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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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アイングラッド編
紅き剣閃編
  Paladin Proposal―聖騎士の提案

 
前書き
遅れてすいません。 

 




2つの大太刀の柄頭を触れ合わせ、その刀の名前『八葉蓮華』を呼ぶ。

激しいライトエフェクトがボス部屋を照らし、しばらくして終息する。

2本の武器は1つになり、より強力な力を引き出す。



「いいぞ!!」



キリトの声にアスナが応え、烈ぱくの気合とともに突き技を放った。



「イヤァァァァ!!」



純白の残光を引いたその一撃は空中でグリームアイズの剣と衝突し、大音響とともに両者がノックバックする。



「スイッチ!!」



硬直から回復した悪魔が、大きく剣を振りかぶる。

その剣を右の剣で弾き返し、間髪入れず左手で新たな剣を抜き、胴に叩き込んだ。



「グォォォォォ!!」



初めてのクリーンヒットで悪魔が憤怒の叫びを上げ、再び上段斬り下ろし攻撃を放ってきた。

それは今度は俺が片方の刃で受け、その力も利用しつつ逆の刃で剣の横から叩きつけた。

片方の刃を使ったときに体を回転させることにより、2撃目を繰り出す。

防御から攻撃へ。攻撃から攻撃へ。

一度に2度の手を打つことが出来るのがこの武器の特徴だ。

体重を乗せた一撃を崩されたことにより、若干の隙が生じる。

その瞬間にキリトは巨体に肉薄した。

左右の剣を超高速で振るい、星屑のように飛び散る白光が空間を灼く。

エクストラスキル《二刀流》の上位剣技《スターバースト・ストリーム》連続16連撃。

その間撃に俺が飛び込んだ。

右斜め上空の回転振り降ろし、その逆。続けて周囲を凪ぐ範囲攻撃。体を捻った状態から勢いをつけての切り上げ。そのあとは両刀が体を軸に舞うように斬りつける。《アブソリュートダンス》連続13連撃。

致命的ダメージを負うような攻撃は俺が弾き、キリトが怒濤の連続攻撃を見舞う。

それでも時おり剣がかすり、徐々に俺達のHPを削っていった。

もはやこの状況では撤退はあり得なかった。

ボスか俺達か、どちらのHPが先に尽きるかの問題だ。



「はぁぁぁぁっ!!」



振り降ろされた剣を弾かず、逆に全力で押し返す。床を蹴り空中で剣を薙いだ。

剣先が悪魔の鼻を裂き、大きく怯む。



「………ぁぁぁぁあああああ!!」



「ゴァァァァアアアアアア!!」



《スターバースト・ストリーム》の最後の一撃がグリームアイズの胸の中央を貫き、巨体が膨大な青い欠片となり、爆散した。

やれやれ……こんなしんどい戦いはもう御免だ……。


両刀が自動的に分解され、また2つの刀に戻る。

1つをしまったとき、キリトがふらふらっと倒れかけている。

俺はそれを受け止めて、床に静かに横たえた。

HPバーを見ると数ドットしか残ってないようだ。俺も似たようなものだが。



「キリト君!!」



「……大丈夫だ。ちょっと気絶してるだけ……」



「キリト君ってば!!」



……聞いてますか?



「いててて……」



キリトが顔をしかめながら状態を起こす。

取り合えず無事なことを確認したので、俺もうつ伏せに倒れる。

冷たい床が心地いい。



「バカッ……!無茶して……!」



ガシッと大きな音がしたので、首だけそっちに向けてまたすぐに戻した。

普段ならからかって遊ぶところだが、今はそんな元気は欠片もない。

しばらく休んでから起き上がり、ポーションをを飲んでから立ち上がる。まだふらつくが、しばらくすれば治るだろう。



「クライン、軍の連中はどうした?」



「……犠牲者は2人だそうだ。コーバッツは……項垂れてたな。もう戦闘に出ることは無いんじゃないか?」



「……その方が身のためさ」



「そりゃあそうと、お前ら何だよさっきのは!?」



「……言わなきゃダメか?」



「ったりめえだ!見たことねえぞあんなの!」



キリトが俺の方を見て、「頼んだ!」的なジェスチャーをする。

……この野郎。



「……エクストラスキルだ。《二刀流》と《両刀》」



おお……というどよめきが部屋に流れた。



「しゅ、出現条件は」



「《二刀流》は不明。《両刀》も詳しいことは判んないんだが……《大太刀》の特殊派生かな?ていうか、情報屋にしつこく訊けば教えてくれるぜ?」



「何だって!?何でそんな話が出回らないんだよ」



「使用条件がハード過ぎんだよ。馬鹿高い筋力要求値にソロ専用だし、ソードスキルも1種類だけだ」



慣れれば大丈夫なんだが、ソードスキルが1種類というのは非常に使い勝手が悪い。

危険性が高い故に情報屋も安易に《両刀》の情報を売らないのだ。



「まあ、レイのは分かるとして、お前は水臭ぇなあキリト。そんなすげえ裏技黙ってるなんてよう」



「スキルの出し方が判ってれば隠したりしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ。それに………こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……色々あるだろう、その……」



「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレは人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃあるだろうなあ。それに……」



