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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第1話

 
前書き
まだ幼いから力のコントロールは未熟ですが、その気になったら数百の戦闘力は叩き出せます。 

 
悟林と悟飯が生まれて4年が経過し、2人は悟空に連れられた所には東の海に浮かぶ島の上に小さな家が建っている。

知る者は知る、亀仙人の家であるカメハウスだ。

そこに向かって一つの黄色い雲が飛んでいく。

黄色い帯を引き走っていく雲…筋斗雲は、カメハウスに辿り着くと、そのスピードを落とし…砂浜のすぐ上にぷかりと浮く。

筋斗雲の上に乗っていた人物が砂の上に立ち、中にいるであろう師匠と親友達に声をかけた。

「やっほーっ!」

すると、クリリン、ブルマ、亀仙人がカメハウスから出てきた。

「やあっ!」

娘を肩に乗せ、息子を抱きながら久しぶりの仲間に挨拶する。

「孫君!」

「悟空っ!」

久しぶりの再会に喜ぶ声が上がったのも束の間、ブルマの視線が2人の子供に向けられた。

「あらなあにその子達?」

「子守りのバイトでも始めたのか?いきなり2人なんて大丈夫なのか?」

「バイト?」

「バイトじゃねえよ。2人はオラの子だ」

悟空と悟林が互いに目を見合わせた後に悟空が2人の正体を暴露する。

「「「えええーーーーーーーっ!!!??」」」

「うわっ」

「おっと」

地面を揺るがすほどの大声に悟林は悟空の肩から落ちかけたが、咄嗟に悟空が支えることで落下は免れた。

「ありがとうお父さん」

「おう、そら、おめえ達、挨拶。」

「こんにちはっ!」

「こ、こんにちは……」

元気よく挨拶する悟林とは対照的に悟飯は小さくもしっかりと挨拶する。

「は、はい…こんにちは…」

「こっちの女の子は孫悟林、男は孫悟飯だ。」

「孫悟飯!?そうか、死んだ祖父さんの名前を付けたのか?」

「ああ」

「じゃあ、女の子は?チチさんが付けたのか?」

「それもオラだよ。おめえの名前をちょっとな」

「へ?」

「悟林(ごりん)…ああ、孫君とクリリン君だから悟林ちゃんね」

「な、何か照れるな…」

「何言ってんだ。おめえはオラの一番の仲間じゃねえか」

自分の名前が親友の子供の名前に使われているのは嬉しくもあり、照れ臭くもあった。

「し…しかしこいつはたまげたわい。ま…まさか悟空が子供を連れてくるとはの…」

亀仙人の呟きに内心同意しながらブルマは悟林と悟飯の前に立つと、屈んで目線を合わせる。

「2人共、今何歳かな?」

「4歳です」

「ぼ、僕も4歳です…」

「あらー、孫君の子供にしては礼儀正しいのね…それにしても悟林ちゃんって孫君やチチさんのどっちにも似てないわね」

「チチの奴がうるせえんだ。牛魔王のおっちゃんは、オラの父ちゃんか母ちゃんのどっちかに似たんじゃねえかって言ってたな…」

「ふーん」

悟空と悟林を見つめて、悟空の父母のどちらに似ていても顔立ちは整っているだろう。

「ということは、孫君のパパとママは結構良い男と女だったのね…まあ、私には及ばないだろうけど」

「………」

「「……?」」

ブルマの最後の一言にクリリンと亀仙人がずっこけ、悟空はこめかみに汗を一筋流し、双子は意味を理解出来ずに首を傾げた。

そしてブルマの視界に見覚えのある尻尾が入る。

「し…尻尾が…」

「ああ、はは…前のオラと一緒だろ!」

「ほ、本当だ…!」

悟空が2人の尻尾を懐かしそうに笑いながら見ているが、尻尾がある者の脅威を知る者からすれば笑い事ではない。

「ね、ねえ、その子達、特に妙なことがあったりしない?」

「た、例えば、満月の夜、何が変化はないか...?」

「満月の夜?さあなあ、オラんち早く寝ちまうから... 何で?」

ブルマと亀仙人の問いに悟空は疑問を感じながらも答える。

何故そんな質問をするのか分からない悟空は逆に尋ねた。

「い、いや、何でもない!それならええんじゃ!」

「な、なあ悟空。この子達もお前みたいに強いのか?」

「ああ、悟林はかなりの力を持っててよ。勉強や手伝いの合間に鍛えてやってんだ。悟飯も…悟林と同じでかなりの力持ってるはずなんだけどなー。オラが悟飯を鍛えてやろうとすると怒るんだ。悟林の時も悟林とチチの奴、大喧嘩したしなー。」

