少年は勇者達の未来の為に。
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鷲尾須美は勇者である 再臨の章
第四話
前書き
どしどし投稿していきます。
(なに・・・?とても暖かい・・・)
須美は目の前で起きた事に理解が追い付かなかった。
いきなりモナドから光が溢れたと思ったら、自分と蓮の周囲に黄金のバリアが張られていた。その光はとても暖かく、須美の心から恐怖心を忘れさせるほどだった。
「蓮!須美!無事なのか!?」
「何この・・・膜~?」
「ああ・・・銀ちゃん、のこちゃん・・・僕にも訳が分からなくて・・・」
とりあえずここから移動しようとなり、蓮が須美を支えながら後方に一時退避した。
「取り敢えずここまでくれば安全かなぁ・・・」
「そうだな・・・ふぃ〜」
「二人共やられちゃったかと思ったよ~。無事でよかった~」
「うん、ありがとう、二人共。それとゴメン。先走り過ぎちゃって皆ピンチになっちゃって・・・」
「気にすんなって蓮!それよりさっきのは一体何なんだ?」
「それがねぇ・・・何もわからなくて・・・必死に『守れ!』って思ったら出てきたんだ」
「「はえ~」」
後方に一時退避した四人は周囲の安全を確認した後に、話し始めた。
「でも、どうすればいいんだろう・・・防御しか出来ないなんて、普通に攻撃してもすぐに治っちゃうし・・・」
「あたしがまともに攻撃を当てられれば・・・でも水のせいで近づけなくてなぁ・・・」
蓮が聖剣の使い勝手の悪さに、銀がクリーンヒットすら当てられない事に悩んでいた。すると
「ねぇねぇれーくんさっきのやつもう一回出せる?」
「あ、うんやって見る」
僕が再び『守れ』と念じると周囲にバリアが展開された。
「おぉ~」
「スゲェ・・・」
「やっぱり、暖かい・・・」
みんなが感想を述べていると
パシュンという音とともに、バリアが消えた。
「出して置ける時間は2~30秒って辺りかな?それ以上は消えちゃうみたい」
すると園子は一人で考え込み、少し経った時。
「ピッカーンと閃いた!!」
「「うわっ!?」」
いきなり園子が声を上げ、蓮と銀が驚く。
「乃木さん・・・閃いたって何を?」
「ふっふっふ~それはね~すみすけ~」
「す、すみすけ?」
「あいつを倒す策が頭に浮かんだんよ~」
「「「本当!?」」」
「うん~それはね~」
敵がいなくなったアクエリアスはゆっくりと、しかし確実に神樹に近づいていた。大橋に差し掛かったその時。
「おっと、ここから先は」
「通らせないんよ~」
二人の勇者が立ちふさがった。
『まず、私とれーくんでアイツの注意を引くの。水流を二人で抑えるから、その隙にミノさんがでっかい一撃をくらわすんよ~』
『乃木さん、私は?』
『すみすけはあの水弾を打ち落として。多分水流だけで一杯一杯になっちゃうから~』
『よーし!銀様に任せとけ!』
『わかったわ、次こそは、やって見せる』
『それで~この作戦に必要なのが~』
『さっきのバリア、かねぇ』
『れーくん大せいか~い♪』
アクエリアスは再び、水流を放つ。それに合わせて蓮はバリアを展開し、園子も先ほどと同じように、槍を傘状に変形させ、二人で攻撃を耐える。
「・・・っ!」
「ふぬぬ~~っ!」
水流の威力は先ほどよりも上がっており、二人はどんどん押されていく。とどめとばかりに水弾を放とうとするアクエリアス。その瞬間、水弾が撃ち抜かれた。
「やった!当たった!」
須美の弓が正確に水弾を打ち落とした。
そして、その直後。
「銀ちゃんっっ!!!今だっ!」
「はぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
蓮の合図で上空から飛来してきた銀にアクエリアスは切り裂かれた。
