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インフィニット・ゲスエロス

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閑話4 ヒカルノと太郎(表面)【中編】

 
前書き
遅くなりました。

お気にいりや評価、ありがとうございます! 

 
「…………で?太郎さま、聞きたいんだけど?」

不機嫌な顔を隠そうともせず、ヒカルノは言う。

「わざわざ仮入部の私を指名したのはなんで?嫌がらせ?」

だが、棘のある口調で、嫌がらせの『様』付けを変えずにそう言っても、太郎は全く堪えない。

「んー、ほら、『君以外』の人達は、緊張から解き放たれてぐったりしてたからさ、『部の代表者に仮入部の君を差し出すくらい』にね?」

むしろ、どこ吹く風、とばかりに言葉を紡いだ。

「…………そうしたのアンタじゃない」

その言葉に、額を押さえながら、ヒカルノは返す。

怒号、叱責という鞭でいたぶった後の優しい言葉。

それに安堵し、涙を浮かべて一息入れている状況で、太郎の口にした言葉に対して疑問を口にする。

つまり、『逆らってみる』

その結果、どんな言葉が返ってくるのか分からないのに。

再度言うが、散々、言葉で痛めつけられた後にである。

(そりゃあ、無理な話よね…………)

それを皆に要求するほど、ヒカルノは鬼ではなかった。

「まあまあ、良いじゃない。君も部屋から出ていきたかったんだろ?それに…………」

歩きながら目だけ此方に向けて、太郎は笑顔で、こう言った。

『どんな理由でも、こちらの仕事に手を貸してくれたんだ。君に損だけさせるつもりはないよ?』と。

『爽やか』のお手本のような笑顔。

それを自身のイケメンフェイスを悪用して行うのだから、なるほど、『うぶ』な女なら、それだけでノックダウンしそうではある。

(だけど残念、私は性格ねじくれてるの)

『普通』の女のような反応など、してたまるか。

そんな感情と共に、『当時の』私は、こう答えた。

『絵にかいた餅で喜ぶ趣味はないねえ~』

そう言って、もったいぶった後に、襟元をつかんで、太郎に言う。

『具体的にご褒美を出したら信じてやんよ!』と。

一瞬、止まる時間。

目を丸くする太郎。

「ははっ!そうきたかあ…………」

彼はその答えに、嬉しそうに笑っていた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あの時の太郎、楽しそうに笑いおって…………」

当時の苦々しい気持ちを思い出し、ヒカルノは言葉を吐いた。

部室で見せたSMプレイ(?)に人心掌握術。

ついでに、妖しげな笑顔(ヒカルノ視点)

いやあ、当時から怪しい悪党ムーブ全開過ぎだろ太郎。

後で本人に聞いた話では、緊張せずにズケズケ話してくれたのが好印象だったから、少なくとも私とのやり取りは、裏無く喜んでいたらしいが…………

「言わなきゃ分からんわ~」

うん、あの口調と笑顔は胡散臭い(断言)

なまじ顔が良いので引っ掛かる奴もいそうだけど、学生時代、敵対してた陣営に『黒幕』とか陰口叩かれていたのも分かるわ(偏見)。

かつて言われた言葉を思い出しながら、暇潰しに自室をゴロゴロと転がり、ヒカルノはそう、呟いた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

あの後に、生徒会室に寄った太郎は、パソコン部でのやりとりを簡潔に(結果だけ)報告した。

勿論、脅迫まがいのやりとりは、上手くぼかして。

そして、約束通り、『手間賃』という形で、私をファミレスに連れていった。

『やった!奢りだ!』

勿論、貴重な暇潰し時間を邪魔された私は、思うまま頼んで食べた。

『くっ、やるわね太郎。私を罠に嵌めるなんて』

…………太郎の財布にダメージを与えようと食べ過ぎて動けなくなったが。

『やっばい、チョーお腹パンパン。動けん…………』

心の声通り、お腹いっぱい過ぎて直ぐに帰れず、ぐったりしていた私。

だが、その時、ファミレスに大量の人々が!

夕飯時だからね、しょーがないね。

だが、お腹いっぱいで動けない私にとって、入り口で座れず待っている客たちのプレッシャーは割りと困った。

太郎は、ヒカルノを可哀想な人をみる目で眺めていた。

そのため、気が利いてかつ、弱く哀れな私(?)は、飢えた狼こと太郎に、ファミレス隣のカラオケ屋に浚われてしまうのでした。まる。

………………!?!?!?。

多分、太郎がそのヒカルノの身勝手な(心の)感想を聞いたら、フェミニスト思考をかなぐり捨ててひっぱたきそうである。

実際、心の声を聞く限り、被害者はむしろ太郎の方ではないだろうか?

