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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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アイングラッド編
追想編
  黒の剣士 01

 
前書き
追想編スタート!

何個になるかは未定です。 

 




最前線の55層にある俺の安宿には顔馴染みの客が来ていた。

腐れ縁過ぎる程の付き合いなので、いつもならばストレージから酒を出して一杯やるのもままある。

が、今日は部屋には何故か剣呑な空気が流れていた。



「ふむ、で?そのギルドの仇討ちの依頼を受けたはいいが、1人だと心細いから協力してくれと?」


「いや……まあ、心細いとは違うんだが……オレンジ絡みのことは、レイに一緒に来てもらうとてっとりばやいというか……」


「要するに速く解決して全線に戻りたいんだろ」


「まあ、な」


「かと言って手を抜いて後悔したくない、か」


「……お見通しか」


キリトが持ってきた案件はオレンジギルドにカモられたギルドの仇討ち。

唯一生き残ったリーダーが依頼は『あいつらを牢獄に送ってくれ!!』……何ともまあ、お優しいリーダーだ。



「いいだろう、『レッドギルド強行捕縛旅団(ブリゲイド)《紅蓮の夜》』……久々にお仕事だ」







_______________________









Side シリカ




「お願いだよ……あたしを独りにしないでよ……ピナ……」



35層《迷いの森》のダンジョンはモンスターはともかくとして、フィールドの特性は非常に厄介だ。
森は数百個のエリアに分割され、1分毎に隣接エリアの連結がランダムに入れ替わってしまう。迷わない為の現実的な案としては、主住区の道具屋で売っている地図を見ながら歩くしかない。

そんな森に好き好んで地図を持たずに入り込む者は中々居ない。

些細なことで仲違いしてしまったパーティーメンバー達とせめて出口まで一緒に行けば良かったと、今さら後悔しても仕方ない。

この世界での唯一の友であり、パートナーである《使い魔》フェザーリドラのピナの死は自分の奢りが招いたものだ。

襲ってきたモンスターは3体、交戦中にもう3体がやって来て、1匹を倒したものの、ついに追い詰められてしまった。

ピナが死に、自分のHPが赤くなっても死の恐怖は感じなかった。HPの残量にも気を止めず、残りの5体に無謀な特攻をかけようとしたその刹那――

暗い闇に栄える紅の剣閃が走った。

一撃で爆散する3体のモンスター。残りの2匹も同じように消滅した。

暗闇に目を凝らすと、そこに居たのは2人の男性プレイヤー。

1人は黒髪に黒いコート。さらに漆黒の片手剣を持っていた。

もう1人は銀髪にくすんだ赤色のコート。肩に大きな刀を担いでいる。



「……すまなかった。君の友達、助けられなかった……」



まず、黒衣の男が声をかけてきた。



「……いいえ……あたしが……バカだったんです……。ありがとうございます……助けてくれて」


男が歩み寄ってきて傍らに跪き、再び遠慮がちに声をあげた。


「その羽根だけどな、《心》アイテムのうちならまだ使い魔は蘇生できる」


「え!?」


「最近解ったことだから、あまり知られてないんだ。47層の《思い出の丘》っていう名前の割に難易度の高いダンジョンがあって……『ゴンッ』……いたぁ!?」


見ると、もう1人の男性プレイヤーがあの大きな野太刀の峰で頭をどついていた。


「……まずは移動だ。囲まれてる」


慌てて周囲を見渡すと、大小様々なモンスターが私たちを囲んでいた。


「ほら」


野太刀を持ったプレイヤーがそれを納め、その手を差し出して来る。


「え?」


「走るぞ。キリト」


「おう」


黒髪の剣士が剣を構えて突進の動作をとる……って、まさか!?

