真田十勇士
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巻ノ百三十三 堀埋めその十四
「約を守りそうしてじゃ」
「治めていくべきですな」
「それが大事じゃ、そして血もな」
「それもですか」
「流してはならぬわ、鎌倉幕府や室町幕府はあったが」
鎌倉幕府は源氏の身内同士の殺し合いに北条家の自分達にとって邪魔になる御家人達を殺したことであり室町幕府は足利尊氏や義持の弟達との確執そして力のある守護大名達を戦で弱めたことである。
「我等は出来るだけな」
「そうしたこともですな」
「豊臣家のこともな」
「血は流さぬことじゃ」
「それも大事ですな」
「血生臭い政なぞ泰平の政ではない」
家康はこのことは強い声で言い切った。
「だからじゃ」
「はい、血なぞです」
ここで言ったのは天海だった。
「幕府には不要です」
「流れる血はな」
「伝わる血は別ですが」
血筋、それはと言う天海だった。
「流れる血はです」
「ない様にせねばな」
「くれぐれも」
「そのこともしておくか、しかしな」
「しかしとは」
「いや、今の竹千代と国松のことじゃが」
秀忠の二人の子のことを言う家康だった。
「あの者達はな」
「これからですか」
「竹千代が将軍になるが」
秀忠の後にである。
「問題はその後じゃな」
「国松様は」
「何か心配じゃ、あ奴はわしが江戸に行ってわざわざ竹千代の臣下になることを言っておいたがのう」
これは二人の親である秀忠そしてお江の前でした、菓子を出して竹千代は自ら親しく手渡して国松はあえて退かせこのことを言って聞かせてからそのうえで渡したのである。
「それでもな」
「先はですか」
「こればかりはわからぬ」
「鎌倉、室町の様に」
「あの様に血が流れることもな」
「有り得まするか」
「お主達が生きておればじゃ」
家康は心配になった顔で己の前にいる者達全員に話した。
「そうしたことはなき様にせよ」
「竹千代様が将軍になられ様とも」
「それでもですな」
「国松様に災いが及ばない様にする」
「そうすべきですな」
「わしはもう歳じゃ、もう二年か三年でじゃ」
まさにそれだけでというのだ。
「世を去る、だからな」
「その後はですか」
「幕府を支え」
「そうしてですな」
「竹千代様と国松様のことも」
「何とかですな」
「無事にある様に頼むぞ、しかしのう」
ここで天海を見てだ、家康はあえて彼に問うた。
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