人徳?いいえモフ徳です。
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十六匹め
「これよりシラヌイ様の鉄級昇級試験を執り行います。
ジャッジは私、レナ・マルクスが務めます。
試験管は王立学院のドルス教官に務めていただきます」
アイアンへの昇級試験の為に通されたのはギルドの裏にあるフィールドだった。
テニスコート三面ほどのグラウンドがあり、そこにサッカーグラウンドのようなラインが引いてある。
サッカーグラウンドってーか某携帯ケモノ育てゲーのアニメのバトルフィールドって感じ。
審判はさっきの受付嬢。
試験管はスキンヘッドの厳ついオッサンだった。
身長は2メートル近くで縦にも横にも大きい。
角があって脚が動物のそれ…ミノタウロス族の方だろうか。
「なぁ坊っちゃん」
ドスの効いた声で話しかけられた。
「なんですか?」
「坊っちゃん、名前隠してるって事は貴族だろう?
事情は聞かないけど、おじちゃんは大人しく帰った方がいいと思うな」
声に反して物腰は柔らかい人だ。
「いえ、大丈夫です。僕は一応魔法使いですから」
「だから坊っちゃんは武器を持ってないって訳かい?」
「うん。僕の体格じゃギルドの武器は使えないからね」
武器は借りていない。
だが、幾つか借りた物がある。
革製の籠手と脚甲だ。
革製なのでキツく締めれば使える。
ひらひらしたワンピースにこれは完全なミスマッチだろう。
「坊っちゃん。手加減はするが俺だって本気でやる。でなけりゃ試験にならねぇ。
頼むから怪我はしないでくれよ」
「わかったよ。お兄さん」
お兄さんが刃引きした長剣を構える。
いや、お兄さんが持つから長剣に見えるが普通に大剣クラスの武器だ。
「試験、開始!」
その合図と共に、僕は駆け出した。
「なっ!?」
魔法使いと言った手前、前に出てくるとは思っていなかったのだろう。
近づいて、大きく飛び上がる。
亜人の身体能力はヒューマンのそれを易々と越える。
ルナール…小動物系の亜人は筋力こそヒューマンと大して変わらないが敏捷性などはその傾向が激しい。
逆にミノタウロス族等は敏捷性がヒューマンと変わらないが膂力が凄まじい。
お兄さんの頭上に達し、大きく手を振り上げる。
「ジェネレート!ウォータライトクロー!」
クリエイトウォーター、シェイプシフト、フェイズトランストゥソリッドは省略。
生み出した水を瞬時に籠手に纏わせ、巨大な手を造り出す。
手のひらだけで約一メートル厚さ二十センチの大きな手だ。
無論、そのツメも長く太い。
「嘘だろ坊っちゃん」
と呟き、防御姿勢を取るお兄さん。
直後、ツメと長剣が衝突した。
ガァン!という激しい音。
手にビリビリと衝撃が走る。
「メルト! 」
パシャっと氷が溶け、手がフリーになる。
そして直ぐ様バックステップで後退。
距離を十分に取ってお兄さんを見ると、剣を持っている方の肩を押さえ、うずくまっていた。
まぁ、百キロを越える衝撃を片手に持った剣で受け止め、しかもその全ての水を被ったとなれば、かなりのダメージだろう。
「なぁ坊っちゃん…マジで何者だよ」
「ただの狐だよ」
「はは…狐…狐か…。恐ろしい限りだ…」
次で『トドメ』だ。
「クリエイトアクア」
お兄さんの頭上に水球を作る。
上空20メートルの位置だ。
大きさは直径十メートル。
体積5×5×3.14×10×2/3…
えーと…25かける10かける2…
だいたい500立法メートル。
チラリと受付嬢を見るが、まだジャッジは出ない。
「シェイプシフト」
それを槍状に形成。
まだ出ない。
「フェイズトランストゥソリッド」
まだ出ない。
「じゅーう。きゅーう。はーち。なーな。
ろーく。ごー。よーん。さーん。
にーい。いーち」
まだ。でない。
「ゼロ。神のつ「そこまで!」
落下を始めた氷杭。
「メルト フェイズトランストゥフォッグ」
バシュッ!と辺りが水蒸気に包まれる。
だが次の瞬間には水が凍り、深い霧に包まれる。
そう、世界に命じた。
で、ふとおもったのだが、攻撃魔法って水属性魔法しか使ってない気がする。
だからまぁ、事後処理くらいは他の属性を使おう。
「クリエイト…いや…
ジェネレート・ダストデビル」
つむじ風を起こし、霧を上空へ散らす。
「試験終了とします。合否を協議しますので暫くお待ち下さい」
「坊っちゃん…協議するまでもなく合格なんだが、仕様なんだ…我慢してくれや」
「ん。わかったよお兄さん」
スタッフと思われる人がお兄さんに肩を貸し、ギルド屋内へ戻っていく。
そしてお兄さんと入れ違いに、さっきのバカが入ってきた。
「おぉぅこらてめーえ!チョーしこいてんじゃねーぞこらぁあ?」
なお今のセリフに強弱をつけると『おぉぅ↑こら↓てめーえ↑!チョー↑しこい↑てんじゃねー↑ぞこらぁあ↓?』となる。
要するに、酔っぱらいだ。
多分氷が割れるまで寒かったので酒を飲ませてもらったとかそんな感じだろう。
足取りも若干怪しい。
「おーい。ボーデーン。アイツやっちゃっていい?いいよね?」
「いいんじゃねぇの?」
「どこまでやっていい?」
「即死じゃなけりゃアタシがなんとかするけど?」
とボーデンがローブを叩く。
多分エリクシールを持ってるんだと思う。
「おっけー」
さて、じゃぁ…やるか。
「へいへーい!そこの酔っぱらいのバカ!
