英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
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第25話
17:02―――
~船着き場~
「ボートは二隻。一隻はあんた達だな。」
「ええ。私達の方の運転は誰がしますか?」
ボートの数を確認したヴァンの言葉に頷いたクレアはクロウ達に訊ね
「ここは同じ船である”カレイジャス”の”舵手”を務めた私がいるのだから、運転は私がするよ。」
「いや、飛行船とボートは全然違うだろうが。」
クレアの確認に対して答えたアンゼリカの申し出を聞いたクロウは呆れた表情で指摘した。
「俺達の方はどっちが運転する?」
「俺が運転してもいいが飛ばしちまっても文句言うなよ?」
ヴァンの確認に対してアーロンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「わたしは多分大丈夫ですが……」
「で、できれば安全運転で。」
アーロンの忠告を聞いたフェリは自分は大丈夫である事を告げた後アニエスに視線を向け、視線を向けられたアニエスは冷や汗をかいて苦笑しながら答えた。
「ハン、たしか運転免許も持ってるって話だったか。派手に乗り込んだら気づかれそうだし俺が手本を見せてやるよ。」
「そんじゃあお手並み拝見だな。」
「―――――私も一緒にいいかしら?」
ヴァンが運転手を務める事を決めるとエレインがヴァン達に声をかけてヴァン達に近づいた。
「エレインさん……!」
「も、もしかして私達の目的地のことを……」
エレインの登場にフェリは驚き、エレインが来た理由を察したアニエスは驚きの表情でエレインに確認した。
「ええ―――”黒龍城塞”。アルマータの拠点にして明日の戦場ね。」
「流石だな……俺達とは別方面から探り当てやがったか。」
「ええ、他の支部のメンバーにも色々知恵を借りてではあったけど。貴方たちが向かおうとしているという事は当たりだったみたいね。」
「バレました……」
ヴァンの確認に対して答えたエレインの話を聞いたフェリは困った表情を浮かべた。
「だが、いいのか?ギルドのお前が出張ったら黒月の顔を潰す可能性もあるだろう?」
「昨夜、民間人に死者が出た時点でギルドの規約はクリアしているわ。………それに殺されかけた半グレにしてもこれ以上の暴虐は見過ごせない。アニエスさん達やそちらの彼もいるし、A級遊撃士として強制介入させてもらう。」
ヴァンの確認に対して答えたエレインはアニエス達を見回して宣言した。
「エレインさん……」
「流石カルバードの遊撃士の”顔”だけあって、まさに遊撃士らしい答えだねぇ。」
エレインの宣言にアニエスが目を丸くしている中マーティンは苦笑しながらエレインを見つめた。
「……ったく、一度決めたら曲げないところは相変わらずだな。どうする―――依頼者殿?」
ヴァンは苦笑しながら溜息を吐いた後アーロンに確認した。
「……アンタの腕前は昨日見た。今朝までの俺だったら問答無用で突っぱねてる所だが……本当のケジメをつける目的のためにも力を貸すってんなら拒む理由はねぇ。」
「アーロンさん……」
「戦力的には大助かりですっ。」
エレインの加勢を受け入れる様子のアーロンをアニエスは目を丸くして見つめ、フェリは明るい表情を浮かべてエレインを見つめた。
「だが勘違いすんな―――!俺は守られる”民間人”じゃねえ!煌都を見舞うこの災厄に街を背負ってケリをつける”当事者”だ!」
「……!」
「へえ……」
「フフッ、私達に喧嘩を売って来た時と比べると随分と成長したみたいだね。」
「ハン……」
アーロンは真剣な表情でエレインを指差して宣言し、アーロンの宣言にエレインは目を見開き、クロウとアンゼリカは感心し、ヴァンは口元に笑みを浮かべた。
「その意味で主導はあくまで俺だ!そこは弁えてもらうぜ、剣のオバハ――――――」
そしてアーロンがエレインに忠告しかけたその時エレインは常人には見えない速さで剣を抜いて剣の切っ先をアーロンに向けた。
「……弁えてくださいよ剣のお姉さん……」
「ええ、善処するわ。」
剣の切っ先を向けられたアーロンは気まずそうな表情を浮かべて言い直し、アーロンの答えに満足したエレインは口元に笑みを浮かべて剣を鞘に戻した。
(見えませんでした……)
(えっと、ヴァンさんと同い年ならまだ24歳ですよね……?)
(ま、微妙なお年頃ってことだ。)
二人の様子を見ていてそれぞれ冷や汗をかいたフェリは驚き、困惑の表情を浮かべたアニエスに話を振られたヴァンは苦笑しながら答え
(クク、同じ”乙女”としてアンタもさっきのエレインのようにアーロンを”わからせる”事をしなくていいのかよ?)