クラインが意味ありげに未だに抱きついたままのアスナを見やり、にやりとする。



「まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者達よ」



「うるせ……」



軍が口々に礼を言い、回廊に出て転移していく。

クライン達は疲れ果てた俺たちに代わって75層を開きに行った。

部屋に3人だけとなり、うち2人は未だにくっついている。

俺はいったいどこを見ていれば良いのだろうか……。



「おい……アスナ……」



「…………怖かった……2人が死んじゃったらどうしようかと……思って……」



「…………」



驚いた。この子の中で自分がそんなことを言われるほど重要な存在だったとは。



「……何言ってんだ。先に突っ込んで行ったのはそっちだろう」



「む、薄情なやつだな。お前が真っ先に来いよ」



「急に飛び出したからびっくりしたんだよ!」



とは言うものの、ボスにたどり着いたのは同時だったのでそれ以上に追及しない。

その場に再び静かな沈黙が流れた時、アスナが微かな声を発した。



「わたし、しばらくギルド休む」



「や、休んで……どうするんだ?」




「君達としばらくパーティー組むって言ったの……もう忘れた?」



途端に、キリトが大きく目を見開く。

この世界で生き残るために、他のプレイヤー全員を切り捨てた自分にまた仲間を求める資格があるのか?

否、あるはずがない。それは既に取り返しのつかない結果を生んでしまった。

また、同じことが起こればキリトが正気でいられる保証はない。

だが、キリトがあのギルドに入った時俺は本当のことを明かさずにそのギルドでやっていく事に賛成した。

この世界において大切な友人に親しい仲間ができたのは純粋に嬉しいことだった。

それとなく、格下のプレイヤー達を導いているあいつは楽しそうだったのだ。

自分の強さを以て他を守ることができる爽快さを知ってしまったのだ。

それが危険なことだとは分かっていた。自信の驕りは危険をもたらす。

だが、俺は止めなかった。

この世界が現実と同様に危険を孕んでいることを忘れていた。

あのギルドを壊してしまったのはキリトであり、俺の浅はかさだった。

そして、俺は罪から逃げた。キリトの方が何倍も苦しんでいるのは簡単に予想がついたのにも関わらず。

俺もまた卑怯者だ。

それを秘かに気にして、一時期は彼を避けていたりした。

いつしか時が傷を風化させ、心の底に沈みきった時、俺達は互いに何事もなかったように普通に接し始めた。上っ面だけ笑いながら過ごし、いつしかそれが本物になっていった。

それだけの苦しみを味わったにも関わらず、キリトはまた迷っている。

2人が仲良くなるのはいい。こんな世界だから少しぐらい幸せがあったっていいと思う。

だけど、それとこれは別だ。

本当に大切な人を失うという経験をして欲しくない。

それは、俺のエゴなのだろうか?



「……解った」



「……よろしく」



また、この選択を後悔してしまうのか?







_______________________






翌日、案の定新たな2人のユニークスキル使いの噂がアインクラッド中に広まった。

曰く、《軍の大部隊を壊滅させた悪魔をたった2人で撃破したコンビ》、《二刀流使いの50連撃》、《ボスのHPバーを2本も削りきった両刀使いの超攻撃力》etc。

尾ひれがつきすぎて逆に真偽が疑わしくなりそうなのに、今朝から剣士や情報屋に追い回されっぱなしだった。

いっそ、意地を曲げてヒースクリフに匿ってもらおうかと思ったが、妙な恩を売ってそれをだしに使われたら大変だ。

というわけで、最終的に逃げてきたのはエギルの雑貨屋の2階だ。部屋に入ったとたん、黒っぽい人が黒いオーラを出してブツブツ言ってたのは正直、引いたが。



「で、どういうつもりなんだよ。アスナとパーティー組むなんて」



「……わかんねえよ。なんか……こう……近くに居たいんだ」



「はあ?」



やれやれ、鈍感の原因はコレにあんのか……。



「なんつーか………、アスナと居ればわかる気がするんだ。……あのことに、向き合う方法が」



「…………」



こいつは戦ってたのか、ずっと。俺は忘れよう、逃げようとした。もう、この事は思い出すまいと……。



「ったく、お前は強いやつだよ……」



「ん、何だって?」



「何でもない」



エギルは昨日の戦利品を鑑定していて、時々奇声を上げているので、貴重品でも含まれているのだろう。

アスナがここに来れば分配をして解散、の手筈だ。

待ち合わせの時刻から2時間ほど経過しているが、何かあったのだろうか?

それからしばらくして、暇をもて余した俺達がそこら辺にあるものを使った五目並べで無駄に接戦を繰り広げていると、ようやく階段をトントン掛け上がってくる足音がした。勢いよく扉が開く。



「よ、アスナ……」



声を掛けようとしたキリトがそこで黙る。

いつものユニフォーム姿のアスナは顔を蒼白にし、大きな目を不安そうに見開いている。



「どうしよう……キリト君……レイ君……」



と泣き出しそうな声で言った。



「大変な事に……なっちゃった……」



「……どうしたんだ?」



普段は気丈なアスナがこんなになるなんて異常だ。



「……団長が……わたしの一時脱退を認めるには、条件があるって……。2人と……立ち会いたい……って……」



俺は静かに目を閉じ、考えた。何故、ヒースクリフがそんな条件を出したのか?

娘を嫁にやる父気取り?

いやいや……そんなタマじゃない……。

もっと気になるのは、俺を含めて立ち合うことだ。

いくら何でも俺とキリトを相手に1人じゃあるまいし……。

何より、俺と剣を交える事にしたのが解せない。

どうするつもりだ?ヒースクリフ……。









 
 

 
後書き
どうもおまたせしました。

待たせた割には話が進んでませんが、お許し下さい…。 
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