ガキにコケにされて怒ってんだろ?
来いよ!来てみろよ!ほらどうした来いっていってんだよ!
なんだ?また氷付けにされるのが怖いか?
それでよく冒険者やってられるな?
怖いならさっさとお家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな。
え?俺の母ちゃんもう出ない?おしゃぶりしゃぶってろばぁぁか。
ほらどうした?帰らないのか?それとも帰る道をわすれちゃったか?
迷子か?迷子センターまで送っていこうか?
あ、この世界迷子センターねぇわ。
じゃぁ衛兵の詰所行こうよ詰所。
そこでママが来るの待つんだよ。まぁ、不振がられて牢屋に入れられて本当にママに来てもらうってのはダサいが目的は果たせる。よしこれでいこう」
「うるっせぇぇぇぇぇんだよこんのガキィィィィィィィィィ!」
大剣を振り上げながら走って来るバカ。
「クリエイトアクア フェイズトランストゥソリッド」
今度は直径5センチ程。
それを何処に置くかといえば…
「ふごっ!?」
バカの足元だ。
ずっこけたアホの手から大剣が離れる。
「野郎!」
アホが取り落とした大剣を取ろうとする。
「クリエイトアクア フェイズトランストゥソリッド」
大剣を氷で包む。
「ちくしょう!」
立ち上がって、素手で殴りかかってくる。
「ジェネレート レイヤードアーマー」
バカの拳がとぷん…とぷん…と水の層を通過する。
「フェイズトランストゥソリッド」
その拳は僕の目の前で落ちた。
腕もろとも。氷の重さで地面に縫い付けられる。
「クリエイトアクア」
作り出した冷水をバカの頭にかける。
「酔いは覚めましたか?」
「……………………………」
「このまま脳天カチ割りますよ?
死んで治るくらいならバカも案外悪い病気じゃない…。
そんなバカな事を言った人を僕は知ってますが試してみましょうか?」
氷の槍を創り、首筋に突き付ける。
返しのついたエグい形の奴だ。
「10、9、8…」
「待ってくれ君!」
なにやら三人組が走ってきた。
「待ってくれ少年!」
三人組はバカの横に並んでしゃがみこんだ。
膝立ちで片手の拳を地面につける。
なおこの姿勢、地球…というか日本の土下座に当たる。
「コイツは俺らの仲間なんです。
コイツを殺すのは待ってくれませんか?」
そう言ったのは茶髪につり目の男だ。
リーダーだろうか?
「……別に、殺すつもりはありません。
事情は知りませんが、以後こういった事の無いよう気を付けてください」
「寛大な処置感謝いたします」
メルト、と呟くとバカの腕を包んでいた氷が溶け落ちた。
「では行ってください」
「有り難うございますっ…!」
リーダーがバカを立たせ、ギルド屋内へ引き摺って行った。
「いいのかよシラヌイ。あのまま行かせて」
「何かする必要ある?」
振り返るとボーデンに抱き上げられた。
「慰謝料の請求とか…?」
「いや、ヤクザじゃないんだから」
「くくっ…アイツらも命拾いしたみたいだな。
お前以外の貴族だったらもっとひどい事になってたはずだぜ」
それであんなに畏まってたのか…
「あっそ。どうでもいいね。
いや、どうでもよくない。何さらっと横抱きにしてんだよボーデン。当たってるんだよ」
「当ててるんだぜ」
「………………ボーデンが童顔じゃなかったら爆笑してたかも」
「何気に酷いなお前」
この後なんだかんだで銅級になった。
後書き
俺「神崎エルザのアルバム買ったわー」
友「ロリコン」
俺「何ゆえ…」
友「言わなきゃわからんか?」
俺「待て。俺がここで『八九寺真宵』と答えていたならその不名誉な称号を受け入れようだが神崎エルザは成人だ…つまりロリじゃない!アルティメットロンパリオン」
友「神崎エルザは合法ロリだろうが!お前ぜんぜんわかってねぇな!」
俺「お前がロリコンだったか…」
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