな。しかし黄巾といい反董卓連合といい大筋は同じ、極端に違うのは女性が主体と言う事とこの私の存在か」
そして、合流前の最後の休息で華琳は新たに加わった仲間、典韋を紹介した。
「典韋といいます、季衣とは幼馴染で仕事が見つかったって言う便りを貰って心配で来たんですけど、まさか曹操様の軍に加わっているとは知りませんでした。曹操様に誘われて私も一緒に皆さんと一緒に曹操様の下で働きます」
「典韋、貴方の真名は」
「流琉って言います」
「私の事は華琳と呼びなさい、以後、季衣と同じく親衛隊の将として働きなさい。秋蘭、この子の教育を任せるわ」
「了解しました、華琳様」
「ありがとうございます華琳さま、私頑張ります。秋蘭様、それに皆さん、私の事は流琉って呼んでください、よろしくお願いします」
そして曹操の軍は連合に合流した。
華琳は凪、真桜、沙和と季衣と流琉に部隊の留守を預け、桂花に物資の最終確認を任せ、春蘭と秋蘭、如水を連れて、袁紹の本陣に向かった。そこで見た諸侯の集まりを見て、袁家の威光を目の当たりにしたが、肝心の当人は華琳らの言う様にさほどの者ではなさそうだった。
余りにも傍若無人の性格で華琳や、春蘭と秋蘭でさえ何も言わないらしい。
「おーっほっほっほ!皆さん、我が袁家の為に集まって頂いてとても光栄ですわ。それでは最初の軍議を始めますが、皆さん、私以外は名も知らないでしょうから、そちらの方から名乗って言って。いただけますこと?ああ、びりっけつの華琳さんは、一番最後でけっこうですわよ。おーっほっほっほ!」
袁紹の言葉で、各諸侯が名と陪席させた者を紹介した。如水の調べた通り、各地から数多くの諸侯が集まり、袁家の威光はもはや漢王朝以上ではないのかとも思った。
「最後に、びりっけつの華琳さん、おねがいしますわ」
「…典軍校尉の曹操よ。こちらは夏候惇と夏候淵、…そして、黒田」
黒田の名を聞き他の諸侯がざわついた。
「あーら。その貧相なのが、天からの遣いとかいう輩ですの?どこの下男かと思いましたわ」
「黒田と申します、これほどの方々に知って頂き、身に余る光栄です」
「私に対しての礼儀を弁えているとは、貧相なわりに袁家の威光を知るようですわね」
如水が改めて名乗ると袁紹が納得した様だった。
そして、各位が名乗り、軍議に入った。
連合に集まった者は全員、董卓の事を知らない様だった。
如水は華琳に許可を取り発言した。
「あの、皆様、僭越ながら私から董卓の事の報告をさせて頂きます。董卓は元は涼州の者だとの事、どの様な伝手かわかりませんが、宮廷に取り入り権勢を意のままにしているとの事。そして、董卓の軍勢は現在二十万を超えています。ですが、その殆どが董卓の連れていた兵では無く、吸収した禁軍で出来ているようです。しかし、名のある者が率いており士気も高く、一概に雑軍とは言えないでしょう」
如水の言葉を聞き、董卓軍の数に華琳以外、集まった諸侯と陪席した者、更に袁紹までもが驚いていた
「そっそうですか、わかりました。つっ、次は…」
「みっ都までどうやって行くかじゃな」
動揺を隠せない袁紹と袁術だったが、威厳を保つ為か軍議を仕切りなおした。
そう言って、気を取り直した他の者らも軍議を再開し、行軍経路、隊列を決めていった。
先鋒は公孫賛、劉備の混成軍で、どうやら、二人は旧知の間柄らしい。
「おい、いくらなんでも少なすぎるだろう。桃香と合わせても三万も満たないぞ」
「あーら、そうなんですの。さすがに身分の卑しい者には荷が重かったかしら」
袁紹は、公孫賛の意見を一蹴し、二人の間に険悪な空気が流れた。一座はざわついたが、華琳の発言で場は収まった。
「私の方から黒田を派遣するわ、そうなれば六万以上になるわ。公孫賛構わない?」
「…ああ、それなら何とかなりそうだ。桃香も良いよな」
「うんっ、それだけいたら何とかなるかも」
その話を聞き袁紹も納得した。
「では、最後にこの連合を誰が纏めるかですけと、家柄、地位を考えれば、候補は絞られてしまいますが、とおも」