(私はエレインさんと違って、もう”乙女”と呼ばれるような年齢ではありませんので……)
(フッ、私からすれば少佐もまだまだ”乙女”だよ♪)
(自分も、少佐殿はイセリアと同年代に見えますが……)
(その言葉、イセリアの前では絶対に言うなよ。)
からかいの表情を浮かべたクロウの小声の指摘にクレアが苦笑しながら答えるとアンゼリカは口元に笑みを浮かべて指摘し、不思議そうな表情で答えたタリオンにマーティンは疲れた表情で指摘した。
「さてと……久しぶりね、クロウ君、アンゼリカさん。」
「フフッ、3年ぶりくらいになるね。エレインさんの噂は私達も耳にしているよ。ジンさんが予言していた通り、カルバードでもトップクラスの遊撃士に成長したみたいだね。」
「もうサラと互角か、それ以上なんじゃねえのか?」
エレインに声をかけられたアンゼリカとクロウはそれぞれ懐かしそうな表情を浮かべて答え
「ふふっ、サラさんと互角かそれ以上なんて、さすがに持ち上げすぎよ。」
「え……エレインさんとお二人はお知り合いなのですか?」
クロウの指摘にエレインが苦笑しながら謙遜した答えを口にしている中、知り合い同士の様子のエレインとクロウ達を目にしたアニエスは目を丸くして訊ねた。
「ええ、3年前に縁があってね。――――そちらの”北の猟兵”の二人はできればギルドの規約に触れる事をしない事を願っているわ。」
「ま、それに関しては故郷の独立の件にも関係している”エースキラー”の連中次第とだけ言っておくよ。」
「少なくても今の自分達は自ら遊撃士協会と争う事をするつもりはありません。」
アニエスの疑問に答えたエレインはマーティンとタリオンに視線を向けて釘刺しをし、エレインの釘刺しに対してマーティンは肩をすくめて答え、タリオンは静かな表情で答えた。
「そう……ギルドとして”エースキラー”の貴方達には色々と聞きたいことはあるけど、今はお互いにとっての”共通の敵”への対処の為にも、あの”鉄血宰相”が見出した”子供達”の一人でもある貴女の協力、心強く感じています、クレア少佐。煌都の市民達の平和の為にも、よろしくお願いします。」
「私の方こそ、あのサラさんの再来と称されている貴女の協力には心強く感じています、エレイン・オークレールさん。……こちらこそ、よろしくお願いします。」
二人の答えを聞いて頷いたエレインは真剣な表情でクレアを見つめて挨拶をし、対するクレアも静かな表情で答えて挨拶をした。
その後ヴァン達はボートで”黒龍城塞”の近くまで来た。
~黒龍城塞付近~
「見えて来たぜ、あれが”黒龍城塞”だ。」
「思ったより大きいです……!」
アーロンが真剣な表情で目的地を睨んでいる中フェリは目的地の大きさに驚いていた。
「ああ、昔は何千二もの住人で賑わってたらしいけどな―――……っ……」
「?アーロンさん?」
「どうした?」
説明の途中で何かに堪える様子の表情を浮かべたアーロンが気になったアニエスとヴァンはそれぞれアーロンに声をかけた。
「いや、何でもねえ―――」
二人の言葉に対して問題ない事がアーロンが口にしたその時霧が出て来た。
「霧……!」
「これは、昨日と同じ……!」
「やはり昨夜の”霧”と”A”は何らかの関わりがあるようですね。」
霧を目にしたフェリは声を上げ、エレインとクレアは真剣な表情で呟き
「やっぱり……」
「……ゲネシスが……」
「その光も昨日と……」
「ハン……その小娘にも何かあるみてぇじゃねえか?」
霧が出ると同時にアニエスが身に着けているポーチの中にあるゲネシスも光を放ち、光に気づいたアニエスとフェリは真剣な表情を浮かべ、エレインとアーロンは光に興味を抱いていた。
「今は置いとけ。それより間違いなくいるぞ。煌都を襲った災厄―――”アルマータ”の連中がな。」
「ッ……上等だ!」
「慎重に乗り込みましょう。」
そしてヴァン達は霧の中を進んで黒龍城塞に到着して、足を踏み入れるとヴァン達が乗って来たボートとは別のボートがある事に気づいた。
~黒龍城塞~
「このボートは……」
「……アルマータが使っているものでしょうか?」
「私達が乗ってきたのと同じタイプだけど……」
「ちょっと待て。」
予想外のボートの存在をヴァン達が気になっている中アーロンはボートを良く見た。
「……間違いねぇ、ショウの所で使ってる残り一隻のボートだ。」