「よっしゃあ!ってガボッ!?」
「銀ちゃん!?」
「ミノさん!?」
アクエリアスに一発食らわせる事に成功した銀だったが、直後アクエリアスは蓮達への攻撃を止め、銀に水球をくらわせた。
銀は頭がすっぽりと水球に収まってしまう。
「・・・ガボガボ!」
「・・・!のこちゃん!鷲尾さん!僕に合わせて!」
「ええ!」
「わかったんよ〜!」
頭を水球に閉じ込められた銀は身振り手振りで三人に合図をする。
意図を察した蓮が二人に合図する。
「これで、終わりだ!」
「えぇぇぇい!」
「外さない・・・っ!」
三人は銀が攻撃した部位へと攻撃を集中させた。
総攻撃を受けたアクエリアスはスゥっと消えていき、樹海の世界に花弁が桜吹雪のように舞い散った。
「これが、鎮花の儀?終わったの?」
「みたいだね〜」
「良かった・・・ってそういえば銀ちゃんは!?」
戦いが終わった事に安堵しているのも束の間。蓮達は周囲を見渡し、銀を捜索しようとした。その時。
「お〜い三人とも〜」
「銀ちゃん!良かった、無事?」
「ミノさ〜ん良かったんよ〜」
「三ノ輪さん・・・良かった・・・」
銀が大橋の向こう側から走ってきた。銀の安否が知れ、今度こそ本当に安心する三人。
「そういえば銀ちゃん。あの水の球からどうやって抜け出したの?」
「ああ、あれ?全部飲んだ!」
「ええ!?大丈夫なの三ノ輪さん!?」
「お腹大丈夫〜?」
「大丈夫だ!ただ・・・」
「ただ?」
「スゴイ変な味だったんだよ・・・最初ソーダで段々ウーロン茶味に変わっていってさ・・・」
「「「うわぁ・・・」」」
そんな事を話していると、いきなり周囲が光り輝いた。気がつくと四人は大橋が見える展望台に居た。
そこには祠があり、樹海化が終わるとその場所に出てくるようだ。
四人は初勝利を大いに喜んだ。
「ふいぃ〜・・・疲れた・・・」
帰宅した蓮は、家に着くなりベッドに身体を投げた。自宅に着いた途端、安心したのかどっと疲れが出てきたのだ。
あの後、僕たちは大赦の人に病院へ連れていかれ、傷の手当を受けた後、学校へと送られた。
銀ちゃんは『授業あんの!?嘘だろ・・・?』って嘆いていたっけ。まぁ僕もテンションかなり下がったけど・・・
それと、さっきまで。
『蓮君!大丈夫!?アーユーオーケー!?痛い所は何処!?遠慮しないで見せてホラホラホラホラ!』
義母の唯香にもみくちゃにされていた。というのもある。
(心配してくれるのは凄い嬉しいんだけど・・・ねぇ?)
ただ、よくよく考えてみれば唯香からすれば戦場に行った息子が帰って来たのだから過保護になるのも仕方がないのかも知れない。
(そういえばモナドのアレ・・・なんだったんだろう・・・)
『守れ』と念じたら出てきたあのバリア。どうやら勇者にならずとも使えるらしく、帰り道四人で色々試した。
移動できるのかとかどれくらい長く張れるのかとか・・・ただ勇者の時の方が長く張れるみたい。あと張っても動く事は出来たけど、勇者でも通り抜ける事は出来なかった。銀ちゃんがぶつかって痛がってた。
(後で・・・本とかで・・・調べてみよ・・・今は・・・ねむ・・・)
色々考えていた蓮だがついに限界を迎え眠ってしまった。
その日の夜中、蓮は白鳥家の書斎で今までの歴史が記された文書を読んでいた。
今現在、蓮はモナドの事を何も知らない。神樹様と共に世界を、人類を守ってくれていた存在。としかわからなかった。
白鳥家の初代当主は元々諏訪と呼ばれる場所に居た事。ある時、四国に巫女や諏訪の民共々四国に避難してきた事。その後四国にいた勇者と共に四国を守り抜いた事。西暦の歴史には詳しくなったがそこにモナドの事は記されておらず、誰が作ったのか。今まで誰が持ったのか。調べても調べてもそれはわからなかった。
