女神と星座の導きによりて
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星41 わだかまり
急に意識が浮上する感覚がして目が覚めました。
「……?」
そして気が付くと誰かに横抱きにされています。誰ですかね??
「真名?」
呼びかけられて垂れていた頭を持ち上げ、正面を向くと
「……あ、アイオロス?」
「良かった、目が覚めたようだな」
私は思わず周りを見渡すと、そこは聖域の一番下、白羊宮の近くでした。
どうやら歩いているみたいです。ん?と、いう事は……
「……!沙織!」
そうです!星矢達は間に合ったんですか!?沙織はどうなりました!?
思わず私を抱えているアイオロスの肩を掴み揺さぶります。
「アイオロス!沙織は!?星矢達は!?」
「落ち着け、真名。大丈夫だ」
真剣な目で見つめられ、冷静な声でそう言われたので、少しづつ落ち着きました。
しかも”大丈夫だ”と言ってくれたのです。アイオロスがそう嘘をつくとは思えません。
「真名、大丈夫か?」
「……アルデバラン」
「真名、起きたばかりでいきなり暴れるんじゃない。」
「カミュ」
「その調子だと大丈夫ではあるようだな」
「ミロ」
「ふむ、無理はするな」
「シャカ」
「兄さん、いい加減真名を抱えるのを変わろう。今、テレパシーでムウに車椅子を近くまで持ってきてもらっている」
「アイオリア、ありがとう。だが、私は大丈夫だ」
今までアイオロスの後ろを付いて来る形で降りて来たのでしょう。
アイオロスに抱えられている私を覗き込むように見つめて各自、声をかけてきました。アイオリアは勿論、アイオロスに、です。
気のせいではないのでしょうね。アイオリアの目が少し赤いです。
それに今、微笑んで返事をしたアイオロスを見たアイオリアはきっとまた、なんでしょうね。
ぽろぽろと目から涙が流れてきています。
「アイオリア、男がそう簡単に涙を見せるものではないぞ」
「す、すまない。兄さん」
必死に涙を止めようとしているアイオリアに、アイオロスは仕方がないと言った感じで一息つき、アイオリアを咎めていた厳しい顔つきだったのが嘘の様に今は穏やかに微笑み、
「今まで沢山の苦労があっただろう。しかし、それを乗り越え、一人前の戦士となった。私はそんなお前を誇りに思う」
「に、兄さ」
「胸を張れ、アイオリア。誇りある獅子の黄金聖闘士。お前は立派なアテナの聖闘士だ」
そう言われたアイオリアは目を見開き驚いている様です。
涙も引っ込み……いえ、いきなり滝の様に涙が流れてきました。
それを見たアイオロスは苦笑しています。
他の皆さんもそれを見てアイオリアの肩に手を置いたり、背中を軽く叩いたり、それぞれ声をかけてあげていますね。
「アイオリア、アイオロスの事、今まで黙っていてすみませんでした」
「…………」
「言い訳にしかなりませんが、アイオロスの安全を考えると黙っているしかなくて……」
「真名」
「……はい」
なんとか涙を止められたアイオリアは私を見つめて
「ありがとう」
「……?」
「兄さんが今こうして生きていてくれた。俺はそれだけで十分だ」
「アイオリア……」
ふとアイオリアは笑顔になり、私の手を取って両手で包みぎゅっと握りました。
「兄さんの命を救ったのは真名のキュアローズのおかげだと聞いている。本当に……ありがとう」
「……私もあの時は咄嗟でしたからね。後はアイオロス自身の判断ですし」
「それでも、だ」
「ふふっ、はい」
そう二人で微笑み合っていましたが、そろそろ降ろして頂かないと恥ずかしいのでアイオリアから手を放してもらって、私を抱えているアイオロスの腕を軽く叩き、もう大丈夫と言って降ろしてもらいました。
「ありがとうございました。アイオロス」
「ああ、どういたしまして」
改めてアイオロスの後ろに居る方々に顔を合わせました。
まず近くに居る所から、アイオリア、シャカ、ミロ、カミュ、アルデバラン、意識が戻っていたみたいで、まだ本調子ではないデス君を支えているディーテ、少し離れた場所に居るシュラ。
こうして見るとまだ足りないですが昔を思い出します。
さて、ではまず……。
「アイオロス、アイオリア、ミロ、カミュ、シュラ」
私はその五人を呼ぶとちゃんと返事をくれました。
そして
「大変すみませんでした」
そう私が頭を下げ謝罪を言わせて頂きました。
そう、先程の幻朧魔皇拳の洗脳の件です。
いくら本意ではなくとも傷付けた事に変わりはありませんし、魔拳で殺戮機械とならない様に私を気遣いながら戦い、止めてくれて……。
「本当にご迷惑をかけ「真名」」
「?」
「君がいつも言っている事だと思うが、それで十分なんだが?」
何の事でしょう?いつも言っている事……?
