本領発揮

「いざって時はね」
「出て来てか」
「結果を出す」
「そうした娘だったんだな」
「そうよ、だから地味でもね」
　普段それでもというのだ。
「侮らないことよ」
「それで実力はわからないか」
「幾ら普段目立たなくても」
「それでも」
「そういうことよ、ここぞという時に実力を発揮する人もいるのよ」
　天はクラスメイト達にまた言った。
「だからね」
「それでか」
「幾ら普段目立たなくても侮るな」
「そういうことね」
「その通りよ」　
　こう言うのだった、そして。
　天はその奈央と一緒にカラオケに行った時にこんなことを言った。
「あんた好きな曲以外はね」
「歌ってもよね」　
　奈央も言う、二人で一緒にいるカラオケルームの中で。
「そんなによね」
「まあ普通ね」
「上手でも下手でもなくて」
「点数にも出てるけれど」
　カラオケのそれにというのだ。
「どうにもね」
「普通ね」
「ええ」
　実際にというのだ。
「そうよね」
「それはね」
　奈央も否定せずに述べた。
「私も思うわ。何か普通の時は」
「普通によね」
「やればいいって思って」　
　それでというのだ。
「どうしてもね」
「やる気はあっても」
「それでもよね」
「何かね」
「普通よね」
「いつもそうなのよね、けれど」　
　それがというのだ。
「何かこうやらなければいけない」
「そう思うとよね」
「そう思うと」
　それならというのだ。
「無性にね」
「やる気出るのね」
「ええ」
　実際にというのだ。
「それがね」
「それね、何といってもね」
「何といっても？」
「あんたのスイッチなのよ」
　天は注文したジュース、オレンジジュースを飲んでそれで喉を潤して歌う時に備えつつそのうえで話した。
「要するに」
「そうなの」
「もう本気になると」　
　その時にというのだ。
「本当にね」
「スイッチが入ってなの」
「いつも以上に力を発揮してね」
「頑張れるのね」
「世の中そうした人もいるのよ」
　自分が歌う曲を入力しつつ話した。
「そうなのよ」
「それが私なの」
「要するにね、ただね」
「ただ？」
「何ていうか」
　天は奈央にこうも言った。
「変わった性分ではあるわね」
「本気にならないとスイッチが入らなくて」
「本領が出ないことは」
　このことはというのだ。
「やっぱりね」
「そうなのね」
「ええ、どうもね」　
　実際にというのだ。
「私も思うわ」
「変わってるわね」
「個性でしょ」
　変わっているのではなく、というのだ。