ヘタリア大帝国
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TURN60 義兄と義妹その二
「私が君達に勝利をもたらすのよ」
「あんた、本当に」
「大統領は国民に選ばれた」
ルースはまだこのガメリカをガメリカたらしめる思想は持っていた。
そしてそれ故にこう言うのだった。
「その国民、君もお兄さんも栄光に導く義務があるのだよ」
「講和するのはそれに入らないっていうんだね」
「その通りだよ。あと君達には危害を加えない」
ルースは彼女とハンナにこのことも約束した。
「私はジェントルマンだからね、何もしないよ」
「というかハンナには指一本触れさせないわよ」
流石に祖国であるアメリカ妹には何もしないことは自明の理だった。だからこそ彼女はハンナを護って言うのだ。
「いいわね」
「やれやれ。私が彼女に何をするというんだい?」
「例えば餓えた男共の中に放り込むとかね」
アメリカ妹はあえて女なら誰もが聞いただけで、考えただけで身の毛もよだつ事態を言葉に出してみせた。
「そんなのは許さないからね」
「やれやれ。私がそんなことをすると思うのかい?」
「今のあんたはね」
しかねないというのだ。
「何をするかわからないからね」
「信用がないのだね」
「信用するしない以前の問題よ」
アメリカ妹は感情を表に出してルースに対して宣告する。
「まともじゃないのにどうしてそんなことができるのよ」
「私がまともかどうかは勝敗の後でわかるよ」
ルースは狂気に満ちた目でアメリカ妹に言った。
「その時にね」
「くっ、どうかしてるわよ今のあんたは」
アメリカ妹も彼の暴走の前に立つことしかできなかった、ガメリカはほぼ完全にルースに掌握されていた。
アメリカ妹とハンナはルースの前から退いた。アメリカ妹は官邸の廊下を進みながらこうハンナに対して言った。
「あれはもうね」
「どうしようもないわね」
「ええ、完全にどうかしちゃってるわ」
アメリカ妹はルースの狂気を確信していた。
「ああなったらもうね」
「いくところまでいくしかないわね」
「とりあえずあたしは何とかミスターの暴走の前に立つから」
「妹さんができることをするのね」
「幾ら何でも自分の祖国を潰しはしないわ」
ルースは少なくともアメリカと彼女の為に戦っているつもりだ。それなら彼女に何かをする筈がないのだ。
「だからね」
「プレジデントの前にあえて立って」
「ええ、止めるから」
「悪いわね、本来は国務長官である私がすることなのに」
「いいのよ。それよりもあんたはね」
「私は?」
「あたしがいるから」
アメリカ妹は真剣な顔で己の隣にいるハンナを見て言う。
「無茶はしないでね」
「あの大統領を止めることは」
「そう、下手をしたら本当に何をされるかわからないからね」
「だからなのね」
「国務長官としてこの戦争の後に備えていて」
もうガメリカが敗れているという前提に立っての言葉だった。
「そうしてね」
「わかったわ。それじゃあ今は」
「あたしがいるから」
他ならぬアメリカ妹がだというのだ。
「任せてね」
「そうさせてもらうわ、今は」
「少なくとも太平洋軍には兄貴とクーが行ったから」
希望はそこにあった。
「後はキャロルだけれど」
「連絡は来てないわ」
「まだ消息不明?」
「テキサスから何とか脱出しようとしているみたいだけれど」
「何とかUSJに逃げて欲しいわね」
太平洋軍が占拠しているそこにだというのだ。
「本当にね」
「そうね。心からそう願うわ」
「ダグラス司令が間に合えばいいけれど」
ハンナはキャロルについては彼頼みだった。その状況に歯がゆいものを感じていても今は仕方がなかった。
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