と、思ったときはすでに体が宙を浮いていた。

前方にいるキリトが道を切り開き、あたしの手を引いた男性プレイヤーがその間を駆け抜ける。

包囲網が二重三重になっているわけではなかったのでやがて、モンスター達は見えなくなった。








_________________________







35層の主住区に着くと、シリカがフリーとなったことを聞き付けたプレイヤー達が我先にと自分達のパーティーへ勧誘を始めた。

それらを丁重に辞退して行く内に道具屋からここ2、3日参加していたパーティーが出てきた。その最後尾にいた女性プレイヤーと目が合ってしまう。

彼女こそがパーティーを抜け出したそもそもの原因だ。



「あら、シリカじゃない」


「……どうも」


「へぇーえ、森から脱出できたんだ。よかったわね」


ロザリアというこのプレイヤーとはどうにも馬が合わないので、さっさと話を切り上げてたかったが、あちらにはそんなつもりはないようだ。


「あら?あのトカゲ、どうしちゃったの?……あらら、もしかしてぇ……?」


わざとらしく眉をつり上げて先を続けようとするロザリアの首筋にいつの間にか剣が添えられていた。


「お引き取り願おうか」


持ち主の身長程もあるそれを突きつけているのはまだ名前を知らない、銀髪のプレイヤーだ。


「な、なにさ!圏内で刀を向けられたって別に怖く……「黙れ」」


底冷えしそうな低く冷たい声でロザリアを制すと、剣を突きつけたまま続ける。


「雑魚に用はない。こっちは急いでるんだ。去れ」


「……覚えておきなさい」


殺気としか言い様のないほどの威圧感を出してる彼から関係のない周りのプレイヤー達も気味悪がり、避けていった。


「行こう、レイも」


私の肩をキリトさんが押してもう1人の男性プレイヤー――レイさん――に声をかけ、3人でその場を離れた。






____________________________











まず宿にしている《風見鶏亭》の一階のレストランに入った。


「じゃ、まず自己紹介からかな。俺はキリト」


「レイだ」


「あ、……あたしはシリカって言います。さっきは助けてくれてありがとうございました」


「ん、危なかったな。これから気をつけろよ。……でだ、ちょっと訊きたいことがあるんだが」


「は、はい。何でしょう?」


さっきの恐ろしげな雰囲気は何処へやら。レイさんはとても砕けた雰囲気で話しかけてきた。



「さっきの……女のプレイヤー、あいつは何て名前だ?」



「えっと……ロザリアさんですか?さっき助けてもらうまでは同じパーティーだったんですが、喧嘩してしまって、それで……」



「……ん、わかった。ありがとうな、シリカ」



「へ?あ……どういたしまして」



先程とのギャップのせいか、レイさんと話していると、間抜けな答えしか出来ない……。

キリトが持っていたウイスキーを開けてパーティー結成のお祝いをしていると、ふと先程の一件を思い出してぽつりと言ってしまう。



「……何で……あんな意地悪言うのかな……」



それに答えたのはキリトだった。



「君は……MMOは、SAOが……?」



「初めてです」



「そうか。――どんなオンラインゲームでも、キャラクターに身をやつすと人格が変わるプレイヤーは多い。善人になる奴、悪人になる奴……。従来はそれをロールプレイと言ったが、SAOは違うと思う」



一瞬、キリトの目が鋭くなった。



「今はこんな、異常な状況なのにな……。そりゃ、プレイヤー全員が一致協力してクリアを目指すなんて不可能だってことは解ってる。でもな、他人の不幸を喜ぶ奴、アイテムを奪う奴、――殺しまでするやつが多すぎる」



キリトの目に怒り以外の悲しみのような感情が映った。



「俺は、ここで悪事を働く奴らは、現実でも性根の腐った奴らなんだと思ってる。……俺だって人のことを言えた義理じゃないんだ。人助けなんてろくにしたことないしな。仲間を――見殺しに……「キリト」…」



急に割って入った穏やかな声にキリトがハッとした様子で黙った。彼が何か深い懊悩を抱えているのだと、おぼろげに悟ったが、それをいたわるような言葉が出てこない自分の貧弱な語彙がうらめしかった。

その代わりに、テーブルの上で握り締められたキリトの右手を、無意識のうちに両手でぎゅっと包み込んでいた。



「キリトさんは、いい人です。あたしを、助けてくれたもん」



レイが驚いたように片眉をつりあげ、キリトもそんな顔をしたが、すぐに微笑むと、言った。



「……俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」



途端に胸がキュッと苦しくなり、何故か心拍数も上がり始める。……これって、もしかして……?









