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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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フェアリー・ダンス編
新世界編
  実家・ALOの二刀




台東区御徒町の裏通り、菊岡を使って調べたプレイヤーネーム、『エギル』こと、アンドリュー・ギルバート・ミルズ氏の経営する喫茶店兼バーがある。名前は《Dicey cafe》。うん、いい名前だ。

カラン、という乾いた音をたてて店に入る。客は全く居なかった。


「いらっしゃいませ、何にしますか?」

「アルゲート茶」

「……は?」

「あの渋いやつだよ。2ヶ月程度でもう忘れたのか。この鳥頭」


店主のアンドュー……もういいや、エギルは目をぱちくりとすると約10秒後に声を発した。


「レイ……か?」

「久しいな、エギル」


次の瞬間、拳が頭上に降ってくるが、俺はそれをひらりとかわす。


「避けんな!!」

「殴んなよ……」

「よくもまあ、あん時は嵌めてくれたもんだなこの野郎」

「仕方なかっただったんだよ」

次はガシッと握手を交わす。しばらく、互いの生還を祝いながら、話を本題に持っていく。

まずはエギルにPCを借りてアスナの写真見せ、俺の見解を話した。


「なるほど、にわかには信じがたい話だが……コイツは間違いねぇな」


エギルがアスナの写真を睨みながら言う。


「俺はこれからALOに乗り込んで真相を解き明かす。エギル、手間を掛けるが、この写真と……このパッケージ、キリトに渡してくれないか?」

「構わんが……なんでお前がやらないんだ?あいつもきっと喜ぶ、なんなら今から呼んでも……」

「駄目だ。詳しくは言えないが、俺はまだ下手にSAO生還者に接触出来ない。ここへだって追っ手を撒いて来たんだよ」

「……何やったんだ、お前……」

「まあ、お前らの住所調べるときに色々と、な?」

「…………」

「心配すんな、今はまだ教えられないが、全て終わったら話すよ。皆にも……それと、」


声を一段と低くして話す。


「キリトには俺のことを極力話さないでくれ。『アルンで待ってる』とだけ」


「何か……あるのか?」


「キリトに危険が及ぶ、エギルも保険は掛けとくけど、用心してくれ」

「……わかった」


連絡先を交換すると、外へ出る。扉を閉めた瞬間に横へ跳ぶ。地面に刺さったのは千本。


(やり口が古い……。古流暗殺術か……やっかいだな)