話題を逸らすようにクリリンが尋ねると、娘の頭を撫でながら悟飯を鍛えられない不満と、次は娘と妻の大喧嘩を思い出してか複雑な顔をした。

「そ、そうか…大変だな…でも勿体ないよな。よーし、悟林ちゃんだっけ?武道家の先輩としてどれくらいか見てやるよ。俺に一発パンチしてみて」

「良いの?怪我しない?」

「大丈夫さ、信じて思いっきり来い!」

「うん!」

次の瞬間、悟林の小さな拳はクリリンの眼前に迫り、慌てて顔を逸らす。

僅かでも顔を逸らすのが遅れていれば顔面にパンチを喰らって確実に吹き飛ばされていただろう。

「…………」

「凄ーい!じゃあ、もっと行くよ!」

今度はラッシュを繰り出すつもりなのだと判断し、クリリンは慌てて腹を押さえた。

「わわっ、ちょっと待った……き、急に腹が痛くなっちゃってさー。今日はこれでおしまい」

「えー」

膨れる悟林だが、冷や汗を流し、流石悟空の娘だとクリリンは表情を引き攣らせながら思った。

「ほほ、悟空の武道家としての素質は確実に娘に受け継がれたようじゃのう」

「だろ?実はオラ、悟林の成長が結構楽しみなんだ。悟飯も鍛えてやりてえけど、悟飯は偉い学者さんになりてえみてえだし。」

「へえ、孫君の子供なのに学者さんねえ…何でまた?」

「お父さんの影響なんだよねっ」

「「「へ?」」」

予想外な悟林の言葉にクリリン達の視線が向けられるが平然としている。

どうやら父親の胆力も娘に継承されたようだ。

「お父さん、私と悟飯と一緒にパオズ山の色々な所に連れていってくれるの。見たことのないお花が咲いてる場所や恐竜の卵が孵りそうとか、食べられる物や食べられない物。お薬になるものとか…色々教えてくれて、もっとたくさん知りたいから学者さんになりたいってお母さんに言い出したんだっけ?」

