和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
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第一部 桐嶋和ENDルート
第27話 プロ試験本選開始
H12年9月中旬
「やっぱり緒方先生は凄い。……私じゃAiとはここまで打てない」
相手の名はRX-7。プロ棋士の緒方九段がお忍びで使っているネット碁のアカウント。
和-Ai-の打ち手は奈瀬。いつの間にか僕に代わってネット碁でAiの操作を務めている。
奈瀬は息抜きといって毎週木曜日にネット碁のAiの打ち手となる。
中国から戻った後、楊海八段との話を緒方先生に伝え、ついでに和-Ai-のホームページのことを教えた。
手の込んだジョークサイトかもしれないことを前置きした上で、予告されている対局予定日にネット碁に繋げばAiと対局できるかもしれないと誘導した。
プロ試験の本戦は1日1局、持ち時間は1人3時間、その後は1手1分、コミ5目半で行われる。
日曜日、火曜日、土曜日の週3回、全出場者による総当たり戦。本戦の出場者は28名。8月末から10月末まで2ヶ月を超える長丁場となる。
すでにプロ試験本選は11戦目を終えて越智康介と伊角慎一郎が11連勝で無敗。
碁会所での修行を重ね洪秀英との対局で一皮むけた進藤ヒカルが外来の大島という人に負けて10勝1敗。
同じく和谷義高と奈瀬明日美が院生の足立に敗れて10勝1敗。
この上位5名に続くのが院生の本田、足立、小宮……。
原作との違いは和-Ai-に出会った奈瀬の大躍進のみ。
他の院生にも外来にも桐嶋和に繋がるような手がかりはない。
この世界で最も和-Ai-の影響を受けた原作登場人物が碁石を並べる。
「Aiは奔放な布石が目立つけど、こんな渋い陣形も打つのね」
「左辺に黒がある時、この白のカカリは攻撃を受けやすいから殆ど打たれない手ね」
「あの緒方先生に対して白は強気な戦法よ。Aiには相手のことは関係ないでしょうけど」
「でも黒も負けてなくて隅でおさまる方針の白に対して、
ここを切って……こうなって……ここまでは部分的には黒の方が得してると私は思うわ」
「それでもAiはここからがすごいの」
「Aiの大好きなカケから……これは黒がギョッとするような手ね。
白が筋の悪い力自慢が打つような手順で気が付けば意外に黒の手が出ない」
「部分的には無理と思われる手で、しかも左上から上辺、右辺と黒の援軍ばかり多いのに戦えるなんて判断できるAiは異常よね」
「この緒方先生の気持ちの良いヒラキヅメは惚れ惚れするようなトッププロの一手」
「緒方先生の黒は守りながら右辺を攻めたいと思ってる」
「ねえ?そらくん……ちゃんと聞いてる?」
何時の間にか年下の奈瀬には君づけで呼ばれている。
僕の方は最初はさん付けで読んでたけど、いつまでも他人行儀なのは止めてと言われて呼び捨てにしてる。
――私のことも好きに呼んでくれていーよ。明日美って呼び捨てにしてもいーんだよ?
ちょっといたずらっぽく笑いながら告げた相手に対して下の名前で呼ばないのは最後の抵抗。
こうやって奈瀬がAiと緒方先生の碁を解説するのは、僕がAiの棋譜を覚えるため。
元の世界に戻ったとき、彼女に……桐嶋和に……和-Ai-とヒカ碁のキャラ達との対局の棋譜をこの手で伝えるために――。
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