千本の向き、角度を素早く記憶し、それを抜く。

その場を離脱しながら位置の逆探知を開始する。僅か3秒後、今度はこちらから反撃した。抜いた千本をその位置に投げつける。

が、成果は確認しない。そこに居ないのは解っている。


「敵も馬鹿じゃないな……はぁ」


ぼやきつつ、その場を後にした。



________________________________






時は少し遡る――


呼び出しから一ヶ月後、俺は体力の回復を図っていた。リハビリ初期から飛ばし過ぎたせいもあり、今だに慢性的な筋肉痛だが、お陰で誰もが呆れるほどの回復スピードだ。


「おーい、じーさん。帰ったぞー」

「……お兄様、使用人も居ります。お祖父様のお立場もお考え下さい……」

「む……コホン、お祖父様。螢、ただ今帰りました。何処にいらっしゃるか!」

「なんじゃ、螢のくせして気持ち悪いあいさつしよって……よく帰った。馬鹿孫よ」

「……お祖父様?」

「コホン、はて?我が孫は何時からそのような似合わぬ挨拶をするようになったのかのぉ?……よくぞ帰ったな。孫よ」

「……もういいです」


俺は何だかんだで実家に帰省していた。年末だしな。

だが、一番の理由は――癪な話だが――俺がこの家を勝手に出ていったことを赦して貰ったことのお礼を言いに来たのだ。

ご先祖達を奉る神棚(うちは神教)に参ったあと、居間に移動する。


「爺さん、本家から、何か?」

「ふん、決まっとる。お前を返せだと。誰が返すかこの―「コホン」―うむ、すまぬ沙良」

「……お兄様は……どうされたいのですか?」

「あの家にはもう用はない。奴らに利用価値は無くなった」


その言葉に水城家当主、水城冬馬は豪快に笑い出す。しばらくして落ち着くと昔のように暖かな笑みを浮かべながら手招きをする。


「何だよ……?」

「いいから、こっちゃ来い」

何されるか判ったもんじゃ無いので、一応警戒心を持って近づくが、爺ちゃんはポン、と俺の頭の上に手を置くと、乱暴に撫で始めた。


「な……なにすんだよ!?」


逃れようとするが、向こうは老いても当主、つまり現段階で水城家最強。筋肉痛でひいひい言ってる俺なんか敵じゃない。


「うっさい、馬鹿孫。黙ってろい」

「……あ」


じゃれあう祖父と孫を見ていた沙良は祖父の目に光るものが浮かんでいるのに気がついた。

そして彼女はそれを指摘するほど無粋者ではない。場が、温まってきたその時――


「螢は何処だあぁぁぁぁっ!!」


嵐がやって来た。


「久しぶり、蓮兄」

「おおー!沙良久しぶり、息災か?」

「うん」

「それは何より……って爺さん、その抱えてるの俺に寄越せ。久しぶりに死合うから」

「おお、いい考えだ」

「いいわけあるか!?」

とんでもないことを言い出した2つ上の兄にして水城家の直系、つまり実子の水城蓮は何処からともなく木刀を二本取り出し、片方を放ってくる。


「いざ、尋常に……勝負!」


神速の袈裟斬りから斬り上げ、『水城流剣術攻ノ型、《閃斬》』

一太刀目で相手を怯ませ、二撃目で首を斬り飛ばすという危険極まりない技だ。ちなみに、蓮兄程の使い手が使うと剣先は音速を越える。

が、木刀を掴んだ時点で技を見切った俺は後ろに回避していた。蓮兄の木刀は俺の首があった所をヒュッと切り裂く。


「ま、待ってくれ、蓮兄。俺まだ本調子じゃないし、全身筋肉痛……」

「問答無用!!!!」


『尋常に』じゃなかったのか!?ちなみに、蓮兄は武術は無敵レベルに強いが、中卒なので基本的にアホだ。

でも、何故か高校レベルの問題も解けるから謎だ。そこは母方の血なのだろう。

本人曰く、「俺に弱点はねぇ!!」(マジにない)

「こ、のやろ……!!」

バンッと襖を開けて廊下に飛び出す。そのまま全力で道場まで走る。


「ふはははは!!逃げられると思うなよ!!」


逃げても無駄だろうな。地の果てまで追ってきそうだ。

蓮兄が追撃で投げてくる投擲剣(勿論、本物)を上下左右にかわしながら目的の場所にたどり着く。


「何だよ、場所変えるなら最初から言えって」

「……問答無用っつたの誰だろうねえ!?」

「俺だが?」


……アホや。とは思ったが言ったところでしょうがないので、正面に対峙する。

蓮兄も俺がやる気になったのを感じたのか笑みを消す(今までのは遊び《じゃれあい》)遅れてやって来た祖父と沙良、そして数人の道場門下生までが2人に注目する。


「『二天一流』、『水城流』免許皆伝。次期当主候補一位、水城蓮。参る」

「『二天一流』、『水城流』免許皆伝。当主継承権永久破棄、水城螢。受けて立つ」


かつて、『最強』と『天才』と並び称された2人が2年の時を経て激突した。







______________________________________







「ぐおぉぉぉ……」


全身が痛い。そして、動く気にすらならないほどの疲労感。

アホ兄貴との激闘が無駄に白熱し、最後は胴に一撃入れられて敗北。

ていうか万全の状態でも勝ったこと無いのに、今勝てるわけ無いだろ。

当の勝者はツヤツヤした満足顔で何処かへ去っていった。


「お兄様、大丈夫ですか?」

「ダメ、死にそう」

「では、ALOに行くのは明日にしますか?」

「……いや、行く。ついでに体を休めればいい」


長らく帰っていなかった実家の自室。

出ていった時のままだったのは正直驚いた。掃除はされてたけどな。


「本当に、私が教えて差し上げなくてよろしいのですか?」

「ああ、パーティーの奴らに迷惑になるだろ?それは駄目だ」

「申し訳ありません……」

「いいって……さ、もういいよ。遅れるぞ」

「はい。……では、お兄様もお気をつけて」


自分も中で用事のある沙良を帰し、俺は自室で1人でナーヴギアを手にとる。アミュスフィアを使うという手もあったが、まあ……験担ぎだ。


「リンク・スタート」


ついに、俺は新たな世界に足を踏み入れた。








______________________________________









キャラ作成をさっさと済まし、アルヴヘイムに降り立つ。

種族は闇妖精《インプ》を選択。SAOのデータを引き継いだせいか、髪は銀髪――というか白だなこれは。それもあってか初っぱなから目立ってる。顔は勿論、現実と同じ具合だ。