「麗羽しかいないわ、他の者もそれでいいでしょう」
「そ、そうですか…仕方ありませんわね。そこまでいうのであれば、この袁本初がお引き受けますわ! おーっほっほっほ!」
「これで、全ての議題は済んだわね、これで解散しましょう」
華琳の一言で軍議が終わり、一同は解散した。
自陣に戻る最中、如水は華琳に疑問に思った事を尋ねた。
「軍議の場で言っていた、天からの遣いとは何だ。一体」
「あれ、適当に流したのよ、まさか、皆が知っているとは思わなかったけど」
「その噂は知っているが、まさか自分自身の事だとは思わなかったな」
「そうなの、意外と抜けている事があるのね、それより先鋒への応援の事だけど」
「わかっている、劉備や公孫賛の事を調べて置けばいいのだろう」
「そうよ、公孫賛はともかく、劉備は配下の者の事も気になるからお願いね」
「ああ、わかった。しかし、これだけの諸侯を集めるとは、袁家の名声は漢王朝を越えるものなのだろうな」
「そうね、本人の人物はともかくとして、その名声は諸侯随一と言えるわ」
「とりあえず、私は公孫賛達と合流しよう。敵側の内情や、相手の将の能力や性格を調べたらそちらに送る」
「わかったわ。それと、先鋒に加わるのだから、他の所の兵を割いて、あなたの軍の数を増やすわ。気をつけて行って来なさい」
「ああ、曹操軍の名に恥じない戦いをしてこよう」
如水は自身の軍と春蘭、秋蘭からの加勢された軍、合計四万二千を連れ、公孫賛の陣に向かった。
公孫賛陣地
如水が向かうとすでに、劉備は来ており二人は軍議を始めていた様だった。
「公孫賛殿。我が主、曹操の命によって先鋒の加勢に参りました。黒田と申す者ですどうか御面会下さい」
如水がそういうと公孫賛、劉備が出て来た。
「良く来てくれた、曹操や黒田の好意に感謝する」
「お久しぶりです、黒田さん。ありがとうございます」
「いえ、私は主の指示で来ただけです、それより、軍議を始めていたみたいですが、私も参加させて頂けますか」
「もちろんだ、じゃあ、軍議を始めよう」
そう言って、如水を含め、公孫賛と劉備の軍議を始めた。
「まず、桃香の所に入っている情報だと、汜水関には華雄って言うのが配置されているらしい」
「数は、どれほどですか」
「よくはわからないが、重要な場所だ五、六万以上はいるだろう」
「そうですね、汜水関と虎牢関は重要な防衛拠点、そこを落とせば都は眼前です。用心し万全を期しましょう」
「はい、力を合わせて圧政に苦しむ人を救いましょう」
「まずは、先頭ですが、戦場視察を兼ねて騎馬兵の多い公孫賛殿に任せたいのですが。よろしいでしょうか」
「ああ、私の騎馬隊ならその役はうってつけだ、引き受けた」
「では、お願いします。劉備さん、私達は後ろから進みましょう」
「私は、白蓮ちゃんと一緒に行こうと思います」
その発言に二人は驚いた
「それは、どうでしょうか、失礼ながら劉備殿の軍は騎馬兵が少ない様です、騎兵中心の公孫賛殿と共に行軍すれば、かえって速度が落ちてしまいます。それに、私も余り騎兵を連れてきていません。私達は公孫賛殿が先陣で騎兵偵察を行ってくださる間、陣を整えた方が良いと思いますが」
「でも…、白蓮ちゃん一人じゃ心配ですし」
「桃香、黒田の言う方法で行こう。何も私が単独で攻め落とすわけじゃ無いんだ。お前は後からついて来てくれ」
その言葉に納得した劉備を見た公孫賛は騎兵を集め先陣に走っていった。如水と共に残った劉備は先陣から少し遅れて陣を整え行軍を開始した。
公孫賛が陣を去り、騎馬隊の進軍を見た如水は感嘆した。
「さすが、名高い白馬義従ですね、速さだけでなく、その行軍に乱れが無い」
「そうでしょ、白蓮ちゃんって、すごいでしょ」
「ええ、私達も遅れずに行くとしましょう」
そして、反董卓連合は進軍を開始した。
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