「う、うん…」

恥ずかしそうに俯きながら人差し指をつつきあいながら肯定した。

「そっかー、それにしても学者になりたいって切欠がお前なのが意外だよ」

「そうか?」

「そうだよ、何だ…お前も結構良い父親してるじゃないか」

悟空が2人に知識を与えてることについては驚いたものの、悟空は幼い頃からパオズ山でずっと暮らしていたのだ。

山奥で生きるために培った生きた知識は相当な物だろう。

「はっはっは、あの世間知らずで子猿のようじゃった悟空が一端の父親になれたようで何よりじゃよ。あの跳ねっ返り娘も中々の教育ママさんなようじゃし。」

世間知らずで奔放な悟空が父親なのだから寧ろ子供達には厳しいくらいの母親が必要だろう。

「ねえ、今気がついたんだけど、悟林ちゃんと悟飯君の帽子に付いてるのドラゴンボール…!?」

「ああ、悟林には三星球。悟飯には四星球だ。四星球は祖父ちゃんの形見だからな!探しだして付けてやった。後、六星球も見つけて家に置いてあるぞ」

「懐かしいわね、ドラゴンボールか…」

和やかに談笑する悟空達だが、それは次の瞬間壊されてしまう。

悟空がここから少し離れた場所で恐ろしく強大で邪悪なパワー…気を感じ取ったのだ。

険しい表情を浮かべた悟空にクリリン達が動揺する。

「な、何だ!?どうしたんだ?悟空…」

「な、何かこっちにやって来る!何か…!!」

クリリンが尋ねるが、悟空から聞いた言葉にクリリンも悟空の見ている方角を見つめる。

「え…?何か来るって?」

「ヤムチャかしら…」

不機嫌そうにブルマは悟空の見ている方角を見つめる。

「す…凄え…凄えパワーを感じる…!!な…何だってんだ…!?………来たっ!!」

「あっ!」

筋斗雲よりも速いと思われるスピードでやって来たのは妙な装備で身を包んだ長髪の男だった。

「ふっふっふ... 成長したな。だが一目で分かったぞ、カカロットよ。父親そっくりだ。」

「へ!?」

「な、何だよこいつ...」

突然現れた男と聞き慣れない名前に悟空とクリリンは困惑した。

「カカロット、この星の有様は何だ。人類を死滅させることが貴様の使命だったはずだ。一体何を遊んでいた…!」

「ねえ、あんた何処の誰か知らないけど、帰って帰って!しっしっ!んもう…昼間っから酔っぱらってちゃ駄目だったら」

気の感知が出来ないクリリンは男を酔っ払いと判断して追い返そうとする。

「クリリン!近寄るなっ!!」

悟空が止めようとするが既に遅く、クリリンは弾かれてカメハウスに激突した。

「クリ…!貴様っ…!!」

悟空が男に向かって振り返った時、クリリンを弾き飛ばした物の正体が分かった。

「し、尻尾…!!」

かつての自分にあり、娘と息子に受け継がれた尻尾が男にはあった。

クリリンを吹っ飛ばした男の尻尾に悟空は驚く。

昔、修行の旅をしていた時も自分と同じ尻尾を生やした人間などどこにもいなかったからだ。

「し…尻尾だ…!こ…こいつにも尻尾が、ある…!」

「ふふふ…やっとこの俺の正体が分かったようだな…」

「正体…!?どういうことだ…!」

男の言葉に悟空は聞くが、悟空の言葉に男は表情を険しくする。

「カカロット…貴様、そんなことまで忘れてしまったのか…!?何ということだ…!おい!以前頭に強いショックを受けたことがあるか!?」

「オラはその、カカ何とか何て言うおかしな名前じゃねえぞ!孫悟空だ!!」

「質問に答えろ!幼い頃などに頭を強く打ったこととかあるのか!?」

「…ある!オラは覚えちゃいねえが、うんと小せえ頃に頭を打った…!今でも傷が残ってる…」

男の問いに悟空は古傷のある頭に触れながら肯定する。

「くそ~!やはりそうだったか…!」

「だけどそれがどうしたって言うんだ!」

「…悟空よ…その昔、死んだ孫悟飯が言っておった…尾の生えた赤ん坊を拾ったが、性格が荒くどうにも懐こうとはせず、ほとほと困り果てていたそうじゃ…だが、ある日誤って谷に落ち、頭を強打して死にかけたが、信じられん生命力でその赤ん坊は助かったらしい。おまけにその後、性格の荒さは消え、大人しい良い子になったと言う…」

