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レーヴァティン

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第二百十九話 四国分裂その九

「そうした意味でも」
「そうなったらいけないな」
「真にそうですね」
「糞爺ならまだいいな」
 ここで話しているその柔道家の老人である。
「あれ位なら」
「色々問題が、いえ」
 ここで夕子はこう言い換えた。
「問題だらけでも」
「それでもな」
「まだいいですね」
「とんでもない爺でもな」
「見るところはありますね」
「あの爺は有能な働き者だよ」
 それになるというのだ。
「言うならな」
「有能は有能ですね」
「とんでもなくてもな」
 人間としてそうした部分が多くともというのだ。
「まだな」
「いいですね」
「そして総合的に言ってな」
「有能な働き者ですね」
「ああ」
 そうなるというのだ。
「癪とも思うけれどな」
「癪ですか」
「屑じゃないからな」
「問題だらけでも」
「本当に妙に愛嬌があってな」 
 孫娘を私利私欲で利用してもだ。
「柔道さえしていたらよくてな」
「筋は通っているので」
「だからな」
 その為にというのだ。
「人間として越えてならない一線はな」
「守っていますね」
「だからな」
「まだいいですね」
「ああ、ただあの戦争でな」
 二次大戦でというのだ。
「死んでいたらな」
「よかったとはですか」
「思うな」
 実際にというのだ。
「そうは」
「そうですか」
「あんまりな時が多いのも事実だしな」
「それよりもですね」
「いい人が生き残ってくれたらな」 
「特攻隊とかね」
 清音は遠い目で述べた。
「本当に立派な人達がね」
「死んだからな」
「まさに散華だったわね」
「けれどああいう糞爺とかな」
「そうした人ばかり生き残って」
「そうなってな」
「日本は復興したけれど」
 そして繁栄したがというのだ。
「それでもね」
「これはっていう人達がいなくてな」
「そこが残念だったかも知れないわね」
「そうかもな、あの戦争はな」
「いい人が死んで」
「余計な奴が生き残った」
 久志は微妙な顔になって述べた。
「そうかもな」
「ええ、ただね」
「ただ、か」
「あの爺ちゃんでも生き残って」
「よかったかも知れないか」
「あれでまだいいでしょ」
「まあな、色々考えたけれどな」
 今の話でだ。
「それでもな」
「糞爺なのは事実でも」
「人材としてはな」
「いいでしょ」
「そうなるな、問題だらけにしても」
 このことはどうしても否定出来ないがというのだ、人格面での問題の多さはどうしても否定出来ないというのだ。 
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