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真田十勇士

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巻ノ百十七 茶々の失政その八

「それを話させなばな」
「はい、では」
「お主と上総介でな」
「片桐殿と膝を詰めてお話をして」
「くれぐれも居丈高にはなるでないぞ」
「承知しております」
 崇伝もそこはわかっている、それでこう答えたのだ。
「このことは」
「穏やかにな」
「ねんごろにですな」
「話すのじゃ」
「片桐殿もわかっているので」
「それでじゃ」
「上総介殿と」 
 崇伝も正純の名を出して述べた。
「そうしてですな」
「そうじゃ、お主達はそちらをしてじゃ」
「大御所様はですな」
「大蔵局殿と話すが」
「どうもあの方も」
「うむ、茶々殿にはな」
 大坂城の主である彼女にというのだ。
「おもねってね」
「乳母であられただけに」
「甘やかしておってな」
「そして今もですな」
「おもねっておる様じゃが」
「それでもですな」
「話そう、方広寺は実はとどうでもよくな」
 表の話であるそれはというのだ。
「そしてな」
「その実はですな」
「切支丹じゃとな」
「あの方にもお話しますか」
「そうしよう、おもねる者なら」
「そうだとわかったうえで」
「話をしよう」
 こう言うのだった。
「ここはな」
「そうされますか」
「そしてじゃ」
「大蔵局殿もまた」
「話に引き込もう」
「そうされますか」
「そしてじゃ」
 片桐だけでなく大蔵局にも話してというのだ。
「切支丹の件を収めてな」
「そうしてそこから」
「茶々殿を江戸に入れてな」
「豊臣家の転封も」
「そうした話も進めていこうぞ」
「それでは」
 崇伝は家康に応えた、そしてだった。
 崇伝は早速方広寺の鐘の文を見た、そのうえで笑って言った。
「国家安康といってもな」
「これではですな」
「どう見てもですな」
「諱ですので」
「こじつけにしましても」
「下手なものじゃ」
 共に見る弟子達に述べた。
「これはな」
「あくまでこれは口実」
「真意は違う」
「それは誰しもがわかることですな」
「政を知っていれば」
「しかし茶々殿は違う」
 彼女はというのだ。
「やはりな」
「どうしてもですな」
「それがおわかりになっておられぬ」
「政自体が」
「何も、ですな」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「おそらく怒っても驚いてもな」
「人をやって来られますな」
「我等の思うまま」
「そうしてくれますな」
「必ずな、では拙僧と上総介殿はな」
 自分と正純はというのだ。 
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