ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~
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フェアリー・ダンス編
新世界編
パートナー
前書き
……なんかな~……
「助かった。ありがとう」
「どういたしまして。……それにしても妙だな、1つのエリアに飛竜が2体も……」
「ああ、それはこの刀のデバフ効果だと思う」
俺は助けてくれたウンディーネの剣士に例の《ムラサメ》を見せた。すると、彼は頬をひきつらせて言った。
「それ、《伝説武器》だよ。確か、銘は《ムラサメ》、武器の固有スキルとして《万象切断》があって……斬りつけた物を破壊不能オブジェクト以外なら何でも斬れる。ってやつ?」
なんと、物凄いレア物だったのか……。一瞬、捨てようと思ったのは間違いだった。許せ、ムラサメ。
「デバフの効果しか知らなかったな。……そんなすごいものだとは」
そのことも知っているらしい彼と揃って苦笑する。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕の名前はセイン。よろしく」
「レイだ。今日始めたばかりの初心者だ」
「……ははん?さてはその刀、ハンニャさんに貰ったね?」
「知ってるのか?」
「有名人さ、神出鬼没の刀匠兼武器屋って言われてるんだよ」
どうやらALOにおける最初の友人は変人極まるお方のようだった。
「ところで、何も考えずにインプ領に逃げ込んだけど、大丈夫なのか?他種族なのに」
「僕は全種族の領地に立ち入りが許されてる完全中立のプレイヤーなんだ。システムに定義される地位じゃないけど、領主さん達とは仲良いよ」
「そりゃすごいな!セインも有名人なんだ」
「あはは。一応、ALOで初めての二刀使いだし、お金で雇われて傭兵やったりしてるから結構有名かな」
デスゲームではないからこそ出来る信頼関係だろう。これがSAOだったら傭兵業は成立しにくい(やってるやつは居た)。
とにかく、セインなら強いやつも知ってるだろうし、上手くすれば彼が協力してくれるかもしれない。助けてくれたお礼も兼ねて近場のレストランに入り、俺の目的を一般人用の話で話す。
「……レイはSAOプレイヤーだったんだ」
「ああ、だから完全に初心者って訳じゃないな」
俺は話を聞いているセインに暗い影が落ちたのに気がついた。
いや、もっと言うなら彼は会ったときから、VRMMOについて深い感情を抱いているのを感じた。
「……《ガゼル》ってプレイヤー、知ってたりしないかな?」
おそらくは、非常に親しい人がプレイヤーだったのだろう。俺は目を瞑って記憶を掘り返し始める。
《ガゼル》……攻略組、該当者なし。中層プレイヤー、保留。………低層、初期死亡者。…………《ガゼル》該当。
「SAO黎明期に死亡したプレイヤーの1人だ。片手直剣使い。最終レベルは8。死亡日は2022年12月4日。死因は頭部へのクリティカルダメージだった」
「……ど、どうしてそんなに詳しく?」
「俺は攻略組として最前線で戦う上で守れなかった全ての命を背負うと誓った。まあ、戦って死んだ奴限定だけど」
セインはそっか、と答えると何とも言えない顔をして黙り込む。
そして、ボツリポツリと話始めた。
「僕がこのゲームを始めた理由は弟がSAOプレイヤーで、死んだからなんだ。名前は《ガゼル》。体が弱くて家に居てばかりだった。僕はそんな弟を気にかけることもなく、自分のことだけしか考えてなかった……居なくなって初めて気がついたよ。僕はあいつを避けてただけなんだって。あいつを構ってると自分の時間が無くなる……そんなのごめんだって……そう思ってた」
俺は黙ってその話を聞いている。かつて、アスナやキリト、リズ、オラトリオのやつらの心内を聞いた時のように。
「プレイヤーネームを知ったとき、はっとしたよ。《ガゼル》っていうのは昔僕が買ってあげた絵本に出てくる動物で、雪の中を跳ね回るんだ。僕は何度も弟にその本を読んであげた。いつか、元気になったら雪合戦しようとか、そう言いながら。……体が弱くても、VRワールドなら元気に跳ね回れる……そう考えたんだ、きっと。あいつは、ずっと僕と遊びたかったから……」
「だからSAOを始めて、それで死んだのは自分のせい……って考えてるのか?」
彼は唇をぎゅっと噛む。
「だとしたら、それは違う。《ガゼル》はセイン、お前と弟が作り出したものだ。それは弟が消えたら無くなるのか?お前の心にまだ《ガゼル》は生きてる。お前が生き続ける限り、それは残る。形あるものが全てじゃない。俺はそれを大切な人達に教わった」