アーロンの説明を聞いたヴァンとアニエス、フェリはマクシム達の事を思い出した。
「あの馬鹿レーサーが……」
「マクシムさんたちが乗っていたボートですか……」
「えと、海触洞に行ったのでは……?」
「迷ってこっちに来たのか、調子に乗って足を延ばしたか。ハッ、どっちにせよ最悪だな。」
「状況がよくわからないのだけど民間人がボートに乗ってここに来た……そういう認識で合ってるのでしょう?」
ヴァン達の言葉を聞いてある推測をしたエレインはヴァンに確認した。
「多分な。まだヤツらと決まったわけじゃないが一応注意しながら中に入るぞ。」
「了解。」
「無事だといいんですけど……そういえばヴァンさん、メイヴィスレインはどうしますか?到着する少し前に念話で確認しましたけど、予め朝にお伝えしたように8割がたは回復しましたから、戦闘の参加は可能との事ですが……」
「今はエレインと”エースキラー”の連中もいるから、”切り札”はアルマータの幹部達との戦闘に備えてギリギリまで回復に専念させて、力を蓄えてもらっておけ。」
「わかりました。」
「おや?その口ぶりだと、もしかしてアニエス君は異種族と”契約”しているのかい?」
アニエスはメイヴィスレインの事をヴァンに確認し、アニエスの確認にヴァンが答えると二人の会話を聞いてある事に気づいたアンゼリカは目を丸くしてアニエスに訊ねた。
「あ、はい。数週間前に出会って、諸事情によって”契約”する事になったのですが……名前はメイヴィスレインで、種族は”天使”です。」
「ちなみに階級は第五位の”力天使”だ。」
「”力天使”……ルファディエル警視やルシエルさんと同じ階級にしてこのゼムリアで活動している天使達の中で二番目に階級が高い中位の天使、ですか。」
「へっ、中々心強い戦力じゃねえか。」
「だが、さっきの会話から察するにその天使は万全の状態じゃないみたいだな?」
アニエスとヴァンの説明を聞いたクレアは静かな表情で呟き、クロウは口元に笑みを浮かべ、ある事が気になったマーティンは真剣な表情で確認した。
「その……昨夜の事件で亡くなった人達を蘇生してもらう為に、メイヴィスレインには無理をさせてしまって、今も失った力の回復に専念してもらっているんです。」
「そういえば昨夜の事件で亡くなったはずの人物の何人かは”天使”によって蘇生してもらえたという話もありましたが………って、その”天使”がアニエス殿と”契約”しているという”天使”なのですか……!?」
アニエスの説明を聞いてある事を思い出したタリオンは驚きの表情でアニエスに訊ねた。
「あはは……はい。」
「セイとホアンを生き返らせてくれたあの天使には俺も感謝しているぜ。いずれ何らかの形で二人を生き返らせてくれた件の”恩”は返すつもりだが………その前に今はやるべきことをやるぞ。」
タリオンの反応にアニエスは苦笑しながら頷き、アーロンは静かな表情で呟いた後黒龍城塞を睨んでヴァン達に探索の開始を促した。
そして探索を開始したヴァン達が建物の中に入って少し進むと巨大建造物を目にした。
「かつて数多くの鉱員が住んでいたという巨大建造物……かなり古いけど一応、コンクリート製なのね。」
「築80年ってところか。家族ごとだったみたいだから一つの町みたいなモンだったんだろう。」
「っ………」
「だ、大丈夫ですか……?」
「やはり傷が開いているのでは………」
目の前にある巨大建造物についてエレインとヴァンが話し合っているとアーロンは何かに堪えるかの表情を浮かべて一瞬片手で頭を押さえ、アーロンの様子に気づいたアニエスとフェリは心配そうな表情で声をかけた。
「何でもねえ。老先生の軟膏がちゃんと効いてる。むしろ普段より遥かに気力が湧いてるくらいだぜ。」
「……ならいいが。」
「きゃああああああああ―――――」
アーロンの強がりと思える言葉にヴァンが若干怪しみながら信じると女性の悲鳴が聞こえて来た。
「悲鳴……!?」
「それも女性の悲鳴のようだね……!」
「マクシムさんの連れていた方々……!?」
「奥からみたいです!」
「待て―――――!」
女性の悲鳴を耳にしたエレインとアンゼリカは血相を変え、フェリとアニエスが真剣な表情で声を上げて先に急ごうとしたが何かに気づいたヴァンが制止の声を上げると周囲の扉が開かれると同時に虚ろな目をした半グレ達がヴァン達を包囲して武装を構えた。