今は亡き孫悟飯老から聞いた悟空の過去を語る亀仙人。

「ちぃっ!!」

「そ、それがオラか…!?」

「…うむ…」

それを聞いた男は舌打ちし、悟空も動揺しながら亀仙人に尋ねると肯定する亀仙人は少しの沈黙の後に肯定した。

「…そ…それってどういうこと?あ…あいつ、孫君と何か関係があ…あるわけ?」

双子を庇いながら話を聞いていたブルマはあの男が何故悟空に拘るのか分からず、男を見ながら言う。

「…お、おめえ一体誰だ!何者なんだ!!」

「何もかも忘れてしまったとは、厄介な野郎だ。いいだろう思い出させてやる。これから貴様にも色々と働いてもらわねばならんからな…」

「う…うくくく」

尻尾を腰に巻き付けると、クリリンは気絶から復帰し、何とか起き上がった。

「大丈夫か!?クリリン」

「あ…ああ…何とかな…気を付けろ悟空…あ…あいつ普通じゃない…」

「うん…そうみてえだな…こうやって向かい合ってるだけでも正直言って怖いぐらいだ…こんなこと初めてだ…」

クリリンが隣に移動して悟空に注意を促すと、悟空も冷や汗を浮かばせながら同意し、今までにない恐怖に動けないでいた。

「教えてやる!まず貴様はこの星の人間ではない!生まれは惑星ベジータ!誇り高き全宇宙一の強戦士族サイヤ人だ!!」

「なな…何じゃとお…!!」

悟空の正体に全員が驚愕し、ようやく出た亀仙人の言葉も震えていた。

「そしてこの俺は…貴様の兄、ラディッツだ!」

ラディッツと名乗った男は自分を悟空の兄だと言った。

つまりそれはブルマが庇っている双子の叔父と言うことになる。

「ご…ご…悟空の…あ…兄貴だって…!?」

「きょ、兄弟…!?う…嘘…!」

クリリンとブルマが唖然となるが、次の瞬間悟空が否定する。

「出鱈目だっ!出鱈目を言うなっ!!」

「そ、そうだ!悟空が宇宙人なら何で地球にいるんだよっ!」

「ふっふっふ…答えは簡単だ。カカロットはこの星に住む邪魔な人間共を絶滅させるために送り込まれたのだ!我々サイヤ人は戦闘民族だ。環境の良い星を探し、そこに済む者を絶命させてから適当な星を求めている異星人達に高く売るのが仕事だ。戦闘力の高い奴らのいる星へは大人の戦士が直接乗り込むが、この星のようにレベルが低い所にはお前のように赤ん坊を送り込む。幸いなことにこの星にも月があるしな…お前1人でも数年かければ充分に邪魔者を一掃出来たはずだ…命令さえ覚えておったらな!」

「も…もしそれが本当のことだったら、ひ…酷え奴らだ…無茶苦茶だよ…ピッコロが可愛く見えらあ……」

赤ん坊すら利用する冷徹さや、星の住人を根絶やしにした上に売り飛ばすと言うサイヤ人の所業にクリリンは思わず呟く。

「………おい、ここには月があるから何で幸いなんだ…?」

「惚けるな…月が真円を描く時こそが我々サイヤ人の本領を発揮出来る時ではないか!」

「「「…あ…!」」」

それを聞いたクリリン達の脳裏を過ぎったのは満月を見て大猿となった悟空であった。

つまり、あの大猿の姿はサイヤ人の能力だったというわけだ。

「何のことかさっぱりだ!」

「何!?」

しかし、自分が大猿になったことなど知らない悟空にはラディッツの言っていることは理解出来ない。

そしてラディッツも悟空に尻尾がないことに気付いた。

「!!ま、まさか…!貴様、尻尾は…!尻尾はどうしたっ!?」

「ずっと前に切れて無くなった!」

正確には神様に切られて二度と生えない処置を施されたのだが、ラディッツにはそこまで説明する義理は悟空にはない。

「何ということだ…!愚か者め~…!道理で貴様がこの星の者共と仲良くしていられるわけだ…!」

「もういいっ!オラが他所の星から来た何とかって奴だろうが、おめえが兄ちゃんだろうが関係ねえ!!クリリンの言う通りだよ!そんな奴らは最低だ!!オラはここで育った孫悟空だ!とっとと帰れ!!」

「そうよそうよっ!」

「そう言うことじゃ…過去はどうあれ、今の孫悟空は誰よりも立派な地球人なんじゃ」

「悟空はな!この世界を救ったぐらいなんだぞ!帰れ帰れ!!」

悟空の言葉にブルマが同意し、亀仙人とクリリンも続くが、ラディッツは笑みを深めるだけだ。

「ふふふ…ところがそう言うわけにはいかんのでな…サイヤ人は元々少数民族だった上に惑星ベジータが巨大隕石の衝突で爆発してしまったのだ…。ほとんどのサイヤ人は宇宙の塵と消えた…俺達の父親や母親もな。残ったサイヤ人はお前を含めてもたったの4人しかいないのだ!この俺ともう1人は他所の星を攻めていて助かった。そして後1人はお前のように星に送り込まれていたのが幸いした…ついこの前、非常に高値で売れそうな良い星が見つかってな!そこを攻めたいのだが、3人ではちょっと苦戦しそうなんだ……そこで思い出したのがカカロットのことだ。お前はまだ戦闘力が完全ではないが、3人に加わってくれれば何とかなる…目を覚ませカカロット!楽しいぞ!サイヤ人の血が騒がんか!?」

