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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
  第43話 北斗杯前日

「パンパカパーン」「\パンパカパーン/」「「……」」

「やっぱり賭け碁はソイツの欲やら地の性格が見れてオモシロいな」

「それでは総当たりリーグ戦の結果を下から発表する! それぞれの講評も加えるぞ」

「まずは最下位、香川いろは」「ガックリ」

「同門の妹弟子といってもオレは過保護な師匠と違って甘やかさないからな」

「まァ、オマエは女流としてみたらそこそこ強い。だからこそ合宿にも連れて来た」「ヤッター」

「褒めてないからな。あくまで“女流のなか”で強いだけ」

「それに女流棋戦に奈瀬がいる限り、オマエは挑戦者まで行けても女流タイトルさえ取れないぞ?」

「……そんなのわかってる」

「まずオマエは気分によっての波が激しすぎる、そこが安定しないと進めないぞ。
 一度や二度くらいの大番狂わせがあってもトーナメントは勝ち進めないし、リーグ戦や番勝負は言うまでもないな」

「あと対局相手によって明らかに碁の姿勢が違うだろ? オレとか殺しに来たろ?」

「コノウラミハラサデオクベキカ」「おいやめろ」

「夢の賞金生活がしたいなら、もう少し波を減らして常にベストの実力が出せるようにしろ。以上」

「はい、ありがとうございます」(ペコリ)

「次に和谷義高」「……はい」

「惜しい碁もあったが1勝6敗の理由は相手の言い分を聞きすぎだ。空気を読むな、自分で考えろ」

「たしかに相手の手の意図を読んでキチンと対応しようとする姿勢は悪くないが――
 良い人過ぎてると勝てないぞ。唯我独尊になれとまではいないが、もう少し我を通せ」

「オレたちはプロという勝ち負けの世界で戦ってるんだ。
 相手の一手の意図なんかは時には無視して、自分の一手を押し通す強い意志がいる」

「ま、プロになったばかりの新初段には厳しいかもしれないけどな」

「いえ。ありがとうございます」

「次に――進藤ヒカル」「……はい」

「2勝5敗ということだがオレや塔矢や奈瀬との手合いは僅差だし悪くなかった。
 むしろ内容はイイ碁だ。熱戦だったし、あのシノギのウマさホメてやってもいい」

「ヨミ合いなら塔矢や奈瀬と互角に戦ったといえるけど……二人との差が何かわかるか?」

「塔矢は盤上で勝利をもぎ取ろうする力がスゲェ。多少の不利などものともしない」

「奈瀬は優勢になっても油断することなく容赦のない手で追い詰めてくる。
 劣勢になっても焦らず、相手に喰らいつく機会を虎視眈々と狙ってた」

「塔矢は本因坊リーグや名人リーグでトップ棋士と渡り合ってるしな勝負強さが違う。
 奈瀬も天元戦や竜星戦でトッププロと戦ってきたからか胆が据わってるし土壇場での強さがある」

「まァ進藤は二人に比べて碁を始めたのが遅い。ま、オレ遅かったけどな。そこは天才だから!」「コノヒトウザイ」

「ウホン。進藤の序盤には光るものがある。逆に言えば序盤で優勢を築いて勝つことに慣れすぎてる。
 だから二子置いた碁で同じ力量の近い相手のものを相手にするとかなりツライ。
 序盤で劣勢になってから中盤・終盤で追い上げできるかが今後の課題だな」

「というわけオマエのワガママは聞けない。いいな?」「……はい」

「次に4勝3敗の社清春」「はいっ!」

「甘い手が時々あるけど、関西で期待されてるだけの実力はあるな」

「それに囲碁センスなんてオレ並みかも」「ホンマですか?」

「ただしセンスに振り回され過ぎてる。あと序盤は魅せようとし過ぎだ」

「周囲に自分の碁を魅せよう認めさせようとすることはプロ意識として大事だが……。
 予選を勝ち上がって本戦やリーグ戦に出て、タイトルに挑戦するまで、自分の碁が他人様に見てもらえることはまずない。相手がプロ棋士でないなら猶更だ」

