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人徳?いいえモフ徳です。

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十五匹め

 
前書き
暁よ!私は帰って来た! 

 
そこそこの部屋のそこそこのベッドの上に二人の人影があった。

片方はトランジスタグラマーな女でもう一人は狐の男の子。

そこから女がそっと抜け出した。

部屋の戸棚から紅く朱く赤く輝く液体の入った小瓶を2つ取り出した。

女の親指ほどの小さな瓶だった。

きゅぽん、と瓶を開けた女はニヤニヤしながら男の子に近づく。

そして小瓶を男の子の顔に近づけ…

ずぼっ!

「ふぎゃ!? けふっ!ふぐっ!」

小瓶とその中身の液体を鼻に突っ込まれた男の子が飛び起きた。

「にゃにしゅゆのしゃぼーでぇん!」

「ん?昨日鼻にエリクシールを突っ込んで起こすって言っただろう」

「エリクシール…?」

男の子は鼻から垂れる液体を手で拭って見た。

「…………もったいねぇ!?」

「まぁ、こんな事ができるのは実際に作ってるからなんだがな」

言外に昨日の発言を取り消せと要求していた。

「わーすごーいぼーでんほんとうにえりくしーるつくれるんだねあたまはざんねんだけど」

「誰の頭が残念だって…?」

「ほら早く服着なよ。僕も裸って事には目を瞑ったげるから朝御飯にしよーよ」

「待て。ブラッシング中に寝たお前をモフりながら寝ていただけだ」

「ギルティ」







side in

「で、今日はどうすんだシラヌイ?」

ご飯を食べ終わるとボーデンにきかれた。

「ん?んー…ギルドに行きたい」

「ギルドぉ?」

「昨日はボーデンに拉致監禁されたけど本当はギルド行く予定だったんだ」

「まてアタシは拉致監禁などしていないぜ」

「ま、冗談はともかく」

「冗談は時と場合を考えろ」

「ちーっす」

「……………ぷっ」

「おいボーデン今の笑いはどういう意味だ」

「似合わないぜシラヌイ…」

「あっそ」

「で、なんでギルドなんだ?」

なぜって?

「え?御約束じゃん?」

「いや何の御約束だよ…」

「んー…ま、御約束なのさ」

「じゃぁもうそれでいいや…」










「なんでワンピースなの?」

ギルドへの道を歩きながらボーデンに尋ねる。

「それしか服がないからだ。お前が着てたの寝間着だろ?」

裾をあげる。

うん…

「すーすーする」

「我慢しろ」

「へーい」

まぁ、仕方ないか。

「それで?ギルドのどの部門に入るんだ?
製作か?討伐か?採集か?」

ん?部門?

「よくわかんないけどモンスターぶったぎれる所」

「じゃぁ討伐だな。だがお前戦えるのか?」

「ん? この前お城でメイドにちょっかいかけてた豚の一味を倒したばっかりだよ。
たしか…ダマオだっけ?」

「………………………………はぁ!?」

うわっ!? いきなり大声出してどうしたのさボーデン?

「ダマオってこの国の第一皇子だぞ!」

「まっさかぁ? あんな豚がこの国の皇子?
ないでしょ。」

「あぁ、そうだな(今頃タマモ様達はダマオを追い落とす口実ができて大喜びか…)」

ぶつぶつ言ってるボーデンは無視だ。

とりとめのない話をしていると、やがて大きな建物についた。

「ここ?」

「おう。フライハイト王国ギルド本部だ」

手を引かれてギルドに入る。

朝早いと言うのに賑わっていた。

いや、朝早くだからこそ賑わっているのか。

「シラヌイ、まずはギルドカードの発行からだ」

「おお!異世界っぽい!」

「異世界…? ああ、お前前世云々って完全な別世界から着たのか?輪廻転生の輪じゃなくて?」

この世界では輪廻転生が信じられている。

なんせ創造主と崇められるのが円環の女神サークリオンだからだ。

「らしいよ。兎に角登録でしょ?はやくしようよ」

「それもそうだな。あ、全盛期の話は今夜聞かせてくれ」

「うん。わかった」

カウンターの方へ歩いていく途中、絡まれた。

「おいおい、ねーちゃん。ギルドに子供連れとはどういう事だい?旦那はどうした?」

それなりに整った顔立ちの青年だった。

「ん?今日はこの子の登録に着たんだ。邪魔だ、通せ」

「はっ! こんなおこちゃまをか?
はははははは!笑えるねぇ。
こんな子供そこらに預けて俺らとどうよ?
天にも昇る心地だぜ?」

うん…なんか、こう、あれだ。

テンプレ乙wwwwwww!

「ねぇ、ボーデン。ボーデンの知名度って…」

「市井の人が全員アタシを知っている訳じゃない。特にアタシは後方要員で研究生産職でここ十数年武勲をたててないからな…」

あ、なるほど。国家錬金術師筆頭って要するに生産職のトップだもんね。

しかもエリクシール作れるような能力があるなら前線には絶対に出ないもんね。

「おーい。無視すんなよねーちゃーん?」

「ねぇギルドってこんな感じなの?」

「こういうのが時折居るが、まぁ、面白い所だ。こういうイベントがあると正当防衛の名の下にある程度好き勝手できる」

うわっ…ギルドの闇だ…。

「え。何?俺を倒す気?やめときなって。
おれこれでも銅級なんだけど?」

「銅ってどんくらい?」

「下から三番目だが、まぁ、それなりに強いはずだ」

ふーん。

「ねぇ?無視?無視なの?」

「喧しいなコイツ…。シラヌイ、ちょうどいいからコイツぶっ飛ばしてみるか?
上手く行けば銅級から始められるぜ」

マジで!? やるやる!