「馬鹿言ってろ!そんなこと、オラ死んだって手を貸すもんかっ!!」

ラディッツがどれだけ言おうと悟空は従うつもりなどない。

そんな反抗的な態度を取る悟空にラディッツは腕を組みながら口元を歪めた。

「ふ…なるほどな…さっきから気になっていたのだが、後ろにいる2人はお前の子ではないのか?」 

ラディッツが親指でブルマに庇われている双子を指差す。

「!!」

「ち、違うっ!!」

「惚けても無駄だ。あの尻尾は何だ?サイヤ人の血を引いている証拠じゃないか」

双子にはサイヤ人の特徴である尻尾が生えている。

サイヤ人であるラディッツに悟空の言葉は容易く破られた。

「何だってんだよっ!!」

「父親のお前がなかなか聞き分けが悪いでな。ちょっと2人を貸してもらうとするか…」

それを聞いた悟林はブルマの腕を抜け出して悟飯を守るように前に出た。

「ちょ!?悟林ちゃん!」

「お姉ちゃん!」

「ほう、流石に勇敢なサイヤ人の血を引いているだけはあるな」

目を吊り上げて威嚇する悟林にラディッツは笑みを浮かべた。

「悟飯に近寄るなっ!!」

「ふん……その髪…その顔……お袋に似ている」

「…?お袋…おめえの母ちゃんに悟林が似てるのか?」

ほんの僅かだけラディッツの威圧感が和らいだ感じがした悟空はラディッツの発した言葉に聞き返した。

「俺だけではない、お前の母でもあるんだぞ。お袋は息子の俺から見ても甘かった。サイヤ人の生業である戦闘を苦手とし、誇り高きサイヤ人の中でも底辺と呼ばれる下級戦士以下の、最底辺とも言える非戦闘員に自らなった。サイヤ人の癖にどこまでも甘かったな……まあいい、貴様の娘と息子を借りていくぞ」

威圧感が元に戻り、2人に向かおうとするラディッツを悟空は構えた。

「それ以上近寄ってみろ!ぶっ飛ばすぞっ!!」

クリリンと亀仙人も構えるが、ラディッツは一瞬で悟空との間合いを詰め、強烈な膝蹴りを喰らわせた。

防御すらろくに出来ないまま、悟空は吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。

「お父さん!?」

「…が……!うあ…あああ……!」

悟林はあの強い父親があっさりと吹き飛ばされたことに驚愕する。

「お父さーんっ!」

「おっと」

「「………」」

クリリンと亀仙人はラディッツのスピードと悟空が一撃でやられたことに目を見開く。

ラディッツは悟空に駆け寄ろうとした悟飯の首根っこを掴み、悟林も同じように捕まえた。

「放してよっ!」

抵抗する悟林にラディッツは笑みを浮かべた。

「ふん、気の強いところもお袋にそっくりだ。だが、お袋と比べてサイヤ人らしく随分と好戦的なようだ。カカロットよ、子供は預かっておく。生きて返して欲しければ兄の命令を聞くんだな…」

「ぐ…ぐぬぬ…」

「ご…悟空が…たったの…一撃で…」

「1日だけやるから苦しんで考えてみるがいい。まあ、仲間に加わるしかないだろうがな。ただしその証拠を見せてもらうぞ…なあに、簡単なことだ。明日のこの時間までにこの星の人間を取り敢えず100人ほど殺してここにその死体を積んでおけ。聞こえたな、明日を楽しみにしているぞ。弟の子供だ、出来れば俺も殺したくはない。ふっふふふ…」

「そ…そんなの…無茶苦茶だ…!」

あまりの冷酷な言葉にクリリンはそう呟いた。

ラディッツは起き上がろうとする悟空に向けてもう一度念を押す。

「いいか、もう一度念を押しておく。明日までにこの星の人間を100人殺してここに死体を積んでおくのだ。そうしたら我々の仲間に加えてやろう。勿論死体がなければ貴様の娘と息子は死ぬことになる」

「う…ぐ…」

「ひ、卑怯だぞ…!子供を利用するなんて…!」

「そ、そうじゃ!大体悟空に人など殺せるわけがないぞ…!」

ラディッツの非道なやり方にクリリンと亀仙人が批難するが、ラディッツが笑みを浮かべて振り返る。

「いいとも…こいつらが死んでも良ければ100人の死体を用意する必要はない。ただ…この星の人間共はどのみち近いうちに滅びる運命だぞ…今度の星を攻め落としたら次のターゲットはこの星に決めた!」

「い!?」

「な、何じゃと…!?」

「ふっふっふ…この星の奴らなど我々サイヤ人の3人にかかればたったの1ヶ月で絶滅出来るだろう。カカロットが今100人殺してみせても結局は同じことではないのか…?分かったなカカロット!どう足掻いても貴様はこの兄達の仲間に加わるしかないのだ!」

