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真田十勇士

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巻ノ百十七 茶々の失政その六

「もうそれはわかっている筈ですが」
「それが、ですな」
「茶々様だけは違う」
「左様ですな」
「あの方程政がわかっておられぬ方もおらぬ」
 崇伝は苦い顔で言った。
「だからな」
「ここは、ですな」
「もう江戸にいてもらい」
「静かに暮らして頂く」
「そうして頂きますか」
「それが天下の為になる」
 崇伝は確信を以て述べた。
「だから拙僧はこれからな」
「大御所様にですな」
「このことをお話されますか」
「是非茶々様を江戸に」
「そして豊臣家には大坂から出てもらうと」
「そうしてもらおう、さもないとじゃ」
 このことをこのまま放っておけばというのだ。
「天下が危うくなる」
「切支丹が広まるか戦になるか」
「どちらかですな」
「そうなってしまいますので」
「何としても」
「後に憂いのない様にしなければな」
 こう言ってだ、実際にだった。
 崇伝は家康に家康の前に出た、そしてだった。
 この話をしようとするとだ、家康の方から言ってきた。
「わかっておる」
「左様ですか」
「この件ばかりはな」
 険しい顔で崇伝に言うのだった。
「捨て置けぬ」
「では」
「すぐに手を打つぞ」
「ではどうされますか」
「ここはじゃ」
 やはり家康から言ってきた。
「直接言ってもな」
「茶々様に」
「駄目じゃな」
「では」
「ここは二人を呼ぶか」
 家康は目を光らせて崇伝に言った。
「あちらからな」
「理由を入れて」
「そうじゃ、この前方広寺の鐘のことを聞いたが」
「あれですか」
「あれを理由にしてな」
 大坂から二人駿府まで呼んでというのだ。
「話をするか」
「そうしてですか」
「ここで豊臣家に伝えよう」
「茶々様は江戸に」
「そして大坂から出てもらう」
 豊臣家もというのだ。
「まあ上総と下総じゃな」
「その辺りで、ですな」
「六十万石位でいてもらう」
「石高はほぼそのままですな」
「官位もな。扱いは越前の松平家のすぐ下がいいであろう」
「では実質的に」
「親藩じゃ、そもそも千の婿殿じゃ」
 秀頼の話は笑ってした。
「ならばな」
「親藩としてですか」
「扱う」
「ではやがては松平の姓も」
「公に名乗らせて家紋もじゃ」
「徳川の葵を」
「やる、それで話は充分であろう」
 そこまで格を与えればというのだ。
「むしろ太閤様の織田家への扱いよりいいであろう」
「はい、あれはどうも」
 信雄へのそれをだ、崇伝も言った。 
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