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最低で最高なクズ

作者:偏食者X
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ウィザード・トーナメント編 前編
  見てる世界が違うっての

(どいつもこいつもブスばっかだなー。)


俺はこの学園に入ったことを心底後悔している。


1つ、無駄に校則が多い。
制服は第2ボタンまで閉めろだ、金属系の派手な装飾は控えろだ、遅刻は厳禁だ、分かってることを校則に書くなっての。


1つ、授業時間が長い。
ほとんど実技なのになんで1限90分もあるんだ?
世間一般の高校生魔術師の魔力量はどれだけ持久力がある奴でも40分続けてできるかどうだかだってのに。


1つ、性格美人「しか」いない。
治安の低い馬鹿な奴らならともかく、可愛くもないのに性格がおしとやかとか俺は受け付けない。
だいたい、ここを受験した理由は「国でも随一の美人が集まる学園」だなんて言われたからだ。
どんだけ性格美人でも重要なのは「顔」なんだよ!
そうでもなけりゃ校長を金で釣ったりなんかしねぇ。


もともと中学でも出来損ない扱いされてた俺は当時の担任から「お前の進路は絶望的だ.....。」と申し訳なさそうに土下座されるくらいのものだった。


というのも、俺は生まれ付き常人の3分の1くらいの魔力量しかなかった。成長過程である程度は向上したし、魔力量が上がると噂のヤバメなドリンクを飲んだり、個人的にトレーニングしたりしてたけど........


結果は現状の通り。
魔力量は常人の3分の1なことに変わりはなかったし、魔術の精度が上がることもなかった。


最下層の学園にすら手が届かない俺が取った行動は誰もが予測できるはずだ。そう、家が裕福なことを活かして多額の金を使って裏口入学したってわけだ。


ここは「マーリン学園」。
世界的に有名な魔術師のマーリンが創設した学園とされている。世界最古の3大魔術"士"育成学校の1つだ。


言っとくけどどこぞの「ホ○ワーツ」みたいに壁の絵が喋ったり階段が動いて別の階に移動できるとかそんなお伽話は一切ねぇからな。







「おーい誠! 聞いてんのか誠!」

「聞こえてるよ今イイトコなんだから邪魔すんな。もうそろそろドSヒロインが調教されてドMになるんだからよぉ。」

「そうじゃなくて、先生に当てられてるぞ。」

「はぁ?」

視界を遮るために建てた教科書の壁の向こうにはこちらを捕食するかの如き目つきをした先生が俺を見ている。

「うわ、駆逐対象を発見。」

俺の一言で周りのザワついた空気が硬直した。
まるで誰かに注目の魔法を使われたかのように明らかに俺に視線が集まっているのが理解できる。
今授業をしているナーサリー先生はマーリン学園でもトップクラスの怖い先生で有名だ。

「あら、先生を駆逐対象だなんて....あなた余程罰を受けたいのかしらねぇ?」

ちなみにこの世界において「体罰」という概念は存在しない。ずっと昔の旧魔法時代ならこの言葉は確かにあったらしいが今は死語と言っても過言ではない。

教師たちは魔法で鞭を出して平気でぶってくるし、氷魔法や炎魔法で物理的に罰を与えてくる。











そう言えばまだこの世界についての説明をしてなかったから罰として廊下で立たされてるついでに話そう。


今は25世紀。
21世紀までは科学が発達していたが、ある時にアメリカで不思議な力でモノを浮かせることができる子どもが目撃されたことが魔法時代の幕開けとなった。


その後、ヨーロッパに宝石を用いた魔法を使う魔術師が現れ、魔法時代の開幕を告げた。それを皮切りに、生まれてくる子ども達は自然とその体に魔力というものを宿すようになっていた。だが、すべての子どもに魔力が宿るようになった訳ではなく、年間で生まれる子どもの約3割は魔力を体に宿さない「旧人」として捉えられるようになった。その後、科学者たちの研究データから魔力を持つ子どもの特徴として、胎児の期間中に謎の物質が胎児の体に取り込まれていることが判明した。


科学者たちはこれを「キャストニウム」と名付けた。
多分魔術師をキャスターなんて呼び方したりするからなんだろうな。俺にはどうでも良いが......。


魔法の発見から数百年経ってもう魔法は一般社会に完全に溶け込んでしまい魔法が使えることを不思議に思う人はいなくなった。どころか魔法は今や科学技術を上回る勢いで発展し、多くの人が移動手段で箒<ほうき>や絨毯<じゅうたん>を使うようになった。


そんな中でも旧人を支えるために街中にはちゃんと電車が走ったり、車が行き来している。その上空を箒や絨毯に乗った魔術師たちが飛び回ってくるのだ。


もちろん、箒や絨毯を使った移動にも少なからず魔力を使うから俺は一般人に溶け込む形で電車や自転車を使って普通に登校している。


大まかな概念は伝えたし、他はまた機会があれば説明しようかと思う。まぁ面倒くさくて教えない可能性も十二分あるけどな。

キーンコーンカーンコーン

授業が終わり、ナーサリー先生が廊下に来る。
ナーサリー先生が怒る時は基本的に激怒せずに徹底的に理攻めをするためよっぽど口が上手くない限りその攻めを打ち破ることはできない。


「授業態度に見合う魔術師としてのセンスがあるなら私も少しは抑えましょう。 しかし、貴方は一般の生徒に満たない魔力しかありません....そうですね?」

「けど筆記テストなら学年順位半分はきってますよ?」


そうだ。
俺は別に魔力量が少ないだけで筆記テストは普通に優等生だ。魔術に関する歴史も分かってるし、それ故の魔術の特性も独学とはいえ心得ている。


「それは私も分かっています。 ですがここで重要なのは貴方の苦手な魔術なのです。 私も貴方の魔術に対する理解と知識には非常に感心があります。 ですがここは魔術士育成学校であることを忘れてはなりません。 そしてここは誉れ高きマーリン学園です。 生徒の中でもこの学園の生徒であることを誇りに思う生徒は多いはずです。 貴方もマーリン学園の生徒であるという自覚を持ち少しでも努力しなさい。」


どれも正論故に何一つ反論できない。
彼女の口から冷静に残酷な現実を突き付けられる。
ナーサリー先生の説教はそこで終わり、俺は肩を落としてその場を去った。


ー放課後ー
マーリン学園には広大な庭園がある。
広さは校舎の倍以上あり、咲く花は魔術のせいなのか季節を関係なく様々な花が咲いている。
俺はそんな広大な庭園にあるベンチに腰掛けていた。


「落ち着くなぁここは...........さてと。」

(どうやってこの学園を変えようか.....そうだ!)


俺はこの学園のとあるシステムを思い出した。
それはこのマーリン学園も含めた3大魔術士育成学校で行われる魔術士の頂点を決める大会「ウィザード・トーナメント」だ。この大会は名前の通りトーナメント制で性別や学年は一切関係ない。


(問題は組むパートナーだ。)


この大会の重要なポイントの一つとして2対2というシステムがある。つまり、選ぶパートナーが強ければ優勝できる可能性は十分ある。

だが俺は魔力量が少ないため、選ぶパートナーは一人勝ちできるくらいの奴じゃないと意味がない。

この大会で1番の功績を残した生徒は生徒会長になる権限を与えられるのがマーリン学園のルールだ。大会に優勝すれば生徒会長になれるのは言うまでもない。そして生徒会長はこの学園をより良いものにするために学園の校則を変える権利を持っている。


「俺がこの学園を変えてやるよ。」


そして俺の大いなる野望に向けた戦いが始まる。 
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