「ずっとあったのにモナドのモの字すら記されてないってどういうことなんだい・・・」
そう愚痴を零してしまうほど、モナドの事は何も記されていなかった。
そんな時。
「夜更かしをしてる悪い子は誰だ~?」
「うわッ!?・・・なんだ唯香さんか・・・」
「あら、驚かしちゃった?それよりも何を調べてるの?」
「あー・・・実はモナドの事でして・・・」
「モナド?」
蓮は今日のお役目の事を、唯香に事細かに話し、実際にバリアも出してみた。モナドについて、一つでも情報が欲しかった。
「フーン、なるほどねぇ・・・バリア、か」
「はい、守れって念じたら出てきて・・・知らなかったからびっくりして」
「・・・・・アー、ごめんなさい。私貴方に伝え忘れてる事があったわ・・・聖剣のことで・・・」
「えっ!?」
「といっても名家に伝わる、聖剣の伝承・・・なんだけどね?お役目の事で頭いっぱいで・・・伝え忘れちゃってて・・・」
あっさりとわかり、驚愕する蓮。
(初めから唯香さんに聞けばよかったな・・・)
「教えてくれませんか?その、伝承の事」
「勿論、でも勇者の子たち以外の人に話しちゃノーよ?」
「わかってます」
「ならいいわ。それで、モナドはね?”思いを形にする剣”そして、"最後の希望"って伝えられてきたわ」
「思い・・・?」
「そう。でもそれがどんなものなのかは、私たちにもわからなかったの。でも今回のお役目でハッキリしたかもね」
(思いを形に、か・・・だからあの時、守れって言う僕の"思い"を形にしてくれたんだ・・・)
疑問を問う蓮に対し、唯香は答えた。これで一歩前進だ。謎は一つ解けた。"最後の希望"と言うワードが気になるが、今は気にしてもしょうがないだろう。
「あ!後もう一つ。その剣の文字の事なんだけど。昔持っていた人はそれをモナド紋章って呼んでいたらしいわ」
「紋章・・・?」
「そう。だからさっきのバリアは・・・名付けるなら『盾』紋章ってとこかしらね」
新たな情報がどんどん出てくる。モナドの伝承、モナドアーツの事。次の目的は決まった。
「なるほど・・・唯香さん、ありがとうございます」
「いえ、パワーになれたのなら良かったわ♪」
モナドの事が分かった蓮は唯香に礼を言い、部屋に戻り眠りについた。
翌日、クラスメイトからのお役目の内容などの質問を、のらりくらりとかわしながら過ごし、その放課後。帰る準備をしていた蓮に銀が声を掛けた。
「あっ。蓮!」
「うん?どったの銀ちゃん」
「あのさ、今日鷲尾さんから提案があったんだけどさ」
「提案?」
「うん。祝勝会をあたし達四人でやらないかって」
「へぇ・・・良いね。それ」
「だろ!?だからこれから蓮も行けるかなって」
ふと目をのこちゃんと鷲尾さんのいる方向に向けると、笑顔ののこちゃんと少し顔を赤らめた鷲尾さんが見えた。
鷲尾さんからの提案と言うのは少し以外だった。真面目で、それ故に自分達と少し距離を置いているようだった。そんな彼女が、勇気を出して誘ってくれたのだろう。断る理由なんて、僕には無かった。
「勿論、僕で良ければ、是非」
4人は祝勝会の場所として選んだ大型ショッピングモール、“イネス”へとやってきていた。
「イネス! それは砂漠に現れる巨大なオアシス・・・蓮に案内しようと思って結局出来なかった私の超オススメの場所さ!!」
「あー・・・僕も色々あったから・・・」
「そういえば白鳥君、いつも直ぐに帰っていたわね。何か用事が?」
「畑耕したり、お役目の訓練したりしてたんだ。それで時間が無くて・・・」
「へ〜って畑!?それが訓練なの!?」
「白鳥家ではそうみたい」
「そんな話は後にしなって! このイネスマニアの銀様が隅々まで案内をするからさ!ホラホラァ!」
「押さんといて押さんといて。今行くからさ」
「ミノさんミノさん。今日は祝勝会だから〜ご飯食べられる所に案内して欲しいな〜」
