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真田十勇士

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巻ノ百二十四 大坂入城その四

「やはり」
「では、ですな」
「あの御仁は」
「二度と幕府と戦えぬ様にする」
 幸村、彼はというのだ。
「そうする」
「左様ですか」
「あの御仁を」
「そうしますか」
「そうじゃ、しかもどちらにしろこの戦でな」
 これからはじまる大坂での戦でというのだ。
「戦国の世は終わる」
「これで完全に」
「そうなりますか」
「吉法師殿がかなり終わらせ太閤殿がほぼ終わらせたが」
 それがというのだ。
「もうな」
「これからの戦で」
「それが完全に終わる」
「戦国の世が」
「遂に」
「うむ、そうなる」
 間違いなく、というのだ。
「だからあの者もじゃ」
「この戦で、ですな」
「二度と大御所様とは戦えぬ」
「そうなりますか」
「そうじゃ、あの者との戦も終わる」
 大坂での戦でというのだ。
「そうなる、そして終わらせる為にな」
「これよりですな」
「大坂に向かう」
「そうしますな」
「軍勢はこのまま西に進ませる」
 即ち大坂までだ。
「大坂を囲むぞ」
「わかり申した」
「さすれば」
 幕臣達も応えそうして家康の下西へと向かう、それは秀忠も同じで彼も大軍を率いて大坂に向かっていた。
 だが彼は浮かない顔でだ、周りの者達にこう聞いていた。
「大坂の民達は無事であろうな」
「はい、既にです」
「大坂から逃れております」
「戦になりそうな場所からは逃れ」
「そこで戦見物の用意に入っております」
「ならよい、戦になろうともな」
 これはもう避けられないがというのだ。
「やはりな」
「戦になろうともですな」
「民は害してはならぬ」
「そうですな」
「そうじゃ、民を守るのが幕府の務め」
 それだけにというのだ。
「だからこそじゃ」
「我々はですな」
「民を害してはならぬ」
「絶対に」
「それ故にですな」
「民が既に逃れていて何より」
「上様としては」
「そうじゃ、それを聞いてまずは安心した」
 そうだったというのだ。
 だがここでだ、秀忠は厳しい顔でこうも言った。
「しかし逃げ遅れた者がいればな」
「その時はですな」
「その民を戦の場の外に出す」
「そうしますな」
「そうせよ、戦は武士がするものじゃ」
 即ち自分達がというのだ。
「だから民を巻き込んではならぬ」
「何があろうとも」
「そのことは守らねばなりませんな」
「そういうことじゃ、そして真田が九度山を出たと聞いたが」
 秀忠も幸村のことを気にしていて彼のことを聞いた。
「そのまま大坂に向かっておるか」
「はい、何と真田家を出奔した者達も加わり」
「かつて大名だった格に相応しい威風で大坂に向かっております」
「まさに着陣する様な」
「そうしたものです」
「そうか、それは花道であるな」
 幸村にとってとだ、秀忠はその話を聞いて瞑目する様にして述べた。 
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