「!?こいつら……!?」
「ッ……!”息吹”がありません……!」
「チッ、”不死者”か……!」
「どうやら、倉庫にはいなかった半グレ達は全員アルマータの幹部達によって殺害された上、”不死者”として利用されているようですね……!」
屍鬼化した半グレ達の異変に気づいたアーロンとフェリは真剣な表情を浮かべ、半グレ達を不死者と悟ったクロウは舌打ちをして厳しい表情を浮かべ、クレアは厳しい表情で呟いた後それぞれの武装を構えた。
「あ、あの時と同じ……!」
「アルヴィス君が言っていた……!」
「ホラー映画かよ!?」
「話は後だ、来るぞ!」
そしてヴァン達が不死者化した半グレ達との戦闘を始めようとしたその時
「貴方達の居場所はここじゃありません!光よ!迷いし魂達に救済を!贖罪の光霞!!」
ヴァン達の頭上から少女の声が聞こえた後、神々しき光が半グレ達を包んで炸裂した後半グレ達は光を放ちながら消滅した。
「い、一体何が……」
「翼の女神よ……」
「オイオイ……冗談だろ。」
予想外の攻撃によって消滅した半グレ達を目にしたアニエスは困惑し、フェリはその場で祈りを捧げ、屍鬼とその最後を始めて目にしたアーロンは真剣な表情を浮かべ
「クレイユの事件と同じ……2週間前に命を落としたはずの猟兵達がその後も動き続け、最後には光と消えた……貴方たちはどこまで何を知っているの?」
エレインは真剣な表情で自身が知っている知識を呟いた後アニエス達に訊ねたがアニエスとフェリはそれぞれエレインから視線を逸らして何も答えなかった。
「……一つ言えるのはアルマータの仕業ってことだけだ。前回同様、ヤツらがロクでもない事をやろうとしているのは間違いねぇ。」
「……わかった。先程の悲鳴も気になるし、とにかく今は先に進みましょう……と言いたい所だけど。――――半グレ達に放った今の光の魔術の使い手の聞き覚えのある声。あの声は確か……」
「フフ、まさかこんな所で君とも再会することになるとはね、リタ君♪」
「ふふっ、それは私の台詞でもあるのですけどね。」
ヴァンの答えに一応納得したエレインは半グレ達を消滅させた魔術の使い手の声に聞き覚えがあった為考え込み、エレイン同様声に聞き覚えがあったアンゼリカが苦笑しながら声の主―――――”冥き途”の見習い門番であるリタ・セミフの名を呼ぶと槍に乗って空中にいたリタがヴァン達の前に降りて来た。
「貴女は一体………」
「あの馬鹿が連れていた女共じゃねぇようだが………」
「!気を付けてください!その少女も先程の屍鬼の半グレ達同様、”息吹”がありません……!」
リタを目にしたアニエスとアーロンが戸惑っている中、リタに命の息吹がない事に気づいていたフェリは武装を構えてヴァン達に警告した。
「武器をしまえ、フェリ。そいつは今までの屍鬼達と違って、安全な屍鬼―――――いや、”幽霊”だ。」
「ええっ!?」
「”幽霊”って………つーか、まさかとは思うがそのガキの幽霊?とも知り合いなのかよ。」
しかしヴァンの制止と説明の言葉を聞くとフェリは驚きの表情で声を上げ、アーロンは信じられない表情でヴァンに確認した。
「ああ。俺だけじゃなく、エレインや”エースキラー”の連中とも知り合いの”特殊な幽霊”だ。」
「ヴァ、ヴァンさんだけでなくエレインさんやクレア少佐達のお知り合いなんですか……!?」
「はい。……お久しぶりですね、リタさん。こうして会って話をするのは、1年半前の”ヘイムダル決起”以来ですね。」
ヴァンの説明を聞いて驚きの表情で声をあげたアニエスの言葉に頷いたクレアは静かな笑みを浮かべてリタに声をかけた。
「ふふ、あれからもう1年半も経っていたんですね。あ、初対面の人達もいますから、まずは自己紹介からですね。―――――”冥き途”の見習い門番のリタ・セミフと申します。ヴァンさんやクレアさん達とは3年前に様々な理由で知り合いました。」
「”セミフ”………?」
「えと、”冥き途”というのは?」
クレアの言葉を聞いて懐かしそうな表情を浮かべたリタはアニエス達を見回して自己紹介をし、リタの名前を聞いてある事が気になったアニエスは不思議そうな表情を浮かべ、フェリはリタが自己紹介の際に口にしたある言葉について訊ねた。そしてリタは”冥き途”について軽く説明した。
「ええっ!?ということはリタさんは……」
「死者達が向かう冥界に繋がる門の門番さんですか………」