「おいおいねーちゃん。子供に戦闘任せるってどうなのよ。一応保護「お兄さん!ちょっと僕のために氷漬けになって!」

殺したら不味いからね!

「おい坊や。あんまり大人をバカにしちゃ…」

「クリエイトアクア!フェイズトランストゥソリッド!」

お兄さんを包み込むように創り出した一変がお兄さんの脚から胸元くらいまでの立方体の水を直ぐに凍らせる。

「ぐおぉぉぉぉぉ!?」

「あ、ごめん。一気に凍らせたから体積増えて締め付けちゃった」

「いだいいだい!?なんだこれ寒い!痛い!狭い!苦しい!」

「ほぉ。やるなシラヌイ。さ、ではカードの発行をすませよう」

あ、それが本題だったな。

「ん。わかった」

「ちょっと待って!絡んだのあやまるからこれどうにかしてお願いしますたすけてー!」

バカは放ってカウンターへ。

「この子のギルドカードの発行を頼む」

「畏まりました。ステータスプレートはございますか?」

「これだ」

と何事も無かったかのように受付嬢が対応する。

ってあれ…?

「ねぇボーデン。なんで僕のステータスプレート持ってるの?」

「ん?お前が昨日寝ている間にシェルム先生が持ってきたぞ」

マジか。

「まぁ、お前が落ち着くまでって事でな。
折り合い着けたらちゃんと家に帰れよ」

「ああ、うん…善処します」

ステータスプレートを受け取った受付嬢が何故か顔をひきつらせていた。

いったいどうしたのだろうか。

「えーと、坊や」

「なに?お姉さん?」

「君の名前、シラヌイ・シュリッセルで合ってるかな?」

「うん。あってるけど?」

どうしてきくんだろうか?

「ああ、君。コイツの名字は『気にしないで』くれ」

「か、畏まりました。少々お待ち下さい」

なんだろうか。ボーデンはやけに『気にしないで』の所を強調してたけど…

「シラヌイ。貴族がギルドに登録する時は名字を隠すのが普通だ。覚えておくといいぜ」

あ、なるほどそういうことか。

「ところで銅級からどうのこうのってどうなるの?」

「ん?昇級試験を受けるだけだぞ」

「筆記?」

「いや。お前は討伐だからシルバーの試験まで筆記は無しだ。
基本的に戦闘試験になるな」

後ろを振り返るとさっきのバカが仲間と思われる人達に氷を割って貰っていた。

しかし魔法で作られた氷なので少々苦戦しているようだった。

「アレはカウントに入る?」

「さぁなぁ…。ギルドの判断次第だ」

「えぇー…」

「どうせたいして魔力減ってないんだろう?」

「うん」

今回は考える(想像する)時間が十分に有ったから水の創造も氷結も少ない魔力で済んだ。

話していると、カウンターの奥から受付嬢が戻ってきた。

そして僕に紙を渡した。

「こちらが現状のギルドカードの内容となります。このままで発行いたしますか?
昇級試験を受けますか?」

書類には僕の名前とレベルが書いてあった。

「ん?ストーンから…?」

「はい。昇級試験の勝利条件は相手の意識を奪う事もしくは戦闘不能にする、または審判が有効攻撃と見なした時ですので…」

つまり拘束しただけじゃダメ?

「だそうだシラヌイ。あそこで全身氷漬けにすれば少なくともアイアンからだった筈だぜ。
中途半端に首までにするから…」

「えー?殺したらダメなんでしょ?」

「あー…そうだったなぁ…」

まぁ、そういうことだ。

「じゃぁ昇級試験受けます」

「畏まりました。案内いたします」

side out











「寒い寒い!早く割ってくれぇ!」

「だから待てって!今割ってるから!」

「仕方ない、デューク、ウイスキー買ってこい」

デュークと呼ばれた少年は14.5歳くらいだ。

「了解っす!」

ギルドの中央では氷漬けの青年━名をレンという━を仲間の三人が救出しようとしていた。

「そもそもお前らのせいだろうが!」

「ゲームに負けたお前が悪い!」

そう、この青年ゲームに負けたペナルティとしてナンパしていたのだ。

「くっそ、なかなか割れねぇぞこの氷!
どうすんだローク!」

その仲間の一人、トルンがメイスで氷を叩くがなかなか割れない。

「魔法製の氷だ、普通の氷の数倍は硬いぞ」

「どーでもいーからぁ!早く割ってくれよぉ!」

と、そこへ少年が戻ってきた。

「ロークさん!ウイスキー買ってきました!」

「よし!貸せ!」

ロークと呼ばれた音はデューク少年から受け取ったウイスキーをレンの口に近づける。

「飲んだら暖かくなるが、飲むか?」

「聞く必要ないだろ!」

と口を開けるレンの口にロークはウイスキーを突っ込んだ。

「ぷはっ!」

二口三口飲んだ所でロークがボトルを離した。

「っかー!喉が焼けるぜ!」

「デューク、お前はポメルでトルンと氷を割れ」

「了解っす」

「俺はちょっと火ぃ貰ってくる」

ロークがその場を離れ、トルンとデュークが氷をせっせと割る。

二人が氷をわり、レンが動けるようになった辺りでようやくロークが戻ってきた。

「おっせぇぞローク!」

「あ、すまん。ちょっとさっきの子の昇級試験見てた」

「なにぃ!?」

「アイアンを余裕でKOしてたぞ」

それをきいたレンは、三人を置いて駆け出すのだった。
 
 

 
後書き
学習合宿おわってモチベーション上がらなくて… 
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