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真田十勇士

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巻ノ百三十三 堀埋めその十五

「お主は星も見られたな」
「はい」
「では国松の星もじゃな」
「暗いものが宿っていました、あの暗さは」
「やがてか」
「国松様ご自身を」
「そうか、しかしな」
 あらためて言う家康だった。
「あ奴についても」
「出来る限りですな」
「国松に災いがない様にな、そして以後もな」
「幕府にですな」
「他の家もじゃ、出来る限りじゃ」
「身内同士で血が流れる」
「その様な忌まわしいことはなき様にせよ」
 こう言うのだった。
「わしもあの竹千代を死なせた、そして吉法師殿もな」
「あの方もでしたな」
「勘十郎殿を殺されてじゃ」
 信長の話もするのだった、幼い頃からの友であった彼のことも。
「そのことを終生悔やんでおられた」
「そうでしたな」
「その様なことはないに限る」
 強い言葉だった、実に。
「身内同士で争うなぞな」
「ないに限りますな」
「特に兄弟同士ではな」
「だから国松様も」
「仲は悪くないという」
 竹千代と国松のそれはというのだ。
「ならな」
「このままですな」
「仲睦まじい兄弟のままであり」
「そうしてですな」
「将来は」
「国松は竹千代の臣として仕え盛り立てる」
 家康は己の望みを語った。
「そうしてもらいたい」
「では上様にも申し上げます」
 すぐにだ、柳生が応えた。
「大御所様のそのお言葉を」
「頼むぞ、では皆の者下がれ」
 家康は笑って幕臣達に言った。
「そしてよく休む様に」
「それでは」
 幕臣達は家康の言葉に従い彼の前から姿を消した、そうして家康も今は休み英気を養うのだった。次に動くべき時に備えて。


巻ノ百三十三   完


                     2017・12・1 
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