過酷なデスゲームの中で誰もが自分の信念を貫いて必死に生きていた。信念の善悪はこの際問わないことにして、信念だけはあの世界において、絶対の正義だった。
「じゃ、僕はどうしたらいいんだ。弟に何も出来なかった、僕は!!」
「さっきも言ったぞ。生き続ければ心の中に残る。だから生き続けろ。それがセインの役目だ」
自分で言っていて説教臭い……。こういうのは苦手だ。はあ……。
「ともかくだ。何時までも引きずってんじゃガゼルが浮かばれない。プレイヤーなら、ゲームを楽しめよ。片方だけでもさ」
顔をあげたセインには陰が消えていた。強い意志を持った真のMMOプレイヤーの顔だ。
「協力させてくれ、レイ。このゲームの裏に本当にSAOプレイヤーが囚われているなら、僕は犯人を許さない。最後まで一緒に行く」
「ああ、頼むぜ。相棒」
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というわけで、早くも協力なパートナーを得た俺は色々話を聞きながら次なる仲間を探しに行くことにした。
「うーん、強い人か……まず、筆頭はサラマンダーのユージーン将軍だね。《魔剣グラム》っていう伝説武器の使い手。でも彼はサラマンダーの軍事を預かる重役だし、勝手な行動は出来ないかな」
「確か、サラマンダーって現時点でALOでの最大勢力だよな。ってことは……」
「全プレイヤー中最強。僕は勝てたけど、二刀じゃなかったらまずいね。で、次にだけど……シルフの領主さん、は同様の理由で却下……あ、《緑の双翼》が居るかな」
「《緑の双翼》?」
「うん、シルフのめちゃくちゃ強い女性のペアだよ。ええと、リーファとセラって名前」
……《セラ》、She is my sister. 多分。
「あー、知り合い?」
「リーファさんとはね。セラさんは会ったことないや」
「……保留で」
多分、『リーファ』ってんのがキリトの妹だろ。なんか段々関係がややこしくなってきたな。
「後は……そうだな。あまりお薦めはしないけど、ケットシーに凄腕のメイジが居る」
「なんでだ?」
「……とにかく扱い難いんだ」
「とりま、そいつだな」
俺の即答に面食らったようで、心配な様子で言う。
「ええと、話聞いてた?」
「もち、アポ取れる?」
「来るかどうか判んないよ……」
そう言いつつ、セインはホロキーボードをタイプし始めた。
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結果、待ち合わせした中立都市にそいつは来なかった。時間ちょうどに『忙しいから行かない』って返信が来たが……ドタキャンはどうかと思うぞ。
「……なんかごめん。こういう子なんだ」
「やれやれ、一度会ってみたいもんだよ」
ぶっちゃけ言えば後衛が欲しいのである。セインがウンディーネのたしなみとしてなけなし程度に魔法が使える。が、どちらかと言うと剣士タイプだ。
そして俺は純粋な剣士タイプだ。魔法においてはインプの初期スキルのリファレンスすら読んでない。
「なあ、ウンディーネの知り合いに強いやついないのか?特にメイジ系のやつ」
「いやー、メイジって初心者でもパーティーに居るだけで随分と便利だからさ。すぐに引っこ抜かれちゃうんだよ。ここに来るはずだったヴィレッタが僕の知る限り唯一のソロメイジだね」
「ソロ?メイジなのに?」
「うん、彼女はケットシーだからモンスターのパートナー、もとい使い魔がいるんだよ。しかも超強い」
……メイジ路線はとにかく保留するしかないようだ。
「レイ、ヴィレッタ以上にお薦めしないけど、ウンディーネに1人、規格外の猛者がいる」
「実は意外に変人が多いだろALO」
「《アルセ》、彼女は拳のみで戦う近接特化型のビルドで魔法も自己強化しか使えない。でも近接戦ならさっきみたいな飛竜も1人で倒せるよ」
「そうか……取り合えずそいつに会いに行くか」
「わかった。多分、ウンディーネ領に居るかな?ちょっと待ってね…………よし、ログインしてる。行こう」
うーん、拳か……何だろう。本業はレディースの頭《姉御》だったりするのだろうか。
『オラオラ、お前たち。あたいに付いて来な!!』
『はい、姉御!!』
的なことをやっているのか……てか、近いうちにディーゼルエンジンを積んだマシンは規制が始まるらしい。さらば2000GT。
極限にどうでもいい妄想をしながら、俺達はウンディーネ領に飛び立った。