「こ…子供をか…えせ…!」

泣き喚く悟飯と抜け出そうと暴れる悟林に悟空が手を伸ばそうとする。

「いい返事を期待しているぞ!貴様のためにもだ!逆らおうなどとは考えても無駄だぞ!貴様の未完成な戦闘力では到底この兄には敵わんのだからな!」

「お父さーん!!」

ラディッツが双子を抱えながら空を飛ぶと、悟飯が泣きながら悟空に手を伸ばす。

「放してっ!放してってばっ!」

「ご、悟林っ!悟飯ーーーっ!!」

手を伸ばす悟空を嘲笑うように悟空とラディッツとの距離は離れていく。

「じゃあな!明日を楽しみにしているぞ!ふははははははっ!!」

高笑いしながらラディッツはカメハウスを離れていく。

「うわぁぁあーーん!お姉ちゃーん!」
 
同じくラディッツに捕まっている悟林に向かって、悟飯は一生懸命手を伸ばしたが、悟林は手を取って少しでも安心させたかったが、ラディッツに邪魔されて掴めない。

「悟飯っ、大丈夫だよ、お姉ちゃんが守ってあげるからね…っ」

ラディッツは目的地についたのか、丸い宇宙船らしき物の近くに降り立つと、悟林だけを地面に放り出し、泣き喚く悟飯を一喝した。

「うるさいぞ!いつまでもめそめそしおって!お前も勇敢なサイヤ人の血を引いてるんだぞ!同じサイヤ人とは言え男が女より気弱など恥もいいところだ!!この中に入ってろ!」

宇宙船の中に悟飯を放り込むと、ぴったりと閉じてしまう。

そこに走って行こうとした悟林の前にラディッツは立ち塞がる。

「悟飯を返してっ!」

「そんなに弟が大事か?」

「当たり前だよ!」

勢いをつけてラディッツの横を通り過ぎようとしても妨害されて吹き飛ばされる。

「……私達をどうする気なの?」

「カカロットが仲間になるならよし、そうでなければ殺す」

悟空が本当に仲間になると思っているのか。

父の人となりを幼いながら知っている悟林からすれば絶対に有り得ない。

兄というのは名ばかりの兄弟だ。

敵意を剥き出しにする悟林にラディッツは口元を歪めた。

「カカロットが俺達の仲間になるのなら、貴様もついてくるがいい。出来れば弟の子供を殺したくはないんでな、混血とは言えサイヤ人の生き残りだ。それに貴様もこいつもまだ幼い、サイヤ人らしい教育をしてやればマシになるだろう」

「お父さんも私達もお前の仲間になんてなるもんかっ!!」

「ならば死ぬだけだ」

「お姉ちゃん!お姉ちゃーんっ!」

「だあっ!」

宇宙船から聞こえる弟の声に悟林は恐怖を振り払ってラディッツに殴りかかる。

「おっと」

ラディッツが悟林の拳を片手で受け止めると、鈍い音が響き渡る。

「っ!」

「…サイヤ人とは言えガキにしてはかなりのパワーだな。惑星ベジータが健在ならそれなりの階級を与えられたかもしれん。」

尻尾の一撃が悟林の顔面に直撃し、悟林は吹き飛ばされる。

「う…ううっ…」

悟林は鼻血を流しながらも何とか起き上がった。

「ほう、加減したとは言え起き上がったか。流石はガキとは言えサイヤ人。それなりに打たれ強いな」

「これでも喰らえ…か…め…は…め…」

「む?」

「波ーーーっ!!」

父からの手解きを受けて完成し、ラディッツに向けて放たれた渾身のかめはめ波。

「くあっ!」

放たれたかめはめ波に対してラディッツは構えることもなくそれを体で受け止めると戦闘服に小さな罅が入っていた。

「き、効かない…」

「この戦闘力……スカウターの故障か?いくらサイヤ人とは言えエリートでなければガキの段階でここまでの戦闘力はないはずだが…下級戦士のガキならば尚更…」

罅の入った戦闘服を見つめながら悟林の異常性にラディッツは警戒し、一気に間合いを詰めて腹に拳をめり込ませ、意識を刈り取った。

「スカウターの故障ならいいが、もし故障でないならばこのガキは始末した方がいいな…」

意識が無くなる直前にラディッツのそんな声が聞こえた。 
 

 
後書き
ゲームとかで見ると良くラディッツは勇敢とか一流とか言えたな… 
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