「これはちょっといじった方がよかったかな……?」


まあ、いいか。インプ領の首都テネブラエは洞窟の中にあって薄暗い。

このゲームの一番の魅力は《飛行》が出来ることだが、インプ以外はこのような洞窟の中で飛ぶことは出来ないらしい。

ウインドウを開くと予想どうりチートなステータス値。

アイテムは復元した物以外は破損している。それらを片付け、取り合えず冒険に出る支度をする。
道具屋でポーション類、そして防具屋で軽装戦士用の装備を買う。

そして何より重要なのは武器だ。復元したねを振り回すのは流石にマズイ。

初心者装備のやつがアホみたいな攻撃力を持ってたら不思議すぎる。

と言うわけであちこち回った末、隅っこにあるプレイヤーショップを見つけた。


「そこの旦那。ちょっといいかい?」

「ん……客か。何か入り用かな?」

「強い刀あるか?」

「……兄ちゃん、やり手だな」

「は?」

「目を見りゃ解る。そもそも《隠蔽》スキルマスターの俺のハンティングを見破るなんざ、ただ者じゃねえ」

「なーる……ま、色々とな」

「深く聞きやしねぇよ。大体解った。……ほれ、持ってけ」


そう言って投げ渡されたのは標準的な日本刀。だが……


「こいつは……」


強い。圧倒的な強さが刀からにじみ出ている。そして重い。これは命を刈り取る重さだ。


「やはり、分かるか」


「ああ……」


「《ムラサメ》。現実じゃあ《妖刀》って呼ばれてるやつだな」

「……旦那こそ何者だい?」


被っていたフードを脱ぐと、レプラコーン特有の乳白色の肌を掻きながら答えた。


「俺は《ハンニャ》レプラコーンの刀匠だ。脱領者だけどな。そいつはただでくれてやる」

「レイだ。分かってるとは思うが、《あのゲーム》からやって来た」


狂ってるぜお前。うるせ。という掛け合いをし、フレンド登録をすると、その場を離れた。

洞窟の外へ出ると辺りは夜だった。現実と昼夜が一緒な訳ではないので、しばらくのうちは慣れが必要なようだ。


「……えっと、飛べるんだよな?」


慣れるまで初心者スティックを使えばいいのだが、何だか癪だ。


(……あいつなら、絶対すぐに出来るしな……!!)


この場にいない、某黒の剣士に無駄に対抗心を抱きながら30分ほど練習した。

どうにかぎこちなく飛べるようになった所で、さてどうしようかと考える。


①真っ直ぐアルンへ

②世界樹攻略は困難と聞いてるので手練れの仲間を集める

③行きながら集める


③は手練れが居ない可能性があるため、やめておく。取り合えず、②に専念しよう。

しかし、手練れが何処にいるか分からない。悶々と思考を巡らせていた、その時――


「ゴアアアアアァァァッ!!」


巨大な影が現れた。


「……あー、と?」


ポーン、と音がしてフレンドメッセージが届く。勿論、ハンニャからだ。


『1つ、言い忘れてた。《ムラサメ》には常駐型のデバフがあってな、大型のMobを引き付けるんだ。ストレージにあっても効果を発揮するガチ呪いなんだよ。あと、この高山地帯には今《飛竜警報》が出てるから気いつけろよ』

うん、遅いよハンニャ君。わーわー言いながら回りにいたプレイヤー達は領内に逃げていく。援護は無さそうだ。

こうなったら自棄だ。


「上等だ。この蜥蜴やろう!!」


という声と竜の咆哮が重なった。竜はいきなりこちらへ下降しながらブレスを撃ってくる。


「うおっと……」


空中での戦闘でいきなり竜は厳しかったようだ。巨体に似合わぬスピードだった。


「てめが呼んだ災禍なんだから責任取れよ。《ムラサメ》!!」


構えは抜刀術。ソードスキルが無いのでその分プレイヤーの実力がダイレクトに活かせる。


『水城流抜刀術(よん)式、斬裂』


刀と牙が衝突し、牙をあっさりと切断した。


「おお……」


これはいい。これなら一匹ぐらい――


「ガアアアァァァァッ!!」


だあああ、何かさらにでかいの来た!?

と、その時、


「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」


勇ましい雄叫びと共に青い塊が新たに現れた飛竜に激突する。


「ガアァッ!?」


不意打ちを食らった飛竜はバランスを崩す。

割り込んできたプレイヤー、ウンディーネの剣士は何やら呪文を唱え始める。言い終わると同時に飛竜を水の枷が縛り付る。拘束の魔法のようだ。


「今のうちに逃げよう!」


二匹も相手できる自信もなかったので、俺はその声に従った。


 
 

 
後書き
セイン君登場!活躍にこうご期待下さい。

首都は原作に出てきていないので、創作。テイルズが好きなわけではないので、あしからず。たまたまです。

お知らせ、

たくさんのオリキャラどうもありがとうございます。
オリキャラの投稿受付を『感想』から『メッセージ』に変更します。
宜しくお願いします。 
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