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真田十勇士

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巻ノ百十七 茶々の失政その七

「あれは織田殿にも問題がありましたが」
「百万石からな」
「一気にあの扱いですから」
「わしはあれはやり過ぎだと思っておった」
「かつての主家に」
「それはせぬ、だからな」
 家康はまた崇伝に言った。
「この様にな」
「豊臣家はですな」
「そうしたい、ではな」
「方広寺の話を理由にして」
「二人程呼ぼう」
「では呼ぶのは」
「大野修理を考えたが」
 豊臣家の執権の一方である彼の名をまず出した。
「しかしな」
「あの御仁は」
「どうも茶々殿に逆らえぬ」
「だからですな」
「ここはまだ茶々殿に言える者にしたい」
「お二人共ですな」
「そうじゃ、だとすれば」
 家康は考えつつ述べていった。
「片桐、そしてな」
「大蔵局殿でしょうか」
 その大野治長の母である彼女とだ、崇伝が言ってきた。
「あの方ですか」
「そうじゃな、穏健な片桐とな」
「茶々様に近くそっと言える大蔵局殿ですか」
「二人にしたい」
 まだ、というのだ。
「このな」
「ううむ、しかし」
「その二人もか」
「茶々様を止められるか」
 今最大の懸念のそれはとだ、崇伝は家康に難しい顔で述べた。
「拙僧は」
「難しいと思うか」
「あの方は天下一の強情様です」
「止められるとなると」
「治部や刑部殿位でしたが」
「あの二人はもうおらぬわ」
「はい」
 他ならぬ家康と関ヶ原の戦で死ぬかその後始末で処刑されている、だからもういないのだ。
「ですから」
「それでじゃな」
「片桐殿にしてもそうで」
「大蔵局殿もじゃな」
「とてもです」 
 茶々を止められるか、というのだ。
「思えませぬ」
「ここは考えていくか」
「ただお二人をお呼びするのではなく」
「それぞれにな」
「話をしますか」
「そうしていくか、そしてまずはな」
「方広寺のことで」
 崇伝はまた言った。
「お二人を呼びますか」
「この駿府にな、しかしな」
「実はですな」
「方広寺の話は表じゃ」
「ただの理由ですな」
「そうじゃ」
 それに過ぎないとだ、家康は言い切った。
「国家安康君臣豊楽とあるが」
「大御所様のお名前を切っていて豊楽は豊臣の天下となる」
「こんなものは言葉遊びじゃ」
 それに過ぎないというのだ。
「そもそも誰が人の諱を使う」
「それはありませぬ」
「誰でもな」
 家康というその名をというのだ、実際家康も崇伝もこの世の誰も他人を諱で呼んだり書いたりしていない。
「だからこれはじゃ」
「釈明を一言聞けば」
「聞かずともよい」
「駿府に来た時点で、ですな」
「よしとせよ、問題はじゃ」
「あくまで切支丹ですな」
「あのことじゃ」
 こう言うのだった。 
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