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レーヴァティン

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第二百十九話 四国分裂その十

「まだな」
「帝国でも用いられるわね」
「結論はそうだな、まああんな奴そうはいないな」
「多くいたら困ります」
 源三は真顔で答えた。
「流石に」
「癖が強過ぎてな」
「一人でもあそこまで猛威を奮ったのです」
 作品の騒動の中心であった、兎角策を企みそれが物語を動かす主人公にとっては困ったことにそうなる要因となっていたのだ。
「それが一人でないとなると」
「考えるだけで嫌だな」
「一人でも頭を抱えますし」
「大勢になるとな」
「もうです」
 それこそというのだ。
「考えるだけで気が滅入ります」
「俺の祖父ちゃんあの漫画読んだけれどな」
 久志は自分の祖父の話もした。
「母方のな」
「それで何と言われましたか」
「こんな悪い奴はいないってな」
「まさにその通りですね」
「やっぱり糞爺でな」
 それでというのだ。
「そこまで言われる奴が大勢いたらな」
「本当に困りますね」
「俺でも頭抱えるな」
「私もです」
「いても一人だな」 
 精々というのだ。
「本当に」
「ナポレオンはタレーランとフーシェを使いこなせませんでした」
 英雄と呼ばれた彼はというのだ。
「そしてそれがです」
「ナポレオンが破滅した要因だったからな」
「彼等を使いこなすなぞ」
「まず無理だよな」
「ナポレオンが駄目だったのではなく」
「あの二人が酷過ぎたな」
 凄いのではなくだ。
「あまりにもな」
「はい、能力は極めて高く」
「知力と政治力がな」
「そして人格はです」
「少なくとも政治的にはな」
「最悪でした」 
 タレーランもフーシェもというのだ。
「政治的倫理観なぞ皆無でした」
「忠誠心もな」
「知力と政治力はナポレオン以上でして」
「性格がそんなのだとな」
「もうです」
 それこそというのだ。
「誰が使いこなせるのか」
「そうだよな」
「ナポレオンが使いこなせないのなら」
 逆に足を引っ張られて失脚している。
「誰もです」
「本当にどうしようもないな、俺もあの二人はな」
「使いこなせないですか」
「そんな自信ねえぞ、それであの爺ちゃんもな」
「用いるにしても」
「一人で腹一杯だよ」
 充分過ぎるというのだ。
「もうな」
「左様ですね」
「それでタレーランとかフーシェだとな」
 この二人はというと。
「どっちも無理だ、というか同じ時代に同じ国にいたくないな」
「私もです」
 源三は真顔で答えた。
「絶対に」
「色々酷い連中だからな」
「あのお爺さんもあんまりですが」
「二人もな」
「酷いので」
「人間自分以上の器の人間は使いこなせない」
 久志はここでこの言葉を出した。 
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