「了解!任せろ!」
というわけで銀ちゃんに案内されながら、イネスのフードコートへと向かう僕たち。
途中に『煮干し専門店』なるものがあった。誰が行くんだろう・・・あっ女の子が一人で入ってった。需要、あるんだ・・・
イネスのフードコートには、軽食からがっつり食べられる物、スイーツに至るまで揃っているその一角は、大人数が座れるように多くのテーブル席が用意されている。そのテーブル席の1つに、4人はジュースと銀オススメのジェラートを持って座っていた、のだが・・・
「先日、無事にお役目で勝利出来たことを、大変うれしく思います。えー本日は大変お日柄もよく、神世紀298年度勇者初陣の祝勝会という事でーーー」
固い。須美が始めたスピーチはとても固かった。思わず蓮が朝礼の校長先生の話を思い出す程に。
「長い!ジェラートが溶ける!かんぱーい!」
「あぁ!まだ言い終わって無いのに!」
まだ読み上げている途中だったが、我慢出来ず、銀はソフトドリンクを掲げ、須美は嘆いた。
「まぁまぁ、鷲尾さん。せっかくの祝勝会なんだからワイワイやろうよ。ね?」
「・・・まぁそう言うなら」
須美は渋々席に座ると、ドリンクを控えめに持ち上げた。
蓮はそれにこつんと容器を合わせる。
「乾杯」
「か、乾杯」
「あ、私も〜かんぱ〜い」
「アタシも!かんぱーい!」
園子、銀も加わり、テーブルの中央に4つの容器が重なり合った。
「そういえばさ、蓮。なんでアタシよりも先にバーテックスに斬りかかったんだ?」
「え?」
「いや、蓮はアタシを止めにきたと思ったから・・・」
「そういえば・・・どうして?白鳥君」
「れーくんどうして〜?」
「あーっと・・・」
ジェラートを食べながら質問する銀に、それに便乗するように聞く須美と園子。
蓮は少し言い淀んで、答えた。
「モナドの試し斬りをしたくてさ、バーテックス相手にどれだけ効くのか知りたかったし・・・それと」
「「「それと?」」」
「・・・・・ちょっとカッコ良いところ見せたかったんです。ハイ」
真っ赤になってうつむきながら答える蓮。
「あ〜!れーくん顔真っ赤〜」
「ふ〜んカッコ良いところか〜ふ〜〜ん?」
「二人とも・・・そこまでになさい。白鳥君トマトみたいになってるから・・・」
恥ずかしい・・・あぁ恥ずかしい・・・ホントの事とはいえ・・・
銀ちゃんとのこちゃんがニヤニヤしながら左右からつっついてくる。
「だって〜れーくんが可愛いんだも〜ん。すみすけもそう思わな〜い?」
「そ、それはそう思うけど・・・そう言えばそのすみすけって何?乃木さん」
「あだ名だよ〜?嫌だった〜?」
「あだ名は嬉しいのだけど・・・それはあまり・・・」
「そっかぁ~・・・あっ、ならわっしー! わっしーはどう?」
「わっしー・・・まぁそれでいいかな」
自分から矛先が逸れたことにホッとしながら、二人の会話を聞いていた。
(仲良くなれたみたい。良かった良かった)
そう思っていると銀ちゃんに袖を引かれた。
「なぁなぁ蓮」
「ん?どったの銀ちゃん」
「その、さ。蓮のジェラート一口くれないかなって。レモンも美味しそうだから・・・」
「あぁそんなことか。良いよ」
銀のおねがいに恥ずかしがる様子もなく、蓮は自分のジェラートを掬って銀の口へと運ぶ。
「はい、あーん」
「・・・ふぇっ!?」
「?」
唐突にあーんをされて戸惑う銀。蓮は小さな頃から風や樹に同じ事をやっていたので、恥ずかしがる様子も無かった。
(えぇぇぇぇぇ!?あーんって何だよ!?こっちは一口貰えりゃ良かったのに!?なんで蓮は恥ずかしげも無くやってるんだ!?聖剣勇者だからか!?勇者ってこう言う事もやるのか!?て言うかこれ間接キーーー)
「???銀ちゃん?溶けちゃうよ?」
(ええい、ままよ!)
