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ドリトル先生と奈良の三山

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第一幕その八

「どうやらね」
「そこもイメージが違いますね」
「今も関東ではあまり食べないみたいだけれどね」
「あっ、そうでしたね」
「首都が京都になってからなんだ」
 鱧を食べる様になったのはというのです。
「明石から生きたまま持って行ける数少ないお魚だったから」
「京都で鱧を食べる様になったんですね」
「昔はね」
「だから首都が奈良にあった奈良時代はですか」
「食べていなかったみたいだよ」
「じゃあ奈良時代のお料理にもですね」
「ないと思うよ」 
 こうトミーにお話しました。
「調べた限りでもそうだったしね」
「そうですか」
「うん、それとね」
「それと?」
「氷もなかったしね」
「ああ、製氷技術が」
「なかったから」
 だからというのです。
「冬の間に取り入れた氷を氷室っていうお部屋で保管していて」
「それで食べていたんですか」
「長い間限られた人達だけがね」
「食べていたんですね」
「そうしたものだったんだ」
「これは最近まででしたね」 
 トミーも氷について言いました。
「氷は特別なものでしたね」
「夏に食べようと思ったらね」
「そうでしたね」
「奈良時代の日本でもそうで」
 それこそ限られた人達だけが食べるものだったというのです。
「それでね」
「特別なご馳走だったんですね」
「そうだよ」
「かき氷なんてものは」
「長い間ね」
「なかったんですね」
「普通の人の中にはね」
 食事としてはというのです。
「なかったよ、枕草子には出て来たけれどね」
「あっ、清少納言の」
「そう、夏のお話で出て来るけれど」
「清少納言は帝の奥方のお一人に仕えていたので」
「それでだよ」
「高価なものを頂くこともあったんですね」
「だから枕草子にも書けたんだ」
 それ故にというのです。
「あの人はね」
「そうでしたか」
「そう、そして奈良時代でもね」
「物凄く高価だったんですね」
「けれど今はね」
「その氷もですね」
「楽しめるよ」
 普通にというのです。
「奈良でもね」
「奈良時代の食事も楽しめて」
「氷もね」
「どちらも楽しめますね」
「その奈良にね」
「これからですね」
「行って来るよ」
 先生はトミーに笑顔でお話しました。
「またね」
「わかりました」
 トミーはその先生に笑顔で応えました。
「道中お気をつけて」
「旅先でもね」
「留守は僕が守っていますんで」
「宜しくね」
 こうしたお話をしてです、先生は旅支度をさらにしていきました、そうして実際に奈良に行くのでした。 
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