最低で最高なクズ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ウィザード・トーナメント編 前編
君に決めた! その壱
さっそくパートナー探しを始めた。個人的に男やブスを生徒会長したくないから美女に限る。問題は使い勝手が丁度いいことなんだが。
この学園の特性と言ってもいいんだが美女に限って変な奴が多い。性格美人は外見ブスで外見美女は性格ブスっていう器用貧乏なやつだ。
「ちょっとアナタ! 私に声を掛けておいてだんまりだなんて失礼だとは思いませんの?」
「........あっ考え事してたわぁ....申し訳ない。」
「まったく。これだから一般市民と関わるのは嫌いなんですの。私はかの有名な"ラピスラズリ家"の娘。アナタのような貧しい庶民は普通なら顔を拝見することでさえ愚かなことだというのに!」
「はいはい、さすがですねーすごーいすごーい(棒)」
この手の奴の扱いはだいたい慣れてる。小学校、中学校の間は魔法を使って脅してたんだが、俺もまがいなりにちゃんと学習できる人間だ。
そうつまり俺は「適当に流す」というごく一般の基礎知識を身に着けたわけだ。
ちなみに今対面している人は彼女の言う通り世界的にも有名な魔術師の一家"ラピスラズリ家"の娘の「シャルロット・ラピスラズリ」。魔術、筆記どちらを取っても学園でトップクラス。多分、普通に考えれば俺よりずっと頭の良い人。
金髪でスタイルも良くて魔術士としてちゃんと強い。見た目としては俺の好みをストレートに突いてきてるんだが完璧過ぎるが故の過剰な自信は正直半日も耐えてられる気がしない。
「突然なんだけど....俺がお前を生徒会長にしてやるから俺のものになってくれ...って言ったらどうする?」
どんなスカウトの仕方なんだって思う人は思うだろうが生憎俺は無駄にプライドだけはあるから無論下手に回るつもりはサラサラない。どんな名家の娘だろうがこの学園にいる以上立場は同じだ。
「はっ!アナタのような使えない駒が何をおっしゃるかと思えば....アナタ正気ですの?」
シャルロットはわざとらしく鼻で笑う。間違いなく俺をコケにしようとしているのが手に取るように分かる。
「残念ながら私には既にパートナーがいますの。ご紹介して差し上げますわ。アナタよりもずっとずっと可憐で美しい御方。"アルフレッド・シュバルツ様"です。」
するとまるで演劇の登場シーンのような流れで一人の男が現れた。白髪で身長は俺より少し高い。シャルロットを食べ物で言う"キャビア"とするならこのアルフレッドとかいう奴はさしづめ"フォアグラ"や"トリュフ"というのがいい所だろう。
言ってしまえば「あまりにも贅沢過ぎてむしろ品がなくなってる」というのがいい例えだ。
「レディー。僕を呼んだかな?」
「えぇアルフレッド様。そこの下衆な男が私を口説きに参ったのでお断りしたところです。」
俺はアルフレッドの「レディー」を聞いた瞬間に全身に寒気が走った。漫画のような馬鹿みたいな展開に思わず体が拒否反応を起こしたためだ。俺は純愛物語のような内容はよっぽど面白くない限り読まない。というより視界に入れること自体嫌だ。
電車に乗ってる時に後から乗ってきたカップルが堂々とイチャつく光景を処刑の如く見続けなければならないあの地獄は多分多くの人が理解してくれる。あんな光景を見ると心の底から煮えたぎる思いがある。
(リア充共よ.....墜ちろ!ってな。)
つまりは俺はこの時点でシャルロットをきっぱりと諦めた訳だった。おとなしく何事もなかったかのように退散しようとしたところ運悪くシャルロットが俺に話を振ってきた。
「ですが私も鬼ではありません。アナタの質問に1つだけ答えて差し上げますの。」
「じゃあ...お前が生徒会長になったらこの学園をどうしていきたいか聞かせてくれよ。」
これは俺の個人的な質問だ。しかし、これは俺にとって重要な質問でもあった。ここで私利私欲のためだと言う奴なら生徒会長にしても学園を破滅に導くだけだ。
トップってのは常に革命と調和を続けなければならない。革命ばかりに力を尽くせば組織は内部崩壊し、すべてを破滅に導く。
逆に調和ばかりにこだわれば今のような面白味のないものが出来上がってしまう。挙句の果てにはそれに反発した奴等にすべてを壊されるのがオチだ。とくに俺みたいな奴にな。
「私が生徒会長になったら、この学園を私のラピスラズリ家によって管理するものとします。そしてここで私好みの素晴らしい生徒を育てるのです。もちろん、アナタのように出来の悪いものを入学させる気は微太一もございませんわ。」
(つまりは私利私欲のためってわけか...。)
「はぁ.....。」
俺は敢えて分かりやすく大きな溜め息をついた。それはこの女の商品価値を俺が見限ったことを意味していた。俺はそれから一言も発さずその場を去った。
