ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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第2話
前書き
師匠となるピッコロとの邂逅
サイヤ人って元々の狂暴さや命令とかの刷り込みもあるけど自立心が異常に高いですよね。
意識を失っていた悟林が目を覚ますと、ラディッツの宇宙船が壊れており、クレーターから抜け出すと父親が、悟空が胸に風穴を開けて倒れていた。
「お、お父さん…?お父さーんっ!!」
体に走る痛みに構わずに悟空に駆け寄り、娘の声に反応した悟空はゆっくりと振り返った。
「悟林…大丈夫か…?」
ボロボロと涙をこぼす悟林の頭に、そっと悟空が触れた。
徐々に冷えていく体、指先はとっくに冷たい。
口を開くと嗚咽になりそうで、何度も頷くと悟空は苦しそうに笑った。
クリリンが悟飯を抱き抱え、ブルマ、亀仙人が悟林と悟空の様子を見守っていた。
「へ、へへ……良かった……あいつに、酷いこと、されなかった、か?」
「う、ん……大丈夫だよ……」
今度はちゃんと声を出せた。
多少声が震えているけれど、それは仕方がない。
「泣くな、って……父ちゃん、すぐに……戻ってくっから……」
「う、ん…うん…」
「みんな…悟林達のこと…頼めるか…?」
「あ、ああ…任せろ。お前もドラゴンボールですぐに生き返らせてやるからな」
全員を代表してクリリンが答えると、悟空は安心したように笑った。
「へ、へへ…頼んだぞ…悟林…悟飯と母さんを頼んだ…ぞ…?」
「お父…さん…?」
自分の頭に乗せられていた手が自分の頭から力なく倒れた。
目を閉じて少しも動かなくなった悟空を見て、幼いながら父親の死を理解した悟林は号泣した。
亀仙人がそんな悟林の背中を撫でてやる。
死体を保存するために冷凍カプセルを用意しようと、ブルマが近寄ってきた時に、悟空の姿が揺らぎ、誰もが何事かと目を凝らす。
そして悟林達の目の前で悟空の体は消えた。
「お、お父さん!?消えちゃった…」
「神の仕業だろう。貴様も父親から聞いているはずだ、あの野郎、孫悟空を使って下らんことを考えてやがるな」
「神様って…ドラゴンボールを作った人?」
「そうだ。死人をどうこうするなど、神以外にやらんだろうからな…ぬぁっ!!」
目の前で無くなっていたはずの片腕が生えて、悟林は思わず涙が引っ込んだ。
「うわあ、蜥蜴の尻尾みたい…」
「あ、それ俺も思った」
悟林の例えにクリリンが同意した。
「貴様らはドラゴンボールを探せ……だが、そこの孫悟空の娘と息子は俺が預かる」
「え?」
「ちょ、ちょっと!何で2人を連れていくのよ!」
「さては2人を食べる気だな!」
「誰が食べるか!そこの2人は訓練次第で強力な戦力になる。1年後にやってくるという2人のサイヤ人と戦う戦力にな……そのために、俺が鍛える」
悟林の腕を掴み、クリリンから悟飯を奪い取る。
「あ、いやでも!悟林ちゃんは女の子だぞ!?」
「女でもこいつはそこらの奴より強い。ラディッツの鎧に最初に傷を付けたのはこいつだからな」
「そ、そうなのか?」
亀仙人が悟林に尋ねると、悟林は頷いた。
「全然効かなかったけどね………ねえ、おじさん。私…強くなれるかな?」
「貴様は孫悟空の娘だ。強くなれるに決まっている」
断言するよう言うと悟林は決意をしてピッコロを見上げて頼み込んだ。
「おじさん、お願い。私に修行つけて」
「いっ!?」
驚愕するクリリン達だが、ピッコロは悟林を見下ろしながら口を開いた。
「父親に鍛えてもらっているようだが、俺はあいつのように甘くはない。それだけは覚悟しておけ」
「はい!!お願いします!!」
「ちょ…ちょっと悟林ちゃん!?流石にまずいんじゃないかしら…」
「う…うむ…悟空や母親のチチに聞いてからでないと…」
「そんな時間の余裕はない!」
「亀仙人のお爺ちゃん。お母さんによろしく言っておいて」
さらりと亀仙人にとんでもないことを言い放つ悟林であった。
