金木犀の許嫁
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第四十九話 忍者の水泳その二
その彼女を見てだ、軽い感じの所謂チャラ男達が言っているのが聞こえた。
「あの娘いいけれどな」
「胸大きくてな」
「顔もな」
「けれどな」
夜空を見て言っていた。
「彼氏持ちだな」
「他にもいるな」
「今泳いでる連中の傍にいるからな」
「折角だけれどな」
「声かけないでおこうぜ」
こう話して離れていった、その会話を聞いてだった。
泳ぎ終わった幸雄達に話すとだ、幸雄は笑顔で言った。
「一人でいるよりです」
「皆といた方が安全ですね」
「はい」
まさにというのだ。
「この通りです」
「一人でいますと」
「どうしても狙われます」
「ナンパされたりしますね」
「ナンパどころか」
幸雄はやや暗い顔になって話した。
「襲われることもです」
「ありますか」
「治安が悪い場所ですと」
「そうなりますね」
「ですから基本夜道はです」
「一人で歩かないことですね」
「女の子は」
夜空を見ての言葉だった。
「そうあるべきです」
「そうなんですね」
「身の安全を守る為にも」
「大勢でいることですね」
「そうです、ですからこうしてです」
「家族の傍にいるべきですね」
「左様です、身の安全を保つことも」
そうしたこともというのだ。
「忍者はです」
「大事ですか」
「忍術は死ぬ為のものではありません」
「隠れて逃げて」
「そうしてです」
そのうえでというのだ。
「自分の身を守るものであって」
「危険な事態は避けるんですね」
「そうです、旅の間も」
忍者のそれの話もした。
「虚無僧や行商人、旅芸人に化けますが」
「それが目立たないからですね」
「身の安全の為に」
「化けていたんですね」
「そうした人達に」
「そうなんですね」
「ですから」
そうであるからだというのだ。
「こうした普段の時でも」
「皆でいて」
「安全を図ることです」
「そうですか」
「若し何かあったら」
佐京も言ってきた。
「俺も気が気でないから」
「むしろ佐京君が一番ですね」
「そうだと思います」
幸雄に真顔で答えた。
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