女神と星座の導きによりて
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星42 最後の試練
私達が沙織達の元へ着くと兵士達が騒ぎ立てていました。
「アイオロス、真名、皆もお帰りなさい」
「ムウ」
ムウがこちらの帰還に気付き、近付いてきました。
アイオリアがムウの名を呼ぶと
「ええ、分かっていますよ。アイオリア。貴鬼」
「はい!ムウ様!」
ムウの弟子の貴鬼が小さな身体より少し大きな車椅子を引きながらこちらに来ました。
「はい、アイオロス。車椅子!」
「ああ。貴鬼、ありがとう」
アイオロスは貴鬼にお礼を言い、車椅子に座ると小宇宙の燃焼を止め、一息つきました。
「兄さん、やっぱり無理を……」
「ははっ、本当に大丈夫だ。こんなに大きくなっても心配症だな。アイオリアは」
「なっ、そ、そんな事は……」
そんなやり取りを微笑ましく見ていると
「アテナ復活ばんざーい!」
「ばんざーい!ばんざーい!!」
そんな声がそこら中から聞こえてきました。
「お嬢様、胸の傷は本当に大丈夫ですか!?」
「ええ、まるで嘘の様に傷跡も何もありません。皆にも心配をかけました。ありがとう……」
胸に黄金の矢が刺さっていた沙織は、本当に矢が刺さっていたのが言葉通り嘘の様に無くなって、元気に立っていました。
そんな沙織を見つめていると、アイオロス達、黄金聖闘士達は沙織に近付き
「アテナ……、我ら黄金聖闘士、貴女を真の女神として迎える事に同意いたしました」
「牡牛座のアルデバラン」
「獅子座のアイオリア」
「乙女座のシャカ」
「蠍座のミロ」
「山羊座のシュラ」
「水瓶座のカミュ」
そこまで名乗ると彼らは後ろに居たデス君とディーテに振り向きました。
「……わーったよ、言えば良いんだろ。言えば」
そうデス君が言うとディーテにアイコンタクトをして前に出て沙織の前に膝をつき見上げて言いました。
「……蟹座のデスマスク」
「魚座のアフロディーテ」
「「貴女を我らの女神として認めます」」
それを見ていた黄金聖闘士の皆は頷き合って、
「これよりのち、アテナに忠誠を誓います。そして五老峰の老師や、此処には居ない他の聖闘士も兵士にいたるまで、これよりのちは……」
その言葉と共にアイオロス以外の黄金聖闘士、青銅聖闘士、兵士達皆が沙織に跪き、
「女神よ、貴女の元で地上と正義と平和を守る為に戦います!!」
一同、一糸乱れることなく言いきりました。
すると、沙織は聖域の上の方を見上げて走って行ってしまいます。
「あっ、お嬢様、一体どちらへ!?」
そう執事の辰巳に呼ばれても振り向きもせずに。
「行かせてさし上げてください。彼女は今、普通の少女に戻ったのです。これからはアテナとして想像を絶する戦いが待ち受けています。今だけは普通の少女にさせてあげて下さい」
ムウがそう発言すると私はある事を思い出しました。
私にとっての最後の試練が残っている事を……。
「……サガ!」
見送っている場合じゃないです!
ちょっと足がもつれましたが、沙織を追いかけます。
「真名!?」
後ろでアイオロスが驚いて私の名前を呼びましたが、すみません。今は無視です!
沙織を見失わない様に小走りで付いていきます。
……しばらくすると前方に沙織の前で跪く黄金の塊が……!
「さ せ る くぁぁあああ!!」
今まさに心臓に目掛けて勢いよく手刀しようとしているサガに私は
「必殺っ!」
今居る場所が階段下であるなんて関係ないです!
そう、勢いを付けて高く、サガ達の居る場所よりも高く飛び上がり
「天昇牙・飛翔崩落襲閃・滅っ(めぇえええええつっ)!!」
即席の必殺名を叫び、思いっきりのかかと落としを――――
「ぐはっ!!?」
サガの脳天に決めました。
……サガが気絶したのを確認、息をして生きている事も確認すると一息つきました。
「ふう……」
良い汗をかきました!
「あ、貴女は……?」
おや、沙織ったら気付かないんですかね?
まぁ、沙織から後ろ向いてますし、声だけで判別するのは
「……ま…さか、お、お母様?」
おお?案外早く気付きましたね?
「ふふっ、大きくなりましたね。沙織」
「あ……ああ……!」
振り返ると沙織は涙を流して私を見つめました。
すると、少し離れた場所に居たので小走りで私に近付いてきて
「お母様!!」
思いっきり抱き着いてきました。
ふふっ、少し大きくなりましたが、まだ十三歳の少女。甘えたい盛りですよね。
「お、お母様!お母様ぁ……!」
「ふふふっ、大変でしたねぇ。沙織。でも、良く頑張りましたね」
「はい!はいっ!沙織は!沙織は頑張りました!」
「一人で戦う決意をして、寂しかったでしょう?怖かったでしょう?大丈夫ですよ。星矢達が、聖闘士達が、皆が居ますからね」
そう言うと涙を流す目をこすり、目元を赤くして私を見上げてきました。
「…………まは?」
「ん?」
何か沙織が呟きましたね。
「……お母様は居て下さらないんですか?」
…………くあああああああ!