「”ありがとう”、がないぞ?真名」
そのアイオロスの言葉に他の四人は頷いて穏やかな目で見つめてきます。
「……あ」
そうです。私は昔、皆さんに謝罪をする事も教えましたが、その後に”ありがとう”を言う事も教えていました。
「謝罪も大事ですが、お礼を言うのも大事です!」と教えていました。
きっとその事でしょう。
「あ、ありがとうございました……」
「ああ、どういたしまして」
私としたことが……不覚……!
そこでふとアイオロスを見た後に、シュラと目が合いました。
何故か顔を背けてます。私、何かしましたっけ?
そこで気が付きました。
「アイオロス」
「ん?なんだ?」
「シュラ」
「!!」
多分ですけど、シュラ、あの件をアイオロスとちゃんとお話ししてませんね?
まぁ、時間もなんもなかったでしょうけど、大事な事なので今のうちに……。
シュラを呼んで手招きしましたが来てくれません。
名前を呼んだ時は反応していたのに。
仕方ないですねぇ……。
私はそう思いつつシュラに近付き、背中を押しました。
ビクともしませんですが……。
「……真名」
「動きなさい。でないと、私がシュラを強制横抱きの刑に処すです」
「!?」
そう言うとため息を付けれ、少しづつ動いてくれました。
でもアイオロスに近付くと鈍かった動きも更に鈍くなり、ほとんど動かなくなりましたが、まぁ、この位で良いでしょう。
「シュラ」
「……」
「真名、あまりシュラに無理は……」
「いえ、この際です。はっきりしちゃいましょう」
むむむっとシュラの顔をじっと見つめます。
それにたじろぐシュラ。なんとなく私の言いたい事を分かっているのでしょう。
アイオロスも分かっている様で、シュラを庇う感じに言ってきましたが、私の件はもう終わったのにシュラのあの態度、わだかまりはさっさと消すに限ります。
まぁ、長い年月も経ち、殺し、殺されたと思っていた訳ですからそう簡単にはいかないでしょうけど……。
アイオロスは気にしていないみたいですが、シュラと……アイオリアは、ね?
「……俺は謝らないぞ」
「シュラ」
「俺は俺のした事を背負って生きていく。アイオロスを殺そうとした事もだ」
「…………」
「……だが、アイオロス」
「なんだ?」
今まで顔を背けていたのが今度はしっかりと目線を合わせて見つめ合っています。
「俺は後悔していない」
「ああ」
「しかし、沙織嬢……アテナに忠誠を誓い、守る事は信じろ」
その言葉にアイオロスは微笑み、
「ああ!」
シュラと握手したのでした。最後に……。
「デス君、ディーテ」
「……ああ?」
「なんだい?姉さん」
「沙織を、アテナを認めてくれますか?」
そう言うと二人は
「……会ってから言ってやるよ」
「…………」
ちゃんと答えていない様な事を言っていますが、その目は真剣でした。
今はこの位ですね。
「さて、行きますか!」
私達の女神、アテナの元に!
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