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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
  第44日 挑発

H14年5月3日 北斗杯レセプション当日 side-Asumi

「趙石! 楊海さん! お久しぶりです!」「哦!  是奈瀬!」

「よぉ、明日美チャン久しぶり! 通訳の岸本は?」

「あ、彼は役員の挨拶に言ってます」

「そういえばカレも今や社長か。この大会も協賛してたな」

「後で教え子を紹介するって言ってました」「教え子? 碁の?」

「いえ、北京語です」

「ああ、ソッチね。そういえば社長業の傍ら語学教師の真似事もしてるらしいな」

「本業は大学生ですけどね」「まだ大学生だったのか?」

「你在说什么?(ねえ、何を話してるの楊海さん?)」

「ああ、わるい通訳するよ」

「奈瀬は――副将?」

「ううん。中国戦は三将って団長にお願いした」「本当!?」

「ふふふ。前とは違うからね!」「ボクもだよ!」

「フーン。倉田は相手に合わせてオーダーいじるつもりなのか」

「いえ、私が特例だと思いますよ」「じゃ、大将は塔矢アキラ?」

「そう聞いてます」「へー」

「伊角さんと大きな楽平も来てますよ」「伊角!」「楽平?」

「きっと驚くと思いますよ。では後ほどレセプションで」

「ああ、よろしく」「バイバイ、奈瀬!」

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同日 レセプション後 大会会場ホテル 韓国代表チーム宿泊室

「秀策などとっくに過去の棋士さ」

 洪秀英と林日煥が部屋を去り、残った高永夏のマネージャーが口を開く。

「そうでもありませんよ」 高永夏が反論する。

「もし彼がこの世にもう一度現れたとしたら、きっとものの半年で――」

「そんな仮定に興味はないな。それよりヨンハ」

「いつ世界のトップに立ってくれるんだ?」「和-Ai-はいいんですか?」

「たしかに1億ウォンを越える賞金は惜しいが正体不明の化け物を相手にするに割には合わんだろ」

「それに世界棋王戦や三星火災杯の優勝賞金の方が高い。嵐は過ぎるのを待てばいい」

「でも春蘭杯には参加しますし、この大会でもMVPとして指名されたら勝負は受けますよ?」

「フン。一部のバカ共が乗り気だから反対はしないさ。それよりさっきの話の返事は?」

「ご希望は?」「2年以内――いや嵐が去れば来年にも!」「わかりました」

「やってのけるでしょうね彼は」 高永夏が去った後に通訳が声をかける。

「モノが違うよ。進藤とかいう、ヨンハをニラむことしかできない奴とは」

「Aiショックで凋落した囲碁人気の復活は彼の肩にかかってますか」

「犬にかまれたようなもんさ。吠えている犬もどうせ年末を最後に眠りにつく」

「Let sleeping dogs lie.(眠っている犬は寝かせておけ)ですか」

 韓国棋界は和-Ai-に対して怒り心頭だが、触らぬ神に祟りなしという態度で接することにしていた。

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同時刻 日本代表チーム宿泊室 side-Asumi

 もし本因坊秀作が現れても――自分の敵ではないと高永夏がレセプションの舞台で宣言した。

「こないだ進藤が大将になりたいって言ってたのはこういうワケか」

「高永夏と戦わせて」

「たしかに秀作をバカにされて腹が立つのは分かるけどワガママだよ」

 私だって高永夏にギャフンと言わせたい気持ちはあるけど大将は勝負(賭け碁)で決めたのだから。

「アイツは直接オレを見て挑戦を叩きつけて来たんだ! 黙ってられねえよ!」「わっ」

「ねぇ、進藤。負けることは考えてないの?」「……」

「ああ! そういえば」 倉田さんが何かを思い出したようにポンと手を叩く。

「進藤って秀作の署名鑑定士だったんだ」「えぇ?」

「前にさ、碁盤に書かれた秀作の署名を『ゼッタイ、ニセモノ!』って断言したことがあるんだぜ」

「……なにそれ? ただの秀作ファンじゃないってこと?」

「例えるなら和-Ai-のマニアを公言する奈瀬のような感じか?」

「別にマニアは公言してません。それに和-Ai-の碁には憧れてますけど、最近の和-Ai-のキャラクタはイマイチで――」

「まァ、たしかに私だって和-Ai-の碁をバカにされたアタマにきますから分かりますけど……」

「オレを大将にしてよ! 倉田さんっ」

「大将は塔矢。賭け碁の罰ゲームを忘れてないよな?」

「でも明日の中国戦は奈瀬の代わりに副将だし、いいとこみせたら考えてやらなくもないぜ」

「は、はいっ」

 何だか倉田さんが悪い顔してる。ろくでもない考えをしてるときの表情だ。

「おい! 中国戦の出来不出来は3人共見るからな。さァ、部屋に戻ってさっさと休め」

 歓迎会では働いてる彼の姿も見ることができたし、楊海さんも交えて楽しくお喋りできてたのに……こんな騒ぎで疲れたくなかった。けど明日の中国戦は自分で志願した三将。負けるわけにはいかない。

 プロ棋士になる前にお世話になった楊海さんに今のわたしの碁を見てもらいたい。

「そういえば塔矢君も楊海さんと楽しそうに話してよね?」「う、うん」

「ま、仲の良さのと勝負は別。進藤も気合い出したようだし明日の中国戦は全力で行こう」「ああ!」 
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