「あー・・んっ」
「どう?レモン味は」
「・・・・・美味しい、と思う・・・」
「何だそりゃ」
顔を真っ赤にしながら蓮のジェラートを食べる銀。変な感想を言う銀に笑いながらツッコム蓮。そんな二人を見て。
「あわ、あわあわあわあわあわあわあわ」
「ビュオオオゥゥウ!!」
須美はバグり、園子は変な擬音を口に出していた。
「?二人ともどしたの?」
「ん〜ん何でもないんよ〜・・・ねぇ、れーくん?」
「ん?」
「私も・・・ジェラート一口欲しいな〜って」
「ファッ!?」
「良いよ。はいあーん」
「あー・・んっ・・・ん〜美味し〜」
「なら良かった」
銀が羨ましくなったのか蓮におねだりする園子。それを聞き素っ頓狂な声を上げてしまう須美。銀は先程の余韻を味わっているのか顔を赤らめポケーとしていた。
蓮は再びジェラートを掬って、園子の口へと運ぶ。園子も流石に照れがあるのか頬を染め、それでも止めることなく受け入れる。味が気に入ったのか、それとも行為がお気に召したのか満足げな笑顔を園子は浮かべた。
「お付き合いもしていない男女が・・・ふ、ふし、ふし、ふだらびゃー!」
「えへへ〜えへへへへ〜♡」
「・・・(ホケー・・・)」
「・・・あれぇ?」
そして各々が壊れ始め、どうしてこうなったと頭を抱える蓮。三人が落ち着くまでかなり時間が掛かった。
「・・・えーっと、そうだ!蓮、聖剣様の事なんかわかった?」
「え?ああ、まぁ少しね・・・」
「マジ!?教えて教えて!」
(・・・まぁ皆だから平気か。)
「えっと、実はーーーーー」
蓮は昨日の夜、唯香から聞いた話を三人に聞かせた。反応はそれぞれだったが、とりあえず理解できたようだ。
「へ~思いを形に、ね~・・・」
「じゃあ、あの時は白鳥君の思いに応えて聖剣様が・・・?」
「多分・・・」
「不思議だね~」
銀が繰り返し、須美が思いを巡らせる。やはりあれは聖剣の光だったのか。と納得もする。
「という事は~、れー君が念じれば何でもできるのかな~?」
「じゃあさじゃあさ!蓮が『斬れ!』って思ったらバーテックスの事、ぶった切ったりできんのかな?」
「それなら『撃て!』って念じたらどうなるのかしら・・・弾が剣の先端から出たりするのかしら・・・?」
「それらについては思いつくところがあってさ、次のお役目で試そうかな、と」
「お役目で初めて使うの?危なくない?」
「こっちでも使えるんだから、こっちでやっちゃったら~?」
「僕もそう思ったんだけどさ、『斬れ!』って念じたらどうなるかがわからないんだよね・・・いきなり目の前が切れたりしたら危ないなんてもんじゃないし・・・攻撃に使うものだから、どうせならバーテックスに向けて試そうかと思って、さ」
「ほーん」
そう、今回やろうとしているのは『防御』ではなく『攻撃』なのだ。まだどんなものなのか判明していないのに、こっちで試すのは些か危険すぎる。まぁお役目の時でも危険なのだが・・・
聖剣の力試したらケガして戦えなくなっちゃいました。では笑い話にもならない。多少危険でも力をぶつけられる敵がいるお役目で使用した方が良いだろう。というのが蓮の判断だった。
その後、四人は雑談し、笑い合った。その時あだ名の話になり、須美は園子をそのっちと呼び、銀は呼び捨てするようになり、蓮は名前にちゃん付けすることが決まったのだった。
さて、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、時計は5時を指していた。
「では、そろそろお開きにしましょうか。これ以上は暗くなっちゃうわ」
