金木犀の許嫁
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第四十九話 忍者の水泳その三
「やっぱり」
「そうです、忍術は身の安全も図るものです」
「そのことも覚えるべきですね」
「人や生きものを用いる術を金遁といいますが」
「誰かの傍にいることも」
「そのうちの一つと言えます」
こう言うのだった。
「ですから」
「夜空さんを一人にしないことですね」
「女の子は誰でも」
「そうあるべきですね」
「そうですね」
真昼も言ってきた。
「本当に一人でいますと」
「声をかけられやすいですね」
「キャッチセールスもですね」
「そうです、一人でいる人をです」
幸雄はまさにと答えた。
「狙います」
「ああした人達も」
「そしてよくない人達も」
「そうなので」
「ですから」
だからだというのだ。
「これからもです」
「一人でいないことですね」
「決して。悪霊の類も」
「一人だと狙ってきますか」
「家に犬がいれば」
そうであればというのだ。
「悪霊は中々です」
「家に来ないですか」
「はい」
そうだというのだ。
「そうしたものです」
「そうなんですね」
「悪霊は犬を嫌います」
「天敵みたいなものですね」
「そうです、ですから」
「犬がいてもですね」
「いいのです」
こう言うのだった。
「一人ではなく」
「誰かといる」
「それは人だけでなく」
「他の生きものもですね」
「同じです」
こう話した。
「忍犬はおらずとも」
「実際には」
「忍犬は創作上のものです」
そうした存在だというのだ。
「実際にそうした犬がいたとはです」
「記録にないです」
「真田家でもです」
この家に仕えてきた十勇士の家でもというのだ。
「やはりです」
「なかったですね」
「はい」
まさにというのだ。
「漫画で出て来てからです」
「どの漫画ですか?」
真昼が幸雄にそのことを尋ねた。
「一体」
「白土三平先生だったかと」
「確かその人は」
「忍者漫画の巨匠です」
カムイ伝が代表作である、横山光輝と並ぶ忍者漫画で一世を風靡した偉大な漫画家である。そこに描かれる社会もまた魅力である。
「この人が最初にです」
「漫画で描いて」
「それからです」
「忍犬が出たんですね」
「確かに犬は優れた生きもので」
そうであってというのだ。
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