「メシのときとかに聞いたが親に見直してもらいたいなら、まずは魅せる碁ではなく勝てる碁を身につけろ。
 今回に限ったら勝ち星で勝っても順位で負けたら意味がないだろ?
 何が自分にとって本当の勝利かを常に考えろ。
 いくら面白い碁を打っても勝てなければ評価されない」

「あとはギャンブラー気質なところあるよな。
 二子置きだからって大きくリードを広げようと大胆な手を打って、相手に逆にそこを咎められてミスを誘発され差を縮められてる。
 あんまり大勝ちを狙いすぎるな。目先の欲に惑わされるなよ」

「――ありがとうございます」

「ちなみに下位4人は罰ゲームだからな。上位3人はご褒美だ」

「次に3勝4敗の越智康介」「はい」

「オレの事前予想を良い意味で裏切ってくれたな。
 勝てる碁は確実に勝ち、負けるにしても被害を抑えて負けてる。
 堅実な碁だしリスクコントロールもしっかりしてる理想の目碁だな。
 ヘンに大勝ちしようとか目先の欲に惑わされてなかったのも評価が高い。
 このメンバーで順位表の目数を最も意識して長期的な視野で戦ってたのがわかる」

「正に勝率の高い棋士の特徴だな」「ありがとうございます」

「まあ良くも悪くも地に辛い碁だな。
 さらに上を目指すなら実利を優先する碁だけでなく、厚みの将来性に懸ける碁を覚えるのもいいかもしれないな」

「社とは逆のアドバイスになるけど。もう少し冒険してもいいかもな」

「勝ち負けだけではなく、もう少し肩の力を抜いて碁を楽しむことも大事だな」

「勝ち負けにこだわってはいけませんか?」

「そんなことはないさ。ただバランスの問題だな。矛盾しているように思えるかもしれないけどな」

「ま、これくらいにして3位入賞のご褒美は何がいいかな?」

「それなら……倉田先生の師匠の研究会にボクを通わせてください」「「え?」」

「フーン。そういえば師匠とかいないんだっけ? 今まではどうしてたの?」

「院生のときは様々なプロの先生を自宅に呼んで指導碁を打ってもらってました」

「なるほどー。たしかにウチの門下は(妹弟子を筆頭に)変わったヤツらが多いけど――」

「あつぽんが変人筆頭」(ボソッ)

「たしかに師匠は序盤にひとかどの見識のある人だし、天才のオレを育てた実績もある」

「門下にオレ以外の高段棋士もいるし、これから学ぶ場所としては悪くはないな。OK。いいよ」

「本当ですか?」

「オレが責任を持って師匠にお願いするから断られることもないさ」

「あ、ありがとうございます!」

「やったじゃん!」「おめでとう」「\オメデトウ/」「おめでとさん」

「ってことで次は5勝2敗の奈瀬明日美」「はいっ!」

「ま、天元戦でオレに勝ったのはマグレじゃなかったな。一時期は調子を落としてたらしいけどさ。
 このメンバーを相手に二子置きはぶっちゃけ厳しいと思ってたけど、オレの想像以上に置き石の相手に慣れてたな」