「可愛い!」
「きゃっ!」
「沙織!可愛い!流石、私の娘ですね!こんなに可愛いのは女神だから?違いますね!確かに女神の化身でも沙織が沙織だから可愛いのでしょうね!もう!よしよしですよぉー!」
もう!こんな健気で可愛い子がお母様と呼んでくれる!最高ですな!
思わず抱きすくめて沙織の頭を撫でると
「お、お母様、苦しいです」
沙織は確かに苦しそうですが、その顔は嬉しそうな顔でもあって。
ちょっと名残惜しいですが沙織を離し、これからやる事を伝えます。
「さて、沙織。ごめんなさいね。私はこれからやらねばならない事があります」
「はい」
岩の床に叩き付けられ、頭が埋まっている姿は結構シュールですね。(実はずっとこのまま放置してた)
とにかく、起こします。
「【キュアローズ】!えい」
小宇宙をキュアローズに流し、効果を発動。岩の床から出ているサガの後頭部に刺します。
その姿は更にシュールになりました。しばらくすると……
「……はっ!」
ボコンッ!っと岩の床から頭を出し、気が付くサガ。
「私は……?はっ!アテナ!……に、真名?」
「おはようございます。サガ」
私は茫然とするサガににっこりと微笑みかけ、
「歯ぁ食いしばれや!あんぽんたんんーっ!!」
黄金の左手にてフルスイングで平手打ちをサガの頬に目掛けて放ちました。
バッチーン!!
そんな甲高い音が辺りに響きました。
サガの右頬が真っ赤に腫れましたがこの際無視です。
叩かれてもなお私が此処に居るのが信じられない様で、私を見つめてきます。
「ま、真名。何故此処に……」
「馬鹿な事を考えてる、あんぽんたんにちょっとお仕置きをと」
またにっこりと微笑み、今度は右手を振りかざします。
が
「…………」
「………?」
振りかざすだけで固まる私の様子を窺うサガ。
沙織も私の様子がおかしいと心配気な雰囲気です。
そこでついに
「……サガのバカ」
「 ! 真名……」
私の目から涙がこぼれてきました。
滅多に泣かない私ですが今回は我慢できません。
「何勝手に自己完結して死のうとしてるんですか」
「しかし、真名。私はあまりにも……」
「言いたい事はわかります。けれど、それは貴方一人が死んで解決するんですか?犯してしまった罪を償い切れると思っているんですか?」
「確かに私が死ぬ事で犯してしまった罪が許されるとは思っていない。だが、私は……」
「何故そこで生きて償うという選択肢が出てこないんですか!アホですか!?貴方!」
「それはあまりにも烏滸がましいだろう」
「烏滸がましくて何が悪いんです?それに生きて償った方が十分罰になりますよ!」
「真名……」
「ええい!面倒!!」
私はもう自分に正直に生きましたが、この際です。
ぶっちゃけてやる!!
「私の為に生きなさい!サガ!!」
「「!?」」
その場に居るサガと沙織から驚いたという空気を感じます。
ええい、ままよ!
「ええ!好きですよ!大好きです!!死んだら私が困るんですよ!!いらないならその命、私にください!」
「真名」
「もう!ここまで女に言わせて!恥ずかしくないんですか!あんぽんた「真名!!」!?」
目を強くつぶって叫んでいた私は名前を呼ばれ、恐る恐ると開けてみると、こちらを真剣な顔をして私を見つめるサガが居ました。
「真名、私はやってしまった事を償わなければならない」
「……はい」
「私は本当は正義の為に生きたかった」
「過去形ですか?」
そこで沙織を、アテナを見つめるサガ。ですが、改めて私を見つめ直して、私が顔を伏せてしまいかけたところで
「……正義の為に生きたい」
「…………!」
「私はアテナの聖闘士だ。何よりも守り、優先するのはアテナだと、真名も理解しているだろう」
「はい」
「だが、私は君の為に生きたい」
「!!」
その言葉に驚き、伏きかけた頭を上げ、真っ直ぐにサガを見つめました。
サガはまた、沙織を見つめて
「アテナよ。私は……私は生きても良いのでしょうか……。勿論、罪は消えず、生きていく限り償っていきます。それに、忠誠を誓うのは貴女ですが、この命は彼女の為に生きたいと……そう想ってもいいのでしょうか?」
沙織はその言葉を聞くと笑顔で言いました。
「ええ、サガ。貴方は生きても良いのです。どうか、私達と共に歩み、貴方の正義を貫いてください」
こうして、私の最後の試練は成し遂げたのでした。
後書き
ついに、真名とサガの告白回ですよ!(違う)
サガもやっと告白出来ましたね。
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