「さてと次の候補にあたってみるか。」
さっきのシャルロットもそうだが、俺は今回のトーナメントでのパートナー候補全員に時間指定で会う約束をしていた。
次に会うのはまたもやシャルロットと同じように魔術も筆記も俺より上な美女だ。しかし、彼女もまた性格に若干の問題がある子でもある。
「ふぅ....なんとか待ち合わせ時間に間に合ったか。」
「全然間に合ってなーい!誠兄のバカ!私無視されたかと思って心配したよ?」
「あぁ、そうか悪い悪い....。」
彼女の名前は"漆原真希乃"。俺を兄のように慕ってくれるがあくまでも同い年だ。なんでこんなに慕ってくれるのかというとそれには大したこともない理由があった。
入学式の当日。俺は朝に校門で派手にコケて足を怪我した女の子を見た。その時たまたま絆創膏があったため応急措置としてその子の足の傷口に貼ってやった。
その日の放課後。庭園でお気に入りの場所を見つけた俺がくつろいでいると、そこにお腹を押さえた女の子が通り掛かって来た。見た感じで空腹なんだと理解した俺は日頃から念の為に持ち歩いている非常食"カロリースティック"を彼女にあげた。
その時、俺はその子が足に絆創膏を貼っているのを見て朝の子と同一人物だと理解したのだ。一方の彼女もどうやら俺の顔を覚えてくれていたらしく、入学初日で俺と真希乃は打ち解けた。
彼女が妹属性を持っていることはそこで知った。その時俺は「俺は懐いてはならないものに懐かれてしまった」と俺の一連の行動を心の底から後悔した。それでも彼女を嫌いになれなかったのはそれを帳消しにできるくらい良き人格者だったためだ。
彼女のどうしようもなくピュアな性格は、ひねくれた俺にとっては中々の天敵で俺は反応に困る。だがそれ以上に恐ろしいのは真希乃が妹属性でなく"ヤンデレ"妹属性になってしまう可能性を持っていることだ。
(誠兄のために特別にお昼ごはん作ってきたの!一緒に食べよ!....嫌?....なんで?)
(ダメだ想像しただけでもナーサリー先生よりずっと恐ろしい!)
俺は無意識のうちに頭を抱えていた。そしてそんなあからさまな行動を真希乃が気付かない訳がない。
「誠兄?....大丈夫?頭痛い?」
「えっ...あぁ心配するな、大丈夫だから。」
「辛くなったらいつでも話を切り上げてくれて大丈夫だからね?無理は禁物だよ!」
真希乃の優しさが心に染みる。さっきのシャルロットとはまったく逆の性格をしている。召使いを見る貴婦人のようなシャルロットに対して、まるで真希乃は慈悲深い聖女を見ているかのようだ。
「真希乃はウィザード・トーナメントのパートナー、もう決まったのか?」
真希乃はそれを聞いて少し申し訳なさそうな顔をする。俺としてはそれだけで何を意味するのかは分かった。俺個人としても純粋な真希乃に、俺の真希乃の中でのイメージをあまり崩させたくなかった。
「ごめんね。ちょうど今朝お誘いを受けちゃって...今更断るのも悪いから誠兄には協力できないの...ごめんね。」
(やっぱり...優しいな真希乃は。)
俺はごく自然な流れで真希乃の頭を撫で撫でする。真希乃もそうされることを嫌がらない。こうしていると本当に妹と接しているようで、年齢感覚が分からなくなる。
「あっそうだ!私の友達にも何人か連絡取ってみる?最終的には決めるのは誠兄だけど、ちょっとでも力になってあげたいな。」
ここで真希乃から思いもよらない助け舟が来る。真希乃の友達はこの学園でもかなり顔面偏差値が高い子が集まっているのを俺は奇跡的に覚えていた。
「是非ッ!!」
俺は真希乃の手を両手で強く握りしめてそう叫んだ。真希乃のお陰でどうなるか危うかったパートナー探しに一筋の希望が見えて来た気がした。
それから真希乃は3人くらいに声を掛け、会う時間も設定してくれた。あとついでに俺の説明も少々。
「時間帯を考えて全員放課後にしておいたからまた会いに行ってあげてね。私にできることはこれくらいだけど、頑張ってね!」
「あぁ、助かるよ。ありがとうな。」
俺はその場を後にした。シャルロットにした質問を真希乃にしなかったのは敢えてだ。真希乃ほどの人格者が私利私欲のために生徒会長を狙う訳がない。あともう一つはもし私利私欲だった時の内容を俺が個人的に想像したくなかったためである。
後書き
【現時点の容姿まとめ】
○造偽 誠(つくりぎ まこと)
空(ノーゲーム・ノーライフ)
○シャルロット・ラピスラズリ
薙切エリナ(食戟のソーマ)
○アルフレッド・シュバルツ
司 瑛士(食戟のソーマ)
○漆原 真希乃(うるしばら まきの)
千石 撫子(化物語 など)
○ナーサリー先生 (本名:ナーサリー・ライム)
ソフィー ※ちょい老け(ハウルの動く城)
ページ上へ戻る