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「レイ、そっちに小型が2体行った。気を付けて!」
「No problem!!」
デバフ絶賛発動中のムラサメを小型の何だかよくわからないMobに一閃する。
Mobは一撃で消滅するが、いかんせん数が多い。
進路を阻むやつらを叩き落としながらセインに話しかける。
「これじゃあ、埒があかない。突破しよう」
「わかった!!」
ムラサメを腰に納刀すると、慣れてきた急旋回で敵を撹乱する。
こいつらは派手な動きをするプレイヤーに対して憎悪値が増加するようで、セインに張り付いていたMobまでこちらに寄ってくる。
その隙にセインが離脱し、彼の援護を受けながら俺も撤退することが出来た。
最初は心配したチームだったが、メイジが居ないなら必要な状況にならなければいい。という理論で力押しの戦法を取っているのだが、案外いけるものだった。
まあ、初心者のくせにスキル値が異様に高い俺がチート過ぎるせいもあるが。
セインも吹っ切れたお陰か、飛竜戦の時よりも滑らかな動きになっているような気がする。
「見えた。あそこの中立都市で待ち合わせてるから」
「了解」
俺達はウンディーネ領の手前の都市に目標を定め、下降していった。
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手頃な酒場に入ると、白と紅のアオザイに、長い髪の毛はポニーテールに結わえている美女がいた。
「……ふーん、なるほど。世界樹攻略を小数精鋭でやってしまおうって訳かい」
「だけじゃないよ。信じられないかも知れないけど、SAOプレイヤーの話も嘘ではないと思う」
「そりゃ、そこのインプさんを見りゃ何となく分かるけどさ。……あたし的にはそんな一般人が知る由もないことを知ってるリアルの正体が気になるね」
「そこは気にしないでくれると助かるな。俺も君も命が危ない」
「……痛い子オチは?」
「なんなら君のお家に明日お邪魔しようかな」
「……オッケー。信用するから止めてくれ」
本気でやればできないこともないが、そんな簡単なことではない。
「じゃあ、付いてきてくれるの?」
「他ならぬセイン君の頼みだからなぁ、いいよ。ただし……」
アルセはビシッ、と音がしそうな勢いで指差す。俺を。
「レイ君、あたしと勝負しな。勝ったら、あたしがあの小娘《ヴィレッタ》を力ずくで連れてくるという特典をつけてあげる。負けたら……ウサミミでも付けてもらおうか。セイン共々」
……ヒースクリフの交換条件がいかに易しいものだったかを悟った瞬間だった。
「何で僕まで!?」
「パートナーだろ」
「はあ……」
にやりと獰猛な笑みを浮かべたアルセは酒場を出ると、広場に出ていく。よっぽど自信があるのか、目立ちたがり屋か……前者だな。
「レイ、絶体勝ってね!?」
「当たり前だろ」
にやっと笑うと俺も彼女に続く。広場まで来ると、彼女がふれて回ったのか、プレイヤー達で大きな円が出来ていた。
「あたしは拳でやる。あんたは別に剣使ってもいいよ。あ、そうだ決着は半分でいいよな。戻んの面倒くさいだろ」
「ああ、いいぜ。剣は……いいや」
ムラサメをセインに預けると無手で円の中に入る。
「へ~え?いいよ。あんた面白い」
ザッ、とアルセは構えをとった。見覚えがないことから、恐らく我流だろう。対する俺は無形の構え、隙が有りそうで実はない。全てを水の流れのように受け流す構えだ。
にぃ、と笑ったアルセが飛び出してくる。突き出された右拳を左手で受け、そのまま右斜め後ろに受け流す―――と、突然アルセが消えた。反射的に横へステップすると、空から強烈な踵落としが降ってきた。
「君、本当に人類?」
「あんたもどんな反射神経してんのよ」
互いに人外指定をし合ったふたりは一度距離を取り、再び激突した。
後書き
結論、レイ君にお説教は似合わない。今後やめるように。
レイ「いや、書いたのお前だから」
……はい。
というわけで、新たに2人の仲間ができました!よし、頑張ろう!
お詫び、
オリキャラについて、ストーリー上どうしても省かなければならなかったり、付け足す設定が今後、多数出てくるかもしれません。
その時は無許可で変えてしまいます。オリキャラを考えて送ってくれる皆さんは今後はこれらの点について、留意して下さい。
ご感想お待ちしてます。
アスナの親父さんの名前を間違えていたので、訂正しました。
直ってない所があったら教えて下さい。
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