と、ナレーションは思いました。

閑話休題。

では、ここで当時のヒカルノのアホな行動を見せられた太郎の視点から、『この時のこと』を見てみよう。

まず、太郎パソコン部にいったのは、ちゃんと理由がある。

その理由を簡単に言えば、『自分の特許出願等に付き合ってくれる、有望な科学者の発掘』であった。

まず、この件について、読者の方々はなぜ、束を頼る『だけ』では駄目なのか不思議に思うだろう。

なるほど、その通り、束を頼れば手取り足取り、ついでに腰とり(?)教えてくれるだろう。

そのために、自分の研究を後回しにして。

太郎は、出来ればそれを避けたかった。

意外だと思うかもしれないが、彼も転生してもう十数年。

ネジ曲がった心は完治せずとも、純粋な愛をくれた二人や、父親代わりに面倒を見ていて、慕ってくれた一夏により、少しはマトモな精神を持つようになった。

少なくとも、深く親しくなった相手の幸せを願うくらいには。

だから、自分の仕事の為とはいえ、束の負担が大きすぎる、『技術関連全部束たより』は避けたかった。

それゆえの、今回の行動である。

え、それなら社会人つれてきた方が早いって?

確かにそうだ。

だが、そういった優秀な科学者達は会社や大学等の研究機関に所属しており、太郎達のように伝もない未成年三人に『個人的に』着いてきてくれる優秀な人など、まあ、殆どいない。

例え束が世界的に有名になろうとも、組織の利益度外視して研究しよう、は通らないのである。

仮にいても、湾曲的に表現して、性格に難がある三人に許容される人間なんぞいないが。

そう考えた太郎は、発想を変えた。

三人に許容される『完成した』科学者を雇うのが困難なら、太郎が個人的に『科学者の卵』を雇い、育てる形にすれば良いと。

扱っているメインの技術、『IS』については、完全に新機軸な代物で、簡単に既存の技術に転用出来ない欠点がある。

だが、それは裏を返せば、若い内から優秀な科学者の卵を育てていけば、いずれ今は存在しない、『IS』専門の研究者を作ることができる、ということでもあった。

そのため、彼は事前に学校側に『こう』頼んだ。

自分の助手『見習い』という形で、利発な女性を探しているのですが、優秀な方に心当たりはありますか?と。

ちなみに、女性に絞ったのは完全に太郎の趣味である。

学校側としては大歓喜であった。

なんせ、学校の評判を高めるであろう優秀な人間を、太郎自ら育ててくれるといってくれたのだ。

学校側は喜び勇んで、多くの生徒の情報を(秘密裏)に流した。

そこで、総合的な優秀さが五指に入り、容姿が太郎のストライクゾーンに入っていた女性、それがヒカルノであった。

話を、現在に戻そう。

その情報を得た太郎は、とりあえず出会いを演出することにした。

最初に生徒会に行き、太郎はこの学校が生徒会を中心とした権力構造であると把握。

同時に顔の広い人間と顔をつないだ。

これで、何かしら情報を得たいときに、生徒会を頼れる。

また、その時に自分が『生徒会の味方』だとアピールするため、困っている事の相談に乗ると申し出る。

そして、そこから自身に都合の良い事案を抜き出して手伝う。

そういった過程を幾度か繰り返し、太郎はヒカルノと関われる案件を発見、そしてそれを自身で解決すると言って、引き受けた。

今回のパソコン部の大立ち回りは、そうやって起こしたのである。

閑話休題。

(まあ、変に石頭だったりするよりは数段ましだが…………)

自分の(児戯レベルではあるが)人身掌握術を流したヒカルノを太郎は気に入ったことは確かだが、その余りの破天荒さに辟易もしていた。

広いカラオケルームで(勝手に膝の上に頭を乗せている)ヒカルノの額に無意識に手を乗せながら、そう考えていると、そっとヒカルノが口を開いた。

「…………あんたがカバンに入れていたアイエスってやつ、凄いじゃない。量産されれば、戦場を変えるわね…………でも…………」

そう話初め、素人にしては鋭い観点で、その技術の疑問点を口にするヒカルノに、太郎の口は自然と笑みにつり上がった。

(こいつは…………アタリだ!)

「…………あ、また胡散臭い笑顔してる」

「…………」

ちょっと傷ついた、太郎であった。

だがそれくらいで、太郎は挫けない(強弁)

「その胡散臭い笑顔してる俺に膝枕されているお前は何様なんだ?」

「ワタクシ様よ!」

そんな下らないやりとりをしながら、太郎はヒカルノを上から見下ろし…………

ヒカルノはその目を、そっと見つめ返す。

「面白いなお前は?」

「あんたこそ」

声に出さない想い。

『おまえ(アンタ)を認めてやるよ』

その思いを互いに交換しながら…………

太郎とヒカルノの出会いの初日は、こうして終わった。

 
 

 
後書き
現代

太郎「お前、初めて知り合った日にカラオケ屋で異性の前で爆睡とか何かんがえてたの?」

ヒカルノ「おなか一杯で動けないことは、全てに優先する!」

太郎「…………俺に抱かれるまで処女だった事が奇跡だな(ため息)」 
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