_______________________











Side レイ




食事が終わり、宿の部屋に入るとキリトと意見交換をし始める。



「で、問題のホシとは接触出来たはいいが、どうすんだ?」



「何も考えなしに脅かしたのかよ!?びびって明日付けてこなかったらどうすんだよ……」



「それはないない。ああいうタイプの犯罪者は舐められたらやり返す。現実世界のヤンキー共と同じだ」



「そんなものなのか?」



「そそ。だからきっと問題ないと思うよ。おそらく。多分。maybe……」


「すごいあやふやな上に、段々と確信が無くなってるじゃねえか!?」


「気にすんな。完璧な人間なんてこの世にはいないのさ」


「なんでそんなに達観してんだよ!」


何時もの応酬をしていると、不意にドアをノックする音が聞こえた。

キリトが応えてドアを開けると、訪問者はシリカだった。



「ええと、その、――47層のことを聞いておきたいと思って!」



「ああ、いいよ。階下に行く?」



「いえ、あの――貴重な情報を誰かに聞かれたら大変ですし、……よかったら、お部屋で……」



………何ですと?



「え……いや……それは、そうなんだけど……レイ、いいか?」



「構わないが……」



そう答えつつ、ウインドウを操作し、温かい飲み物をオブジェクト化する。

2人に差し出すと、自分も一口飲む。



「きれい……。それは何ですか?」



「《ミラージュ・スフィア》っていうアイテムだよ」



キリトが出したのは青い水晶のような球体。それのメニューウインドウを操作すると、球体の上に円形のホログラフィックが出現した。

47層の説明はキリトに任せることにして、俺はキリトとじゃれついていた時から感じていた、そして今はドアの向こうで聞き耳をたてているプレイヤーに意識を移した。

キリトとアイコンタクトで意思を疎通し、足音を忍ばせながらドアを勢いよく開け、そいつに掴みかかった――が、寸前のところで逃げられた。


「追うか?」



「……いや、いい」



ドアを閉めると、ベットに横になり、寝る体勢に入る。



「あの……」



「ん?」



キリトは何かメッセージを打ち始め、俺は寝る体勢に入っている。


――ちなみに、ベットは2つ接する状態で並んでいるので、俺の手前にキリトとシリカが座っていることになる。



「いいんですか、放っておいて?」



「……状況がわからないままにあれこれ考えるより、こっちの方が戦力的に勝ってる時は罠にはまってから考えた方が効率的だ」



「えっと……」



あまりに適当な答えで不安になったのか、顔を曇らせるシリカ。


む……いかん。



「心配しなくてもいいよ。おにーさん達はけっこう強いよ?」



「なら……心配しません」



「ん、いい子だ♪」



柄にでもなくおどけた感じで安心させ、さらには頭をなでなでするという完全お子様扱いだったのにも関わらず、途中で目をトロンとさせると、そのまま――



「くぅ……」



およ?



「おーい、シリカー?」



ぽんぽん



「むにゅ……」



何このカワイイ生物



仕方なしに布団をかけて(もちろん、キリトの)やり、俺も寝入る。



「……って、俺は何処で寝るんだよ?」



「床」



「マジかよ……まあ、いいか」



「もしくは、ココ」



シリカの隣、つまり俺の居る場所を指す。



「……それは勘弁で……」



ていうかよくそんなところで寝る気になるな。と、ぼやくキリトは無視し、俺は意識を闇に落としていった。





 
 

 
後書き
あけましておめでとうございます。
今年もレイ共々よろしくお願いいたします。


ところで、VSラフコフやった方がいいですか?
「『朝露の少女』の時に中途半端に出てきて気持ち悪い~」って方はコメント下さい 
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