「はい。上手と置き石で打つことが多いので」

「ん? 奈瀬も師匠がいないんだろ? 誰に置き石で打って貰ってるんだよ」

「あ、いえ。昔の話です」「フーン。まあいいけどさ」

「女流で一般棋戦の優勝も狙えるって言われてるだけはあるよ。
 これなら北斗杯でも十分に勝ち星として計算できそうだな」

「ってなわけで中国戦は三将でいいぞ」「ホントですか?」

「もちろん勝つんだろ? 問題ない。あ、進藤は副将な」

「ま、奈瀬はまた今年も手合いの可能性があるな。
 上に昇って来たら全力で叩き落とすのもご褒美の一つだ」「ドSデスネ」

「最後はオレ以外に全勝6勝1敗で塔矢アキラ。ま、流石の勝負強さだな。
 15歳の最年少で本因坊リーグ、名人リーグ入りを果たしただけあるよ」

「あと前にもマシて勝利に貪欲になったと感じたな」「ギラギラシテマシタ」

「ご褒美にもならんけど文句なしに大将だ。北斗杯での我がままも一つくらいは聞いてやるよ」

「はい。ありがとうございます」

「ま、奈瀬と同じというか、名人リーグで戦うライバルだからな。特にアドバイスもない」

「ひとつ言えるとしたら“高み”で待ってるってことくらいか」「高み――ですか?」

「十段戦は2連勝したが、そこから緒方先生に底力を見せられた」

「けど碁聖戦も本戦決勝まで進んでる。相手は畑中名人だ楽な戦いじゃないだろうけど……。
 勝てば7月からの挑戦手合五番勝負で緒方碁聖にリベンジするつもりだ」

「王座戦も本戦を勝ち進んでいるし、天元戦だってある。今年は必ず何かタイトルを取る」

「オマエらが目指す上の舞台で待っててやるよ。良いご褒美だろ?」

「来るんだろ? “高み”に」(ドヤァ)

「はい」「はい」「「……はい」」「ハイハイフラグフラグ」

「ま、師匠じゃないがエラそうに講評したけど後はオマエら次第だ」

「「ありがとうございました」」

((っていうか倉田さん、ちゃんと囲碁の講師とかできる人なんだ意外))

「というわけで2泊3日よる合宿も終わりだー。
 オレは遅くなったけど夕飯は食べてから帰るけど夜はちゃんと寝ろよ?」

((やっぱりメシは食べるんだ))

「あと明日のレセプションは午後からだけど代表メンバーは遅刻すんなよ?」

「「はい」」

「ホテルも間違えるなよ?」「あつぽん間違えたことあるよね」

((ホテル間違えたことあるんだ))

「みんなはどうするの?」

「オレは今晩も塔矢んとこ泊まって朝に帰ってからスーツに着替えてレセプション」

「ボクは帰るよ」「オレも今日で解散」

「ワイは和谷とこ泊めてもろうて北斗杯は応援に行くで」

「わたしもトモダチの久美子と北斗杯は応援に行くよ」

「久美子って津田久美子ちゃん?」「うん」「え!?」

「へー、じゃあ藤崎あかりちゃんも応援に来るんだ」

「うん。久美子が紹介してくれるって言ってた」「うげっ!?」

「へー、良かったじゃん進藤」(ニヤニヤ)

「ん? 藤崎あかりって?」「あ、和谷は知らないんだ。あかりちゃんは――」

「わーわー、奈瀬っ! ストップ! ストップ!」

「フーン。どうでもいいけど夕飯に今から宅配ピザ注文してもいいか? 塔矢」

「え? ピザですか……」「おいおい。教えろよ進藤!」「誰か助けてくれー」

「人間諦めも大事やで」「アキラメナヨ」

「ではボクは帰ります。倉田先生、研究会よろしくお願いします」「おう!」

「意外と進藤も隅に置けないな」「そうよねー」「塔矢まで敵に回った!?」 
 

 
後書き
□ 北斗杯壮行会合宿 賭け碁 総当たりリーグ戦 順位表 □

倉田厚   7勝0敗 ←倉田がちゃんと団長らしいことする話が書きたかったんだ!
塔矢アキラ 6勝1敗
奈瀬明日美 5勝2敗
越智康介  3勝4敗 〇香川 和谷 進藤 (*勝ち星ではなく目数で社を上回る)
社清春   4勝3敗 〇香川 和谷 進藤 越智 (*上位3名に大差で敗れている)
進藤ヒカル 2勝5敗 〇香川 和谷 (*二子置きの社と越智に僅差で負けている)
和谷義高  1勝6敗 〇香川
香川いろは 0勝7敗

倉田と香川の師匠は世代的には桑原の少し下で“大物”という設定。  
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