「では1年経ったらこいつらと共に貴様らの家に行く。孫悟空が蘇ったら楽しみに待っていろと伝えておくんだな」
それだけ言うと、ピッコロは双子を抱えて飛び立った。
「あ…あ…!」
「………」
「知ーらない、私知ーらない!」
「悟空に鍛えてもらってる悟林ちゃんはともかく、弟の方は死んじゃうぞ…!運が良くても不良になる…!お…怒るぞ、悟空とチチさん…」
クリリンがピッコロが飛んでいった方向を見つめながら呟いたのであった。
そしてしばらくして、ピッコロが口を開いた。
「孫悟空の娘」
「何?」
「弟の方は本当に武術を教えられてないのか?」
「うん、お母さんも反対してたし、悟飯も怖がりだから。お父さんは残念がってたけどね」
「チッ、基本すら知らないのか…まあいい、やるならば徹底的にだ」
池のある場所に降り立ち、悟林はピッコロからするりと降りると未だに気絶している悟飯に声をかける。
「悟飯起きて、悟飯ーーーっ」
「いい加減に目を覚ませ、孫悟空の息子よ」
ピッコロも声をかけるが悟飯は目を覚ます気配がない。
「起きないね…」
「チッ!」
「あっ!?」
ピッコロは悟飯を池に落とし、それを見た悟林は慌てて悟飯を引っ張り上げた。
「ぶはっ!げほっ!げほっ!」
「大丈夫、悟飯?」
水を飲んだのか咳き込んでいる悟飯の背を擦ると、ようやく落ち着いたのか悟飯は悟林を認識した。
「はあっ、はあっ…お姉ちゃん…!?」
「ほら、悟飯。水から上がろう、あの人が私達を鍛えてくれるんだってさ」
「え!?」
悟林が指差す方向を振り返るとピッコロが2人を見下ろしていた。
「ほら、お父さんから聞いてたでしょ?あの…」
「ひっ、だっ、誰なのっ…!?」
「だからお父さんの昔話で教えてくれたピッコロさん」
「お、お姉ちゃん!怖いよーっ!」
悟林の後ろに隠れる悟飯。
そんな弟の姿を見ながらピッコロを改めて見上げる。
「いや、そんなに怖がるくらい怖い…かなあ…?私達の伯父さんよりは怖くないと思うけど…」
悟林にとって怖い人ランキングでぶっちぎりの1位は今のところ伯父のラディッツである。
「孫悟空め…極端な育て方しやがって…!」
姉弟のあまりにも正反対な反応に、極端すぎる育て方をした悟空に思わず呟いてしまったピッコロであった。
取り敢えず悟飯は悟林に引っ張られて池から上がり、悟林と悟飯はピッコロの話を聞くことになった…相変わらず悟飯は姉の背中にくっついてるが。
「娘の方は知っているが、まずお前の父は死んだ!少しは覚えているだろう、あの男を倒すために犠牲になったのだ」
「っ!ほ、本当?お姉ちゃん…?」
「………うん」
ピッコロの言葉を信じたくなく、悟林に尋ねてもピッコロの言葉を肯定された。
「お…お…お父さんが…」
「おっと泣くなよ!首の骨をへし折るぞ!」
泣きそうになる悟飯に拳を振り上げるピッコロ。
「泣かないで悟飯、大丈夫だよ。お父さんはドラゴンボールで生き返れるから」
「ひっく…ドラゴンボール…?」
姉の言葉に悟飯は何とか泣き止んだ。
「そうだ、父親に聞いて知っているだろう?お前の姉の言う通り奴の仲間が集めて生き返らせるだろう。しかし問題はそんなことではない。お前達を拐ったあの恐ろしい奴は何とか始末をしたが、1年後に奴よりもっと恐ろしい仲間が2人やって来るらしい。そうなったら孫悟空が生き返ったところで俺と奴だけではまるで勝ち目はない!お前とお前の姉の力が必要だ!修行で戦術を身につけ、共にこの地球を守れ!」
「地球を守る…良く分かんないけど…あんな悔しい思いはしたくないから私…頑張るよ!」
地球を守ると言われても実感はあまり湧かない。
しかし、ラディッツから弟を守れず、手も足も出なかったこと、悟空から弟と母親を任されたことが悟林のやる気に火を点けた。
それに、何故かは分からないが、ラディッツよりも恐ろしい相手と聞いて…何故か気分が高揚するのだ。
それがサイヤ人の性質であることなど今の悟林は知る由もないが、悟林の返答を聞いてピッコロは軽く頷き、次に悟飯を見つめた。
視線を向けられた悟飯はビクリと震えた。
