徒然草
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203部分:二百三.勅勘の所
二百三.勅勘の所
二百三.勅勘の所
朝廷から法によって裁かれる罪人の家の門に対して矢を入れるものを取り付けるという習わしも今ではなくなってしまいそれを知る人もいません。帝が病を得られた際や世間で疫病が蔓延した際にも五条天神にその靫をかけます。鞍馬寺の境内にあるその靫の明神もそれをかける神様であります。裁判の判決の執行係が背負う靫を罪人の家にかけますとそれでそこに他の人が立ち入ることができなくなります。今ではこの風習がなくなり今では門に封をするようになりました。
こうした習わしがあったということすら知らない人が増えています。かつてはそれが当然だったのでありますが。習わしというものは消えていくものであります。廃れるものであります。時は移ろうものでありまして残るものもあれば消えていくものもあります。ですがこのことを忘れてしまうのはいささか寂しいように思えます。どうでもいいもの、どうでもいい人なぞ忘れてしまっても構わないでしょう。しかしこれはそうではないと思います。ですからこれを忘れてしまうのは実に寂しい話であります。ですから今書き留めておきます。それが後々きっと人の目に入ると思うからです。今は消えていて忘れられていても思い出されもすると思いますので。
勅勘の所 完
2009・12・3
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