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ヘタリア大帝国

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TURN60 義兄と義妹その一

             TURN60  義兄と義妹
 アメリカが太平洋軍に加わったことは忽ちのうちに全世界に知れ渡った。それを聞いてルースはその一変した形相でホワイトハウスで叫んだ。
「馬鹿な、祖国氏が国を裏切っただと!」
「はい、祖国さんは太平洋諸国との講和を宣言されました」
「そして太平洋軍に加わっています」
「馬鹿な、そんな筈がないのだ」
 ルースはその話をすぐには信じようとしなかった。
「私は何の為に働いている」
「はい、ガメリカの為です」
「そして祖国さんの為です」
「そうだ、何故その祖国氏が私を裏切るのだ」
 こう言いその形相をさらに歪めさせる。
「有り得ないことだ」
「ですがプレジデント、実際にです」
「祖国さんはテレビに出ておられます」
 大統領の側近達も狼狽を隠せない顔でルースに話す。
「そして今も講和を宣言されています」
「もう戦いは終わったと」
「ではだ」
 ここでルースは言った。
「私は勝ち祖国氏を連れ戻そう」
「そして共におられるロスチャ財務長官もですね」
「あの方も」
「財閥のご令嬢が勝手なことをしてもらっては困る」
 クーの性別は公には発表されていない、ルースは今もこう思っている。
「私は共有主義者ではない、財閥は国家の権限においてコントロールしているが」
「はい、その資産はですね」
「押収もしていません」
「あくまでこの総動員状態に協力してもらっています」
「それだけです」
「今は非常時だ」
 これがルースが今ガメリカの全権を掌握している根拠になっている。
「それも当然のことだ」
「はい、勝利の為には」
「当然のことですね
「そういうことだ。ではワシントンに戦力を集中させる」
 ルースは戦略も決定した。
「そしてそのうえでだ」
「はい、勝ちましょう」
「絶対に」
「その為にはだ」
 ルースは大統領の席の左側を見た。そこにはハンナとアメリカ妹が憮然とした顔で立っている、彼はその二人に顔を向けて言うのだった。
「君達にも頑張ってもらう」
「何度も言うわ、もうこれ以上の戦闘は無意味よ」
 ハンナは必死の顔で右手を拳にし振りながらルースに話す。
「だからすぐにでも」
「やれやれ、また言うのか」
「講和しないとガメリカはさらにダメージを受けるわ」
「最後は勝てばいいのだ」
「その勝てる要素ももうないわ」
 ハンナはあくまで現実から言う。
「ドワイト司令もいないのよ」
「そしてダグラス司令もだね」
「貴方が解任したのよ」
「当然だ。彼は私の主戦論に反対した」
 ダグラスも最早これ以上の戦闘は無意味だと主張していたのだ、ルースはそれを理由に彼も解任したのだ。
「司令官がそれでは話にならない」
「もうガメリカの主な提督は全て太平洋軍に入ったわ」
 他の人材もそうなっていた。
「精兵達もよ。もう幾ら艦艇があっても」
「大丈夫だ。私には切り札がある」
「その通りです」
 大統領の右側に控えていた白衣の男が来た。あらためて大統領補佐官に任命されたマンハッタンである。
「私のあの開発したシステムがあれば」
「私一人でも太平洋軍に勝てるのよ」
「軍歴のない貴方が!?」
「そうだ」
 その通りだと、ルースはハンナに余裕の顔で返す。
「私だけで彼等を倒してみせよう」
「だからこのワシントンに戦力を集中させているというのね」
「これでわかったかね?」
「わからないわ。そんなこと出来る筈がないわ」
 ハンナはいぶかしむ顔でルースにさらに言う。
「若しあっても急に開発したシステム、どんな不確実要素があっても」
「ミスター、もう止めなよ」
 アメリカ妹も必死の顔でルースに忠告する。
「今ガメリカがまともに太平洋軍から守れるのはワシントンだけだよ」
「だからワシントンに敵を引き付けて一気に戦うのだよ」
「そんなのもう不可能だよ。そもそも兄貴が講和を宣言してるんだよ」 
 ガメリカそのものと言っていいアメリカがだというのだ。
「国民だってそれを聞いて一気に講和に傾いてるしシカゴ、テキサス、ニューヨークの防衛艦隊からどんどん投降者が出ているんだ」
「彼等は勝てば戻るさ」
「この状況でどうやって勝つっていうんだよ」
「見ていたまえ」
 ルース、そしてマンハッタンだけが余裕の顔だ。 
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