恋姫~如水伝~
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十六話
黄巾の乱が終わり、随分と時が経った。
曹操は拡大した領土を安定させ、善政を敷き、人心を安堵させ、城内の府庫を満たした。更に、自身の軍の人数、質を共に充実させ、富国強兵を成功させた。
そして、それらの政策や兵の充実を効率よく運用する為の制度を確立し。いずれ、他の土地でも施行できる様にした。
一方で朝廷は混沌としていた。大将軍何進と宦官らの対立は激化し、遂に二つの勢力は外部の有力者に力を借り、上洛させた。何進は袁紹と袁術を、宦官らは涼州の董卓を呼び、二つの勢力争いは過激化した、そして宦官派の何進の暗殺により、政争に敗れた袁紹と袁術はそれぞれ領地に引き上げた。
如水がその情報を掴んだ直後、桂花が部屋の前に来て、華琳から密議をしたいとの呼び出しが掛かった。
華琳 私室
如水が入ると、部屋には華琳と桂花の二人しか居なかった。
「来たわね。これからの事で話をしたいのだけど、貴方と何処まで知っているの」
「朝廷内での内部抗争なら、宦官の何進の暗殺と、その政争に負けた袁紹と袁術の都落ちしか知らない」
「そこまで知っているなら話は早いわ、これから連中がどう動くか、それによってこちら対応を話し合いたいの」
「構わないが、私は董卓や、袁紹と袁術の人柄を知らない。相手になるかな」
「そのあたりは心配しないで、董卓はともかく、袁紹と袁術の二人なら私と桂花が教えるわ」
「はい、それに私は以前、袁紹の下で働いておりました、その事お忘れですか」
如水の懸念に二人が答えた
「ああ、それなら心配ないだろう、それで、どういった事を話し合うんだ」
「まず、貴方が知る董卓の事を話して」
「了解した、董卓の今の権勢だが、大陸中を圧倒している。都に呼び込んだ宦官らをも手の内にし、宮廷を牛耳った、そして、その幕下には賈駆や陳宮と言った智謀に優れた者。また、呂布、張遼、華雄といった武勇に秀でた将がいる。しかも、禁軍を手中に収めた董卓の兵は十五、二十万とも言う、まさに大陸一の勢力だな」
「そうね、でもそれに反発する連中もいるわ。まず、袁紹の動きだけど、間違いなく董卓を討つの為に兵を挙げるわ。でも、いまの董卓の勢力は袁紹の勢力は袁術と二人を合わせても格段に差があるわ、おそらく連合を立ち上げるでしょう」
「私もそうおもいます、董卓の権勢を黙って見ているほど袁紹は器も大きくありませんし何より、なにより人間が出来ていません、かならず復讐を図ります」
「ところで、袁紹と袁術の二人の性格を教えて欲しいのだが」
「袁紹と袁術の性格はまず、共通点として虚栄心が強く、名門意識が高いわ、そのくせ対して能が無い事も似ているわね」
「それと、これは袁紹の下で働いて思った事ですが、身内や古くから仕えているの者への贔屓が強く、新参の者に対しては袁紹は心を許さず、意見を述べても採用させません。冷遇に不満を持つ者も多いでしょう。しかし、四世三公を輩出しただけあって、世間に顔が広く、広大な領土を持ち、私財や兵も多いのは確かで、董卓に次ぐ大勢力でしょう、それだけに袁家が反董卓の旗を揚げれば多くの諸侯が味方するでしょう」
「そうね、成り上がりの董卓と違い、袁家の権威は漢王朝に並ぶ程でしょう、味方に回る者も多いわ、対して董卓は人気が無い。これが決定的な差ね」
「華琳、先ほどから袁家の凄さを私に教えているが、君は、どちらに付くのだ」
「当然、袁紹に付くつもりよ、あいつがいくら馬鹿とはいえ、その周りは私の力が無ければ董卓には勝てないと思っているでしょう、一応、腐れ縁って言うのもあるし、見知らぬ董卓よりは利用し甲斐があるでしょう」
その言葉を聞き如水は華琳の意見に納得したが、その場合この密議の意味が分からなくなった。
「方針が決まっているのなら、わざわざ三人で話す必要があったのか?」
「念の為、貴方達の意見を聴きたかったの。一度、情報を共有して二人の意見を聴きたいの貴方達の意見は私の参考になるから、二人共、改めて意見を聴かせて」
華琳が二人の意見を聴きたい理由を話たので、如水と桂花は忌憚の無い意見を述べた
「私は袁紹に付く方がいいと思う、一応の大儀は袁紹にある、董卓は孤立するだろう、旧知や恩人ならともかく、わざわざ共に悪名を着る義理もないだろう」
「私もです、それに董卓よりも袁紹のほうが、華琳様にとって利用しやすいでしょう、今は袁紹と共に戦う事が有利かと思います」
「わかったわ、二人が同じ意見なら私も言う事無いわ。解散」
華琳の私室を出た二人はそれぞれ役割を決めた
「如水殿、私は朝廷と袁紹の動きを調べます、その二つなら伝手がありますので私に向いています」
「そうですね、では、桂花さん。そちらはお任せします、私は董卓軍の内情と連合に集まる諸侯の顔ぶれを調べます」
「わかりました、如水殿。お互い華琳様の為、力を尽くしましょう」
「ええ、この後の為にも今が一番重要です。私達の出来る限りやりましょう」
そう言って、二人はお互いの仕事に移った。
それから一月程して、曹操の下に袁紹からの反董卓連合への参加の呼びかけが掛かった。曹操はこれに応じ、五万二千の兵を率い連合へ加わった。
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