「ぼ、僕も…!?そ…そそ…そんな…無理だよ…僕、お姉ちゃんみたいに闘えないよ…!」
「悟飯、お父さんが悟飯にはかなりの力があるって私と修行する時に言ってたよ。」
「その通りだ。お前は気付いていないようだが、お前の秘めたるパワーは姉弟揃って相当な物だ!特にお前は姉よりも爆発力がある。だから修行でそのパワーを引き出し、有効に使えるようにしろ!」
「う…嘘だ…ぼ…僕、そんな力ない…」
「……でも悟飯、前に森に遊びに行って崖から落ちて岩にぶつかりそうになった時、岩を砕いてたよ?悟飯は覚えてないようだけど」
「だそうだ…何なら証拠を見せてやろう」
「なっ、何するのっ!?」
ピッコロが悟飯の頭を掴んで持ち上げる。
悟飯が痛がっているが、ピッコロは岩の方を向いた。
「ね、ねえ…ピッコロさん…何を…」
「証拠を見せてやるんだ」
「あっ!?」
岩に向けて勢い良く放り投げられた悟飯。
「わーーーっ!!お姉ちゃーーんっ!!」
「ご、悟飯ーーーっ!!」
「(さあ、秘めたる力を見せてみろ…!岩に叩き付けられるぞ!)」
次の瞬間、悟飯の顔付きが変わり、全身にエネルギーを纏ってのエネルギー波が岩に炸裂した。
「う、うわっ!?」
あまりの破壊力に悟林は吹き飛ばされそうになり、ピッコロの足にしがみついて何とか吹き飛ばされずに済んだ。
「す…凄い…悟飯…」
「(お…驚いた…こいつは想像以上だ…)」
大岩が跡形もなく消し飛んでいるのを見て悟林とピッコロは呆然となっていた。
「………」
「悟飯!凄い!凄いよ!時々凄いパワー出してたけど、これなら修行すれば絶対に凄く強くなれるよ!」
興奮しながら呆然としている悟飯の元に向かう悟林。
「(複雑な気分だぜ…俺は将来最も恐ろしい敵になるかもしれん奴を育てようとしている)」
「こ…これ、僕がやったの…!?」
「そうだよ悟飯!こんなに凄い攻撃出来るならお父さんとの修行に連れて行けば良かったなー」
「だが、それは一瞬だけだ。相当に感情が昂った時にだけ本来の秘めたる力を発揮する…しかしそれはほんの一瞬でしかない。それではお前にすら勝てん…この俺が闘い方を叩き込んでこいつを最強の戦士にしてやる。分かったな…」
「だってさ、良かったね悟飯」
「お、お姉ちゃん…でも僕…武道家になんかなりたくない…え…偉い学者さんになりたい…」
「あ、そうだった…悟飯の将来の夢は学者さんだったね」
弟の火事場の馬鹿力に感動してすっかり失念していた。
「なるがいいさ、ただし1年後にやってくる2人のサイヤ人を倒してからだ。奴らは地球人を絶滅させるつもりだ。そうなっては将来も糞もないだろ」
「だ…だって僕…怖い…」
今まで山奥と言う閉鎖的な場所で父母と姉に守られて愛情を注がれて生きてきた悟飯。
悟林のように武術に関心を持つこともなければ、寧ろ痛くて怖いものと忌避してきた。
姉に助けを縋ろうとしても普段は優しい姉も今回ばかりは厳しかった。
「悟飯…私達が何とかしないとお母さんもお祖父ちゃんも殺されちゃうよ?お父さんが死んじゃったから、ドラゴンボールで生き返るまでお母さんとお祖父ちゃんを守れるのは私達しかいないんだよ?」
「その通りだ。サイヤ人からすればお前の母も、大事なものもゴミ屑でしかない。時間がない、早速始めるぞ!さっさと上着を脱げっ!!」
悟飯は慌てて上着を脱いで、悟林がそれを受け取って畳んで近くに置いた。
「ぼ…僕…お…お父さんが生き返るんだったらお父さんに修行を教えてもらいたい」
「ふん、残念だな。あいつは確かに強いがお前のような甘ったれの師匠にはまるで向いていない。人に対する厳しさが全くない…お前達姉弟の極端な育ち方を見ていれば良く分かる…」
「そ…そうかなぁ…?ところでピッコロさん、どういう修行をするの?」
周囲に比べる対象がいないので、自分達がどれだけ正反対なのか理解していない。
とにかく今は修行だと悟林がピッコロに尋ねた。
「まずは何もせんでいい。生きるんだ」
「「え…?い、生きる…!?」」