「ふふっ、わたしはあくまで”見習い”ですけどね。」
「ちなみにリタ君はこう見えて、数百―――――いや、もしかしたら数千年以上の時を過ごしているから私達よりも遥かに年上なんだよ?」
「まさかのロリババアかよ……」
”冥き途”とリタの役割を知ったアニエスは驚き、フェリは信じられない表情で呟き、苦笑しながら答えるリタの年齢についてアンゼリカが答えるとアーロンは呆れた表情でリタを見つめた。
「それで?何でお前さんがこんな所にいるんだ?」
「私が冥界の管理者であるタルタロス様の指示によって、ディル=リフィーナにとっては異世界であるこの世界を回って調査している事は以前お話しましたよね?それでここの近くの都市で滞在している時に、凄まじい怨念を感じましたから、それを調べにここに来たんです。」
「”凄まじい怨念”、ですか……」
「さっきのゾンビ共の件を考えれば、強ち間違ってねぇかもしれねぇな。」
ヴァンの質問に答えたリタの話を聞いたタリオンは困惑の表情を浮かべ、マーティンは疲れた表情で呟いた。
「彼女の話も気になるけど先程の悲鳴の件もあるから、先を急ぐべきだけど、彼女の事はどうするのかしら、ヴァン。」
「あー…………アーロン、どうする?先に言っておくがリタはああ見えて、戦闘能力は俺達やエレインどころかここにいる”エースキラー”の連中以上だ。今からやり合う連中の事を考えれば、強力な戦力は一人でも多いに越したことはないぜ。」
エレインに訊ねられたヴァンは疲れた表情で考え込んだ後アーロンに確認した。
「ハア?そのロリババアがこの中にいる誰よりも強いとかマジかよ―――――」
ヴァンの確認に対して困惑の声を上げたアーロンが呆れた表情で疑問を口にしかけたその時リタが目にも見えない速さで槍の切っ先をアーロンに向けた。
「アーロンさん、でしたか?私が皆さんより年上である事に関しては事実ですから別に気にしていませんけど、さすがに”お婆ちゃん呼ばわり”は一度は許しても二度目以降は許しませんよ?」
「……すいません、是非力を貸してくださいお嬢さん………」
リタは威圧を纏った微笑みをアーロンに向け、槍の切っ先を向けられ、リタの微笑みに圧されたアーロンは即座に謝罪した後敬語でリタに加勢を頼み、その様子を見ていたヴァン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「依頼者の確認も取れた事だし、お前さんの力を貸してもらってもいいか、リタ。俺達がこれからやり合おうとしている連中は何らかの装置を使ってさっきの屍鬼共を操っている可能性が高い。」
「”この世界にある何らかの装置で死者を操る”という話は気になりますね……―――――いいですよ、遊撃士のエレインさんも同行しているという事は悪い事をした人達の退治の為でもあるでしょうし、死者達を利用する人達は私も許せませんので。」
「ハッ、そうと決まれば話は早い。先を急ぐぞ。」
(えっと……エレインさんはいいんですか?)
(リタさんの事?私どころかジンさんよりも戦闘能力が高い彼女を”民間人”の枠に当てはめるのは正直微妙だし、そもそも彼女は3年前の”ヨルムンガンド戦役”でメンフィル・クロスベル連合側の協力者としての従軍経験もあるから、リタさんに対する保護の優先度はアーロンさんよりも低いのよ。)
ヴァンの話を聞いてヴァン達への加勢を決めたリタの様子を見て自分と同じく”民間人”の枠に入ると思われるリタの協力に対して反対しない様子のエレインが気になったアニエスは小声にエレインに訊ね、訊ねられたエレインは苦笑しながら答えた。
(ええっ!?リタさん、ジンさんよりも強い上3年前の大戦の従軍経験まであるんですか!?)
(それは確かに心強い戦力ですねっ!)
エレインの話を聞いたアニエスは驚き、フェリはリタの加勢に心強く感じた。
こうしてリタを加えたヴァン達は悲鳴が聞こえた場所へと急行した―――――
後書き
というわけで光と闇の軌跡シリーズで唯一の皆勤賞である冥き途の見習い門番ことリタ・セミフがここでまさかの登場&参戦ですwwちなみにリタは終章にも登場予定ですが、オラシオンでの登場・参戦はさすがにないと思います…………多分
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