「もうそんな時間かー、楽しい時間ってあっという間だな」
「もっとお話ししたいけど仕方ないね~。けど、また4人で来ようね~」
「勿論。また来ようね」
「私はお迎えが来てくれるけど・・・みんなは?」
「私もお迎えが来てくれるんよ~」
「あたしは歩きだな・・・じゃあここでバイバイか?」
「じゃあ僕が送ってくよ。女の子一人は、ちょっと危ないかもだし」
「いいのか?」
「うん」
「じゃあここで二人とはお別れね。また明日会いましょう」
「ばいば~い」
「うん、また明日ね~」
「また明日な!須美!園子!」
お互いに手を振り、別れを告げる。
また明日会うことを約束しながら。
「なぁ蓮、良かったのか?送ってもらっちゃって・・・」
「さっきも言ったじゃない。もう夕方だもん、女の子一人は少し危険だよ」
「そ、そっか」
犯罪がほとんど起こらない事は知っていたが、なんとなく、蓮は銀だけ一人で帰らせたくなかった。
蓮の気遣いが恥ずかしいのか、銀の頬が少し赤く染まる。
蓮はそれに気づいていたが、特に指摘はしなかった。
「あ、ここ。あたしンち」
しばらくすると、銀の家に辿り着く。極普通の和風の一軒屋だった。
「えっと・・・少し上がってく?お茶ぐらいなら、出すよ?」
少しどもりながらも話す銀。
「お誘いは嬉しいけど、中々いい時間になってるからさ、また今度にさせてもらうよ。ありがとうね」
「そっか・・・送ってくれてありがとな、また明日!」
「うん、また明日ね」
銀が家に入ったことを確認した後、蓮は家に背を向けて銀の家の先にある自分の家に向かって歩き出す。その直後、家から銀のただいまー! という声の後に姉ちゃんおかえりー! と元気な少年の声が聞こえてきた。
(銀ちゃんにも姉弟がいるんだ・・・なんか親近感)
銀の家族の声を聴いた蓮は、親近感を感じながらも少し寂しい気持ちになった。
(・・・姉弟、か)
「姉さんと樹・・・元気かなぁ・・・」
ふと口に出てしまい、目に涙が浮かぶ。
もう乗り越えたと思っていたが、まだまだダメらしい。
お役目の守秘義務のせいで、電話もメールも、会う事すらできなくなってしまった。
戦うことを選んだのは自分だ。それでもやはり、引き剥がされるのは辛く、あの時のことを思い出すと未だに涙が出てくる。その時。
「チチッ、チチッ」
「え・・・?うわっ!?」
蓮が物思いにふけっていると、その両肩に青い鳥と灰色の鳥が止まっていて、蓮の頬を軽くついばんでいた。
さしもの蓮も驚き、大声を上げてしまうが鳥たちは微動だにせず、蓮の肩に乗っかり、頬に身体を擦り付けていた。
「・・・もしかして、慰めてくれてるの・・・?」
そうとしか思えなかった。蓮が聞くと、そうだ、と言わんばかりに身体を擦り付けた。
「・・・ありがとう、もう大丈夫だよ」
蓮がそう言うと、二羽は蓮の顔を確認するように動き、一瞬間を置いて、空へと羽ばたいていった。
(・・・なんだろう、この感じ・・・)
二羽を見送った蓮は不思議な感覚を味わっていた。
前にも、会った事があるような、そんな感覚ーーー
(気のせい、かな・・・?)
そして、再び皆を守る事を決意した蓮は、家への帰路に着くのだった。
後書き
いかがでしたでしょうか。
銀ちゃんのヒロイン化が止まらない。
銀ちゃん可愛いからね、仕方ないね。
誤字、脱字等ございましたら指摘お願いします。
感想、質問お待ちしております。
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