「そうだ、お前達は別々の場所で1人でここで無事に生き延びてみせろ。姉の方は3ヶ月、弟の方は6ヶ月だ。それまでに生き延びられれば闘い方を教えてやる
「3ヶ月かぁ…ここって食べ物とかあるの?」
「ここは野生の獣や自生している木の実もあり、水場も豊富だ。狩りをすれば食うには困らんだろう」
「そっかあっ!それなら大丈夫そう!!」
父親に数日間、家を離れての修行の時にサバイバルの方法を教えてもらったので悟林はそれなら何とかなると判断した。
楽天家なところは父親譲りかと悟林を見ていたピッコロは悟林を抱えて悟飯を振り返る。
「姉は俺が連れていく。お前はここで生き延びろ」
「ろっ、6ヶ月もぼ、僕1人でこんな所に…!?い、嫌だよ。僕もお姉ちゃんと一緒がいいっ!」
「甘ったれるな!何のために別々にすると思っている!お前は6ヶ月間を何とか生き延びてまずタフさを身に付けろ!精神的にも肉体的にもな!この地球の運命の鍵はお前達姉弟が握っているんだということを忘れるな。お前の姉は自分の力をそれなりに使いこなしている。弟のお前に出来んはずがない」
「頑張ってね悟飯。少し寂しいけど私も頑張るからさ!お父さんから野生の食べ物のこととか教えてもらったの覚えてる?それさえ覚えてれば大丈夫だよ!」
「お、お姉ちゃん!でも…でも僕…」
「悟飯、どんなに離れてても私は悟飯を感じ取れるんだ。悟飯もきっと私を感じ取れるようになる。だから頑張って」
「じゃあな。そうそう、ここから逃げ出そうと思うな。周りは砂漠地獄が広がるのみ…ここが天国に見えてくる程の死の世界だ…。」
「あ…そうだった…」
意識を失っていた悟飯と違って悟林はここに来るまでの道中をしっかり見ており、ピッコロの言葉に偽りがないことを悟飯に思い知らせた。
「行くぞ」
「うん、悟飯。お姉ちゃんはもう行くね」
「い、嫌だ!置いてかないでよお姉ちゃん!置いていくなんて酷いよ!」
「…………」
悟林は悟飯の言葉に迷いを見せたが、ピッコロが口を開いた。
「恨むんならてめえの運命を恨むんだな…この俺のように…」
それだけ言うとピッコロは悟林を抱えて飛び立った。
下から悟飯の泣き声が聞こえてきた。
「………」
「言っておくが、あいつの元に行こうなど考えるなよ」
「うん、分かってるよピッコロさん…私…強くなる…強くなりたい…!もう弱いままでいたくない…!」
「お前にも強くなってもらわねば困る。とにかくお前はここで三ヶ月生き延びろ」
川の近くに悟林を降ろして飛び立とうとしたピッコロを呼び止める。
「ピッコロさん」
「何だ?」
「動きやすい服とかないかな?ピッコロさん、魔法使いみたいなことが出来るってお父さんが言ってたんだ。これ、お出掛け用の服で少し動きにくいんだ。どうせなら動きやすい道着がいい」
「ふむ…服か…それくらいなら良いだろう。貴様の親父と同じデザインにしてやる」
指を悟林に向けると服が父親が着ていた亀仙流の道着に変わった。
「あ、変わった!ありがとうピッコロさん」
「ふっふっふ…刷られている文字は違うがな…」
「え?」
左胸の文字を見ると確かに“亀”ではなく“魔”の一文字が刷られていた。
「俺は自分の修行をせねばならん…もう行くぞ…貴様が3ヶ月の間を生き延びられたらこのピッコロ様直々に地獄の特訓をしてやろう…死んだ方がマシだったと思えるほどのな…覚悟しておくんだな」
「うん、頑張って生き延びるよ。行ってらっしゃいピッコロさん」
早速寝床と食べ物を探しに行った悟林を見て、双子でも扱いが違えばこんなにも違うのかとピッコロにある種の感心をさせた。
その後、悟飯の大猿化により、月は破壊されて念のために双子の尻尾は処分されてしまった。
因みに悟林は手頃な洞窟を見つけてそこを寝床にしていたので、月は見ずに済んだのだが、熟睡していたところを尻尾を千切られて1日眠れず体のバランスも変化したことで慣れるのに少し時間がかかってしまった。
後書き
主人公にはあの技も習得してもらうつもりです。
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